第七章 フィオナとセルトリア王宮
翌日、王都に帰り、謁見の間でマルセロさんが当代陛下に結果を報告すると、大笑いされた。
「昇天させずに、一緒に暮らすことになったか。しかし、それでは報酬が出せんではないか」
何故か私に聞いて来る。
「そうですけど。金貨三十枚見つけて山分けしたので良いです」
金貨三十枚は、スポンサーでもあるヘンリー様達を除いて、司教様を含めた六人で折半した。一人金貨五枚の実入りだ。
被害の届出が無いタコの退治報酬は出なかったが、誰も文句は言わなかった。
「神官だけあって欲が無いな。外の者もそれで良いのか?」
皆と話し合った結果だ。フィオナも仲間に加わったし良しとした。
「その代わり、お願いがあります」
「なんだ。遠慮なく言って良いぞ」
「フィオナの遺体を島に運ぶ許可を下さい。島の教会に並んでいる先祖代々のお墓に移してあげようと思います。本人も望んでいます」
「ふむ。それならば、砦とは縁が切れるな。では、昇天させたものと同等とみなして良いだろう。遺体を島に移して弔うことを条件に、報酬を渡そう」
気前の良い話になった。当代様には見えないだろうが、私の直ぐ傍に立っているフィオナの顔も綻んでいる。
自分が昇天しないと報酬が出ないのを気にしていた。
「ありがとうございます。あと、本人からのお願いがあります」
「なんだ?」
ヘンリー様を見ると、頷いてくれた。
「陛下。儂から話そう」
要は砦の保存についてだ。
パウルさんが言ったように、砦を残し村と一体として守る方法に転換すれば、村人も砦の幽霊達も皆喜ぶ。
「エヴァンス。どう思う?」
「金額的にどの程度の差が出るかを調査して、そう違わないならその線で良いでしょう。要は水と領民の避難場所が確保出来れば問題無いわけですから。将来的には、二つ目の海軍の拠点にしても良いかも知れません」
宰相様も賛成してくれて、前向きに検討するとのお言葉を頂いた。
「パキン!」
空気が割れた様な妙な音がした。
国王様も不審気にしている。
「すみません」
フィオナだ。
嬉しかったり、腹が立ったりしたら、音が鳴る。
「幽霊のフィオナも喜んでいます」
言って後悔した。
ヘンリー様達は当然見える。
陛下達には見えないだろう。
「今、ここに居るのか?」
当然、騒ぎになった。
ヒューズ様を始めとして、何人かの兵が陛下を囲む。
位階の高い神官を呼ぶかどうかで宰相様がヘンリー様に尋ねている。
「あー、心配せんでも良い。儂とエレノア、それにウィルソンには見えておる。全く害は無いから大丈夫だ」
ヘンリー様が場を納めてくれた。
俄然、宰相様が興味を示した。
「是非、見て見たいものですね。何とか私にも見えるようになりませんか?」
私達の傍に寄ってきて、ジロジロ調べ始めた。
フィオナが怖がっている。
「宰相。相手はうら若い女性ですよ。そのような態度で好意を持たれると思いますか。相手が怖がっていますよ」
エレノア様に叱られて、すごすごと引き下がる
「幽霊を怖がらせるような宰相がいるのだから大丈夫だろう。お前達、もう良いぞ。礼を言う」
場が収まって、移送に入った。
エレノア様達がいる。
埋葬も含めて一泊二日の工程で終わってしまった。




