第八章 セルトリア王宮謁見の間控室での会話
「ハリス。プライモルディアの話は聞いたか?」
「ああ。ビクターに教えて貰った。無論、教会では話さん。いや、話せん」
国王が聞くと、ハリスはおどけた様に両手で口を塞ぐ。
まさか国王が承認し元王妃が指揮を執ったとは口が裂けても言えまい。
魔王の脅威としてエングリオの貴族共へ伝わり、エングリオ王と滅びの町との蜜月関係への牽制になっているのだ。
「各国から義勇兵が来ておおわらわだったが、来年の春にまた来てくれ、と追い返しておいた」
「来年の春……」
ハリスの目が鋭くなった。魔王を自らの手で打ち倒すのは諦めたようだが、何らかの方法で参加する気でいることを彼の仲間は知っている。
「ああ、来年の春だ。今年の攻勢と来年の冬の攻勢が上手く行ったら、突入の触れをだす。そのつもりでいろ」
分かった、とハリスは一言答えた。
「ハリス。やはり討伐に行くのか?」
ビクターが聞くと、軽く手を振った。
「いや。本命はロバーツ様やジェームズ様にお任せする。ああ、エヴァンスとヒューズ。お前達も本命だったな」
「はい。微力ながら加わらせて頂きます」
エヴァンスが恭しく頭をさげ、ヒューズがこくりと頷いた。
「頑張ってくれ、俺は牽制か後衛で参加するつもりだ。ビクター、後方支援を頼むぞ」
「分かっておる。突入する勇者を護るのが儂ら王国軍の役目だ。しっかりやらせて貰う」
魔王の討伐とは、すなわち棲み処とする洞窟への突入を意味する。
古来より、数名~十数名の小部隊を複数突入させ、魔王との直接対決に辿り着いた者達が討伐してきた。
本命とは、かつての七英雄の様に魔王を倒す力を持つと思しき者達のことだ。魔王が復活した地を領土とする国王の指名を受けた者の事で、他国の王からの推薦も含んでいて、従来数組が選抜されてきた。
牽制とは、本命より先に洞窟に突入し、魔物のおびき寄せや罠の破壊、洞窟内のマッピングを行い、本命の部隊への情報提供を役目とする。
後衛は、本命より後に突入し、万が一の後方からの襲撃への警戒と、本命が苦境に陥った場合の救出を役目とする。
後方支援は、突入する部隊の支援を目的とし、洞窟外の魔物が中に入らぬよう、また、怪我人が救出されてきた場合の回復や後送を担っている。洞窟の周辺には強力な魔物がいることから、戦闘の連続となり、軍隊の指揮能力や平坦の運営能力が必要とされる。従来、魔王の棲み処のある国の指揮官が担ってきた。




