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君の遺影を撮りたい  作者: 有原優


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13/19

第11話 体育祭前

 翌日学校には祈里さんは来ていなかった。遊園地の疲れが残っているのだろうか。

 思えば最近彼女は休みがちだ。

 そう言えば祈里さんは中学まで不登校児だった。それが関係でもしているのだろうか。

 そう言えば山登りの際も、その後しばらく休みがちになっていた。

 体力がないとかそう言う事情とかがあるのだろうか。


 それとも昨日言ってた、笑顔は武器の一つ。それが関係しているのだろうか。

 もしかして実は祈里さんもいじめられていた。そんな事でもあるのだろうか。


 僕は小さな欠伸を浮かべた。


 彼女に休んだ理由を聞きたいものだ。

 僕は祈里さんにメールを送った。


『どうしたの?』


 すぐに返答は返ってこない。僕は暫く見守ることにした。



 そして、帰ってきたのは二時間後だった。


『ごめん、寝てた(謝罪の可愛い絵文字)』


 そう言うメールが届いた。


『疲れてたの?』

『そんな者かな。私、疲れやすいから』

『体質的に?』

『うん』



 そうだったのか。


 僕は『お大事に』とだけ返信しておいた。


 その翌日元気よく学校に登校してきた。

 良かった。疲れは取れているみたいだ。

 それもそのはず。今日は体育祭の話し合いがある。

 体育祭、それは捨身を撮るのに十分な場所だ。

 楽しんでいる姿をカメラで撮りまくれる。


 僕はメールで『何の競技に出るの?』と訊いた。

 今日は主に出る競技を決めるのだ。


『内緒かな』


 内緒かよ、と僕は思った。でも、サプライズ的に手を上げたいのだろう。

 何だろう、借り物障害物競走、リレー、綱引き、

 あとは競技大会のソフトボールとかか。

 

 色々な競技がある。

 たぶん全部場える物だ。


 どれに出るのだろうか。考えても答えは見つからない。


 そんな事を考えていたら、いつの間にか体育祭のホームルームが始まった。


 

 競技名があげられ、挙手制でどんどんと手があげられていく。


 その中で、祈里さんは中々手を上げない。それこそリレーにも、 障害物リレーにも手を上げなかった。

 何にするんだろうか。そう、僕が怪訝な目で見ていると、ある協議で彼女は手を上げた。

 そこは――


 大縄跳びだった。

 まじかよと、僕は思った。大縄跳びなんて不人気だ。

 何しろ、大縄跳びは一度のミスでもう終わってしまう。

 そしてそれは他の人から責められる原因となるのだ。


 僕は個人的に大縄跳びは戦犯探しのゲームだと思っている。

 

 なのにそれに出ようって、もしかして、彼女はただのMではなかろうか。

 そもそもバイキングに乗る様な人だ。まともなわけがない。

 

 もしかして派手にずっこけた様子を写真で撮ってもらおうという事か?

 そう言う事ならうなずける。

 みんなから責められることを前提にしているのなら。


 僕は残念ながら、祈里さんが最後まで飛び続けられる未来が見えない。

 最初に縄に引っかかってこける可能性が4割くらいあると思っているのだ。


 酷いと思うかもしれないが、それが僕の想像する祈里さんの運動神経だ。

 実際に山では僕よりも先に疲れ果てていたし、体力もないのだろう。

 実際疲れやすい体質とも言っていたし。

 


