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アラカン派遣探索者は意外とヤれる  作者: あおおに


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経験値稼ぎ

 ドラゴノイドたちが撤退した後は、速やかにその場を離れる事となった。

 同じ場所に留まっていては、いつまた襲撃があるか分からないし、湿地エリアという条件上、怪我人にも良くなかったのだ。

 もちろん怪我人は、治癒系のスキルや各種のポーションにより治療されていたが、それでは治り切らぬ程の怪我を負っていた者もいたのである。


 俺は、食材等を放出してスペースの開いた【仙人みかん】に、図らずも今回の戦闘で亡くなった者たちの亡き骸を収納し、帰途に就いた。その人数は、六人である。その数が多かったのか少なかったのか、俺には分からない。

 しかし、元々輸送員として参加したというものの、戦闘でほとんど約に立てなかったのは不甲斐なかった。魔力量が増えたとは言え、【縮地】を使える回数は限られているし、何より戦闘に直結するスキルが無いのか痛い。


 マナセやカヤシマのオッサンは、確実に身体強化系のスキルを持っているのだろう。大型ドラゴノイドを相手に見せた破壊力は、二人とも凄まじかった。

 俺も大剣なんかを使っているからには、そんなスキルが欲しいものだ。

 が、スキルは本人の希望とは関係なく全くランダムに生えて来るという。であるならば、とにかく経験値稼ぎをして、地力を上げると同時に戦闘的なスキルが生えて来るのを期待するしかない。

 結局、獲物を狩り続ける日々が繰り返される訳だ。


 俺はすでに結論の出ている思考を何度も頭の中でリピートしながら、歩き続けた。





 経験値稼ぎをするのだと決意した割には、そこから俺はしばらく探索を休んだ。

 やはり精神的なダメージが抜けなかったのだ。いくらアラカンのジジィだといっても、柔な部分は柔いのである。

 久しぶりに最新のゲーム機なんぞを買い込み、流行りのゲームに没頭。

 真桃ちゃんが心配してやって来てくれたら、一緒に出かけて買い物や食事を楽しんだ。

 夜はもう一度真桃ちゃんにお願いしてみたけどダメだったので、何度か内緒のカレンちゃん(仮)のトコにも行ってみた。カレンちゃん(仮)、サイコーっ!


 で、なんとか回復。

 結局、十日ばかりかかったけど、俺は探索に復帰した。

 狙いは、オーガ。オークよりもデカくて筋肉質な、人型のモンスターである。日本の鬼に近い外見をしている。中級の各種ポーションに、魔導具まで落とすらしい。

 俺は半日かかって、オーガの出没する低山エリアに到着した。

 実は、今回は一人で初めての泊まりをやる気でいるのだ。寝るのは【仙人みかん】の中なので、襲われる心配はない。ただ、つい最近これで亡き骸を運んだばかりなのが、気になると言えば気になる。


 オーガを探して歩いていると。

 突然、俺の腕程の太さの丸太が、回転しながら飛んで来た。

 ぶおん───!!

 凄まじい風切り音とともに、俺の頭上を飛び越えて行く丸太。初撃を躱すという俺のスキル、【方違え】が働いたのだ。そうでなければ、丸太に直撃されて、俺は終わっていただろう。


 丸太が背後の木々をなぎ倒しながら地面に突き刺さる。その衝撃で、足元の土がびりびりと震えた。

「……いきなり本気かよ」

 舌打ちしながら、俺は丸太が飛んできた方向へと視線を向ける。


 いた。

 身の丈は三メートル近く。分厚い胸板に、岩のような肩。皮膚は浅黒く、血管が浮き出た腕は、まるで丸太そのものだ。手には、さっき投げたのと同じような木を引き抜いたばかりらしく、まだ土がこびりついている。

 オーガ。

 なるほど、話に聞いていた通りの化け物だ。


「よし……やるか」

 逃げる理由はない。むしろ、ここからが本番だ。

 俺は大剣を構え、地面を蹴った。

 オーガもこちらに気付いて、牙を剥くように口を開く。咆哮。空気が震え、鳥が一斉に飛び立つ。

 だが、その威圧に飲まれるほど、今の俺は弱くない。


「【縮地】!」

 一気に距離を詰める。視界がぶれるほどの加速。そのまま、オーガの懐へと潜り込み——

 振り上げた大剣を、右脚の膝裏へと叩き込んだ。

 ガギィンッ!!

