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アラカン派遣探索者は意外とヤれる  作者: あおおに


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そして、いつものごとく

 そして、いつものごとく宴会が始まった。

 場所は、例のごとく俺の部屋。

 今回は目玉の食材はないが、スーパーで美味そうな物を大量に買い込んで来た。

 ちなみに、美少女五人組の中に調理担当はいない。俺も出来ない。だから、すぐに食べられる状態の物ばかりを買って来た。


「探索の成功を祝って───かんぱ〜い!!」

 シィマの音頭で、乾杯をかわす。

 みんな二十歳越えなので、全員アルコールだ。

 苛酷な探索者生活を送ってるせいか、みんな太るとかの心配はしていないらしく、気持ちよく酒を飲み、肉をむさぼっている。見ていて、清々しい。


 話題は、今日の狩りについてだ。

 ドロップアイテムによる儲けも最高だったらしいし、何より魔力的な成長の実感が大きかった様だ。

 早速、肌が若返ったとか髪が綺麗になったとか騒いでいる。俺からすると、さすがに一回の狩りでそれはないだろうと思うが、賢い年寄りなので、そんな事は口にしない。ただ、微笑んでおいた。

 でも。

「あたしなんか胸が大きくなっちゃって、苦しくて苦しくて───」とユサが自分の胸を突き出して来た途端に、酒を噴き出しそうになった。


「そう言えば真桃も、最近おっぱい大きくなったよね?ドラゴン肉のせい?」

 キョウコもまた聞き捨てならない事を言い出す。

 真桃ちゃんが何だと?

「そ、そんな事ないわよ。サイズ変わってないし」

「いーや、あんた、ホントに肌も綺麗になってるわよ。絶対、柔内さんのお陰でしょ!」

 マユリまでが突っ込む。


「え?やらし……」

 ユサが何か勘違いしているが、キョウコとマユリの追及は止まない。

「だいたい、ドラゴン事件の前から、急に真桃は綺麗になっ来たのよね。ドラゴン以外にも何か食べさせてもらったんじゃないの!?」

「え、あー、迷宮牛とか……タイタン・クラブとか……?」

「ずっるーい!そんなの食べてたのね!綺麗になる筈よ!!」


「迷宮牛食べると、綺麗になるのか?」

 憤慨しているキョウコたちには悪いが、思わず口をはさむ俺。そんな話、初めて聞いたぞ。

「迷宮産の魔力豊富な食べ物を食べたら綺麗になるって噂が、芸能関係者の間では根強いんですよ。だから、ドラゴン肉を食べたっていう事で、真桃は注目の的なんです」

 丁寧に説明してくれるシィマ。理知的で、良いなこの子。


「なるほどね。ドラゴン肉はもう無理だけど、迷宮牛とか取って来たら、今度は誘うよ。ウチで焼き肉パーティーしても良いし」

「ホントに!?約束ですよ!!」

 異常に食いついて来るキョウコ。いや、十分綺麗だよ、あんた。

「ああ、俺もまた食べたいと思ってたし」

「やった!!」


 そして、そこからハチャメチャになった。

 ユサは「胸が苦しい」と言って服を脱ぎ出すし、キョウコとマユリは欲求不満を嘆き出すし、理知的に見えたシィマはキス魔に変貌するし───。

 油断してたら、シィマにキツいのを奪われてしまった。

 それを見た真桃ちゃんがやたら怒っていたけど、嫉妬なのか仲間の乱行を苦々しく思っただけなのか、それは分からず終いだ。


 とりあえず酒癖の悪い四人を別の部屋に押し込み、俺と真桃ちゃんは一息ついた。

「良い仲間たちだねー」

「うん」

 まだ酒をチビチビやりながら、真桃ちゃんが嬉しそうにうなずく。


 改めて真桃ちゃんをよく見ると、確かに出会った頃より綺麗になっている。おっぱいも大きく……なったか?分からん。

 でも、全体的な雰囲気が、より魅力的になったのは間違いない。

 そうか、食べ物のせいか。

 自分で食べるのも良いが、女の子に食べさせて綺麗にするってのも楽しいな。俺への好感度も少しは上がるだろうし。

 よし。近々、また迷宮牛を狩りに行こう。




 

 で、迷宮牛狩りと行きたいところだったが、派遣事務所からの依頼で『魔力血』を取りに来ている。

 なんでも、血液の病気を治す薬の材料になるらしい。依頼料は大した事ないが、どこに行こうとドロップアイテムで儲かるのだし、出来るだけ他人から望まれる仕事をこなしておきたいと思って、依頼を受けた。

 場所は、墓場エリア。

 最近俺が狩っているスケルトン・ナイトより更に奥に湧くというブラッディ・ボーンが狙いの相手だ。

 全身真っ赤な二メートル超のスケルトンだという。


 今回も、ソロだ。

 カヤシマのオッサンたちや真桃ちゃんたちと同行して分かったのだが、迷宮適性Aクラスのアイテムドロップ率が高くなるという話は、A級だけで狩りをしている時にしか通用しないという事だ。ᗷ級やᏟ級といると、そちらのドロップ率が勝ってしまう。つまり、ドロップ率が悪くなる。