『大丈夫なの?』


 僕は彼女に訊いた。

 メールでだ。授業中だからすぐに返信はこないだろう。僕はスマホの電源を切る。

 そして次のスポーツに僕は手を上げた。



 昼休み。僕は、今日のあレの本位について訊く。


「どうして、大縄跳びにしたの?」


 その言葉に。食事をとる手を止めた。


「どうしてそんな事訊くの?」

「っ」


 僕は、祈里さんの目をまじまじと見る。

 その顔はにやにやとしている。


「なんてね」


 そして、祈里さんは踵を返すと、


「からかってみたくなっただけ」

「それにしてもどうして――」

「どうしてだろう」


 顎に指を添える。


「でもね、大縄跳び飛んでみたいと思ったから、だけだよ。それに私の人望だったら、失敗してもそんなに文句は言われないだろうし」

「でも怖いだろ」

「怖いよ。怖いからこそ大縄跳びにしたんだよ」

「なんだよそれ」

「それにね、迫真の演技も撮れると思うし」

「なるほど、そう言う事か」


 なんとなく理解した。

 そう、大縄跳びを飛べば、それこそ演技じゃない本当の熱心な表情が取れる。

 それがもし、綱引きとかだtぅたら同化。


 綱引きは、10対10でする。

 そのため、一人がやらかしても損害としてはそこまで多くはない。


 障害物競走も、借り物競争も、一人のミスでは大きくは変わらない。

 それに、笑い話になることが多い。


 だけど、大縄跳びは本気の人達が出てくるのだ。


「それにいつ最後の体育祭になるか分からないから、全力で楽しまないと」

「そうだな。って祈里さん」

「どしたー」


 にやけ顔。


「来年もありますよ」

「ふふふ、残念。もしかしたら明日車にはねられるかもしれないのです」

「そしたら、次の文化祭はなくなるんじゃないの」


 去年の体育祭が最後になるだろう。


「なら、体育祭の一日後? その時には体育祭の写真が私の遺影になるね」

「冗談でもそんなこと言わないで欲しい」


 僕がそう言うと、祈里さんは「ははは」と言って笑った。

 

 「そう言えば、三輪君は何にしたんだっけ」

 「僕は、綱引きです」

 「しょうもないね」

 「うるさいです」


 僕は競技大会にも出るからいいんだよ。

 ちなみに綱引きは競合したのでくじ引きになった。そして僕が無事に当たりのくじを引いたという話だ。


 

「それにしても、体育祭で写真ちゃんと撮ってね」

「両親は来ないんですか?」


 その言葉に祈里さんは黙り込んだ。

 これは聞いてはいけないことだった。


「すみません」


 と、僕はすぐに謝った。すると彼女は笑顔で「別にいいよ、知らなかったのなら」と言った。


 彼女と仲良くなる前までは、彼女のことを完璧超人だと思っていた。だけど、それは明らかに間違いだった。

 彼女は弱い。弱い一人の人間なのだ。


「僕にできることがあったら何でも言って」

「私のことが好きなのー?」

「違うよ」


 僕がそう言うと、いのりさんは口元を押さえ、笑い出した。


「別に構わないよ。ね」

「構わない?」

「写真を撮ってくれるだけで十分だから」


 そして再び一口ご飯を食べる。


「僕は必死で応援するよ。祈里さんの事を」

「そう言ってくれると嬉しい」


 その翌日から早速体育祭の練習が開始される。

 僕たちの学校では球技大会も当時並行で行われる。


 僕は野球、祈里さんはサッカーだ。


 早速練習が開始される。僕は野球の練習だ。

 僕は運動神経があまり高くないから、まあまあ足を引っ張らない程度に頑張ればいい。

 ああ今も、祈里さんはサッカーの練習をしているのかな。


 その笑顔を撮りたい。駄目だ、欲求不満だ。

 禁断症状が出てしまっている。



 僕は宙を浮いているボールを撮るために手を上に掲げ、そしてボールを取った。


 そして打席に入るけれど、う列訳がなく、全球空振りだった。

 当然打てるわけがないから当たり前だ。


 練習が足りてないんだし。


 今こうしている間にも、サッカーでいい表情を浮かべているのかもしれない。

 そう考えたら憂鬱だ。


 そして、練習が終わった。

 僕は、祈里さんに対して、メールを送った。


『サッカーの練習どうでした?』


 送るのは少々責め過ぎなのかもしれない。


 だけど気になる。


『あまり活躍は出来なかったかな。わたしスタミナないし』


 案の定か。

 山登りの時もたいして連続では登れなかったしな。

 

『お疲れ様』

『そっちこそどうだったの?』

『ダメダメでした』


 僕がそう送ると、笑っているづ丹プが届いた。


『お互い頑張ろうね』

『ええ』


 そして、僕が教室に戻ると、祈里さんは手を振った。

 誰に、状況から鑑みるに、その相手は僕しかいない。


 周りの男子達が興奮する中、僕は気づかないふりをした。

 だって、そうだろ。

 勘違いかもしれないし、勘違いじゃなかったとしても、振り返せるわけがない。

 僕と祈里さんはカースト自体が違うのだ。


 その放課後、今日はお呼びがかかることは無かったが、


『なんで振り返さないのよ』


 と、怒りに満ちたメールが届いた。

 いや、振り返せるわけがないでしょ。

 祈里さんなんて言う美人と学校内でかかわりがあるなんてばれたら。

 もう考えたくはない。

 

 

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