第七章 幽霊の出る砦
本館は、部屋は広いが質素なもので、窓も小さく薄暗い。いかにも幽霊が出そうな雰囲気だ。王族の別荘とは思えない。
晩御飯もいつもの宴会仕様ではなく簡単だ。
パンにチーズ、炙った海の魚に羊肉のロースト。
普段の私達の晩御飯と違うのは、メインが二種類あることと、海の魚が出たくらいだ。
ワインは上等だったな。
贅沢と言えば贅沢なのだが、控え目にしているのは良く分かった。
「あの、王族の別荘にしては色々と質素なようですが、幽霊に併せているのですか?」
雰囲気作りではないか?
ヘンリー様に聞くと、頷いている。
「そうじゃ。元々、この砦は取り壊す予定だったのだ。しかし、幽霊がおるのでな。無事に昇天させるまでは残すことにした。部屋の調度や装いも簡単なものだったろう。どうせ取り壊すつもりだったから、金をかける必要もあるまい。管理している者も、門番をやっておる者達と、そこに控えている者達だけだ」
管理係の人達は六人いる。初老の男女が一組、中年の男女が一組、若い女性が二人だ。
地元の人達で、皆愛想がよい方々ばかりだ。
門番は五人いた。王国軍兵士だ。
地元の人達はこの幽霊砦を保存したいらしく、なにくれとなく面倒を見てくれているらしい。
なにせ北東の森が近い。村の近くに砦があれば安心だ。
「しかし、ヘンリー様。そうなると、幽霊が昇天したら地元の方々は残念がりませんか?」
マルセロさんは普段とは違う雰囲気を感じ取っているのか、砦に入った時からニコニコ顔が控え目だ。
「うむ。村の者は、皆この砦が残った方が良いと思っとる。しかし、この城は手狭でな。しかも水が雨水を貯めた小さな貯水池しかない。ここでは村の者達全てを守れんのだ」
幽霊が棲みついた建物を壊そうとすると事故が起きて人死に騒ぎになる。無害な幽霊なら、村の管理にしてほうっておいても良さそうなものだが……。
「つまり、幽霊はこの砦がセルトリアの物になってから、出始めたわけですね」
「そうじゃ。儂も攻城戦に関わった。なんとか昇天させてやりたいんじゃ」
エレノア様と二人してしんみりしている。
攻め落とした者の義務だそうだ。個人的なこだわりなのだろうが、果たして幽霊に通用するだろうか。