 俺と一緒に重武装オークを狩って、真桃ちゃんたちは儲かったと喜んでいたが、俺一人だともっと儲かっていた筈だ。申し訳ない話だけどね。


 今回はドロップアイテムが目的なので(いつも、大体そうだけど)、迷わず一人でやって来た。

 まずは、裸のホネホネ───スケルトンのいるエリアを抜け、金属鎧に剣と盾装備のスケルトン・ナイトのエリアに。

 こいつらが中級ポーションと中級魔力ポーションを落としてくれるので、美味しいのだ。

 そして、スケルトン・ナイトのエリアを抜けて、ブラッディ・ボーンのエリアに到着。

 ドロップするのは、同じく中級のポーションと魔力ポーション、そしてレアドロップの魔力血。

 

 ブラッディ・ボーンは、噂に違わぬ強敵だった。

 最初に遭遇した一体目。赤黒く濁った骨格は、ただのスケルトンとは明らかに質が違う。関節部からは粘ついた魔力が滲み出ていて、それがまるで血管のように脈動している。

「……気持ち悪ぃな」

 軽く呟きつつ、間合いを測る。


 向こうもこちらを認識した瞬間、頭を跳ね上げた。空洞の眼窩に、赤い光が灯る。

 来る。

 踏み込みと同時に、メイスを振り抜く。だが、手応えは軽い。

 ――避けた!?

 骨のくせに、妙に素早い。スケルトン・ナイトとは別物だ。


 横薙ぎの一撃を紙一重で躱し、逆に腕を振り上げてくる。爪のように尖った骨が、鈍い光を帯びていた。

 直感でヤバいと判断し、バックステップで距離を取る。直後、地面に叩きつけられた腕が、ぐじゅりと音を立てて魔力を撒き散らした。

「当たったら、ただじゃ済まねぇな……!」

 だが――。

 だからこそ、燃える。


 再び踏み込み、今度はフェイントを混ぜる。右に振ると見せかけて、左足で軸を変え、下から顎を砕くようにメイスを叩き上げた。

 ゴキン、と乾いた音。

 頭部が半分ほど砕け、赤い霧のような魔力が噴き出す。

 そこからは、一気だった。追撃、追撃、さらに追撃。

 関節を潰し、動きを止め、最後に胸骨を粉砕する。

 崩れ落ちた骨の山が、じわりと溶けるように消えていく。


「……よし、一体目」

 息を吐き、周囲を警戒する。

 だが、すぐに次が現れる。

 そして、また次。

 ブラッディ・ボーンは単体でも厄介だが、数が出るとさらに面倒だ。それでも、俺は一体ずつ確実に潰していった。

 メイスの重みと、体の使い方。無駄のない動き。

 歳を食った分、こういう戦い方はむしろ得意だ。


 結果として――。

「……八体、か」

 最後の一体を叩き潰したところで、肩で息をしながら周囲を見渡す。

 なかなか骨が折れたが、収穫は上々だ。

 ドロップを確認すると、目的の品も出ていた。


「お、出た出た。これが魔力血か」

 小さな瓶に入った、どろりとした赤黒い液体。見た目は最悪だが、これが薬の材料になるらしい。

 他にも中級ポーションやら何やらを回収し、軽くストレッチ。

「……今日はこの辺で帰るか」

 欲張ってもいいが、こういう場所は長居するとロクなことがない。

 そう判断して、踵を返した――その時だった。


 ぞわり、と。

 背筋を撫でるような寒気。

「……なんだ?」

 思わず足を止める。

 さっきまでとは違う。ブラッディ・ボーンとは明らかに質の違う、濃密な“気配”。

 ゆっくりと振り返る。

 そして――いた。


 いつの間に現れたのか。少し離れた場所に、一人の“女”が立っている。

 黒いドレスのような衣装。白すぎる肌。長い黒髪が、闇に溶けるように揺れている。

 そして、何より――。

 赤い瞳。

「……人間、じゃねぇな」


 口に出した瞬間、女はふっと笑った。

「ええ。そうね」

 声はやけに艶やかで、耳にまとわりつく。

「あなた、いい血の匂いがするわ」

 ――来たな。

 直感で理解する。

 こいつは。


「吸血鬼、か」

「正解」

 くすくすと笑いながら、一歩、こちらに近づく。

 その動きだけで分かる。さっきのブラッディ・ボーンとは比較にならない。

 格が違う。

「ここしばらく、碌な獲物に出会えなくてね。退屈していたのよ」


 ぺろり、と赤い舌で唇を舐める。

「でも、あなたは違う。濃い魔力……熟成された血……ああ、想像するだけで――」

 うっとりと目を細める。

 完全に、捕食者の目だ。

 俺は無意識に、メイスを握り直していた。

 冷や汗が、背中を伝う。


(勝てるか……?)

 正直、分からない。

 いや、多分――格上だ。

 だが。

 逃げられるかと言われると、それも怪しい。


「ねえ」

 吸血鬼が、さらに距離を詰める。

「少しだけでいいの。あなたの血、分けてくれない?」

 柔らかい声音。

 だが、その奥にあるのは、絶対的な捕食の意思だ。

 断れば、力ずくで来る。

 応じれば――どうなるか分からない。


「……断る」

 短く答える。

 すると、吸血鬼は一瞬きょとんとした顔をして――。

 次の瞬間、嬉しそうに笑った。

「ああ、いいわ。やっぱり、そうでなくちゃ」

 ぞくり、とする笑み。

「抵抗してくれた方が、美味しいもの」


 ――来る。

 空気が張り詰める。

 俺は足に力を込め、いつでも動けるように構えた。

 格上相手。

 油断すれば、一瞬で終わる。


 だが――。

(やるしかねぇだろ)

 メイスを構え、低く息を吐く。

 吸血鬼は、優雅に一歩踏み出した。

 その瞬間。

 視界から、消えた。

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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