 鈍い音。まるで鉄を打ったような感触が腕に伝わる。

「……っ、硬えなオイ!」


 だが、効いていないわけじゃない。膝がわずかに折れ、オーガの体勢が崩れる。

 そこへ、間髪入れずに二撃目。

 横薙ぎに振るった刃が、今度は左腕の肘関節へと食い込む。

 肉が裂け、骨に当たる感触。


 オーガが吠えた。

 反撃の拳が、空気を裂いて迫る。直撃すれば、間違いなく即死だ。

 だが——

「遅い!」

 半歩だけ身体をずらす。

 拳が頬をかすめる。風圧だけで皮膚がひりつく。


 俺はそのまま、回転するように体勢を入れ替え、今度は背後へ。

 そして——

「落ちろっ!」

 全力の斬撃を、首筋へと叩き込んだ。


 ゴッ——という鈍い音のあと、刃が深く食い込む。

 完全に落とし切るには至らない。だが、十分だ。

 オーガの身体がぐらりと揺れ、そのまま膝から崩れ落ちた。

 トドメだ。

 俺は大剣を引き抜き、振りかぶる。


「これで終わりだろ!」

 渾身の一撃を、頭部へ叩き込む。

 ぐしゃり、と嫌な音がして、オーガは動かなくなった。

 静寂。

 森の中に、俺の荒い呼吸だけが残る。


「……はあ、はあ……」

 勝った。

 確かに、勝った。

 だが——

「……回復、早えな」

 倒れたオーガの腕。さっき深く切り裂いたはずの傷口が、じわじわと塞がりかけていたのだ。


 完全に死んだから止まったものの、生きている間は確実に再生していた。

「なるほどな……こりゃ、雑にやってたらキリがねえ」

 結論はシンプルだ。

 致命傷を一気に叩き込むか、もしくは動きを止めてから確実に仕留めるか。


「……よし、方針は決まりだな」

 俺はドロップ品を回収しながら、小さく笑った。

 手応えは、あった。

 身体が軽い。動きも、以前よりずっと良い。

 何より——

「戦えてる、じゃねえか」


 ドラゴノイド戦では、ほとんど何も出来なかった俺が。

 今はこうして、単独でオーガを仕留めている。

 それが、何よりの実感だった。

 それから、俺は狩り続けた。

 一体、また一体と。


 オーガは確かに強い。だが、単調でもある。

 力任せの攻撃。大振りの動き。

 最初こそ危なかったが、慣れてくれば対処は難しくない。

「よっと!」

 振り下ろされる棍棒を躱し、足を払う。

 体勢を崩したところへ、膝関節を狙って斬撃。

 動きが鈍ったところで、腕を切り落とし——

 最後に首を刎ねる。


 パターン化。

 だが、それでいい。

 確実に、効率よく。

 俺は無駄を削ぎ落としていった。

 途中、一度だけ危ない場面もあった。

 二体同時に遭遇した時だ。

 一体に集中した瞬間、もう一体の拳が横から飛んできた。


 あれは危なかった。

 【方違え】がなければ、間違いなくミンチだっただろう。

「……まだまだだな」

 苦笑する。

 慢心すれば死ぬ。それがこの世界だ。

 だが同時に——

「面白くなってきた」

 そうも思っていた。


 身体が、戦いに順応している。

 大剣の重みも、もはや違和感はない。

 振るえば当たる。狙えば斬れる。

 そんな感覚が、少しずつだが確実に身についてきていた。

 日が傾き始めた頃。

 俺はその日の狩りを切り上げた。


「……こんなもんか」

 倒したオーガは、七体。

 初日にしては上出来だろう。

 ドロップ品も悪くない。ポーションに、簡単な魔導具らしきものもいくつか手に入った。

 俺は【仙人みかん】を展開し、その中へと入る。


 相変わらず不思議な空間だ。

 外の危険が嘘のように、静かで安全。

「……まあ、便利だよな」

 軽く呟きながら、寝床を整える。

 ふと、脳裏に浮かぶのは——あの六人の亡骸。

 ここに、確かに収めたのだ。


「……」

 一瞬だけ、手が止まる。

 だが、すぐに首を振った。

「考えても仕方ねえか」

 俺は生きている。

 そして、強くならなきゃならない。

 それだけだ。


 簡単な食事を済ませ、横になる。

 身体は心地よい疲労に包まれていた。

「……明日も、狩るか」

 オーガ。

 あの頑強な化け物を、もっと効率よく、もっと早く仕留められるように。

 そして、その先へ。


 マナセやカヤシマのオッサンみたいに、真正面から叩き潰せるような力を——

「……欲しいよな」

 ぽつりと呟き、目を閉じる。

 意識が、ゆっくりと沈んでいく。

 今日の手応えが、確かな形となって身体に残っていた。


 少しずつ。

 本当に少しずつだが——

 俺は、強くなっている。

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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