第六章 ゴブリン脱出作戦出陣前のたわいもない魔法話
エレノア様の巨大お椀に乗って全員が東の原の砦から北の峠の陣地に移動する。
「大したものじゃな。流石は超上級魔法使いじゃ」
パウルさんが舌を巻いている。
「こういうのが一杯あったら、どんな敵が攻めて来ても勝てちゃうんじゃないかしら」
メアリーの言う事は良く分かる。
「超上級魔法使いはほとんどいないのよ」
ベアトリクスが首を横に振る。
問題はそこだ。ウィンド・バリアを使う魔法使いでさえ、セルトリアには十人ちょっとしかいないらしい。ましてや超上級魔法使いともなると、もっと少ない。
「そう上手くはいかんて。相手も同じ手を使うからな。それに、上級魔法使いがお椀の操縦に掛かりっきりになった場合の損失の方が大きいと思うぞ」
確かにそれもそうだ。上級魔法使いが攻撃に回った方が遥かに強力だ。
「でも、魔法防御を展開されちゃったら、上級魔法でも効果半減しちゃうんでしょ? だったらお椀に乗って弓で上から狙った方が良くないの?」
フム。とパウルさんが腕を組む。
お椀は移動速度が速いので、余程ゆっくり飛ばない限り、相手が展開する魔法防御に引っ掛かる事はまずない事が分かった。実際に、パウルさんとエレノア様が湖で実験したのだ。勿論、魔法防御を展開している所に突っ込んで行くと引っ掛かるのだが、仮に引っ掛かっても、上級魔法で作るので維持は出来るようだ。墜落さえしなければ、勢いで突破して内側に入り、上空に逃げる事も出来る。
「敵に超上級魔法使いがおらんかったら、いけるかもしれんな」
「いたらどうなるの?」
ベアトリクスもメアリーも分からない様だ。
「マジック・ブレイクを使われたら魔法の効果が打ち消されて墜落するな」
マジック・ブレイクは相手の魔法を無効にしてしまう状態変化の上級魔法だ。相手が魔法防御を展開していると、効果が薄れるのだが、超上級魔法使いならこちらの魔法防御を簡単に打ち破ってしまうようだ。
実際に、エレノア様のマジック・ブレイクを喰らって、湖に身一つで墜落したらしい。
「じゃあ、こっちもマジック・ブレイクを仕掛けて、マジック・ブレイク・ブレイクにしちゃえば?」
ベアトリクスがややこしい事を言う。
「そうしたら、向こうも先手を打って、マジック・ブレイク・ブレイク・ブレイクを仕掛けて来るかも」
メアリーが話をかき混ぜて来る。
「キリがないわね」
「ホントね」
「ブレイクがいくつ続くか分からないけど、要は数が多い方が勝つみたいね」
「そうみたいね」
結局何かを悟った様だ。二人して笑っている。
「そこに気づいただけでも大したものだ」
パウルさんも笑っていた。




