264
さてさて、孤児院を牧場に移し変えてから早一週間。クランハウスでの商売に切り替えてどうなったかというと……あまり上手くいっていなかった。
やはり予想通り立地が良くないので人があまり来なかったのだ。対応策としてご近所さん達のために宅配のようなことをしたのだが、新領主が内壁内に入るのに税をかけた為に難しくなったのだ。
内壁、まぁ旧外壁なのだがそこには当然昔から抜け道がある。俺も初めて竜の森に行ったときにお世話になったしね。だが、あそこは孤児院の所にあるので今は使えないのだ。
そうそう、孤児院と言えば孤児院の土地は無事? に新領主の物となった。建物が無くなったことに驚いていたそうだが気にせずに、高く売ることを考えているようだ。少し考えれば、いや、多少頭が回る人物なら消えた理由を、『アイテムボックス』の存在に気付けたかもしれないのにねぇ……。
ちなみにこの話はご近所さんからの情報です。
話を戻すけど宅配もやり辛くなったので数日置きに配達&出店する事になった。数日置きになったのはうちとしては今までお世話になったし、入町税もそこまで高くないので毎日行くと言ったのだが、町の人達がもったいないからと数日置きになったのだ。まぁ、荷物は大量に持っていけるので安く沢山売れば今まで通りの生活でいけるだろう。
困ったのが冒険者達だ。中堅どころの冒険者ならばうちでなくともなんとかなるが、新人冒険者にはうちの薬やポーション、武器の手入れなんかは欠かせない事になっているらしく竜の森で何人かから相談を受けたらしい。
確かに孤児院の冒険者は自給自足でなんとかなってるし、新しく冒険者になる子も年上の冒険者組が面倒を見ている。しかし、そうした繋がりが無い新人冒険者はとにかく大変らしい。
毎日の宿代に食事代、武器防具の維持費に薬やら荷袋やらの雑貨代。ギルドの低級の依頼料だけではとてもやっていけないらしい。
そこに登場したのが俺達だ。さすがに宿代は無理だが食事や薬等は練習として作ったものを格安で販売したり、武器の整備も安くしてあげていた。安さの秘密は生産組の新人が作った物だからだが、料理なんかは肉入りの料理がお腹いっぱい食べられると密かな人気になっていたりする。
うちに来ていたのは常連さんが連れてきた新人だったから余計にサービスしたりしていたのだが、当然ガラの悪い冒険者が来たときは辛口対応をしていたらしい。この屋台のおかげで俺達の知らぬ間に冒険者の知り合いを増やしていたそうだ。
しかし、そんな屋台が遠くへいってしまった。新人はギルドが紹介してくれる安宿に泊まることが多いのだが、そこはギルドから遠く逆に孤児院からは意外と近かったりしたので屋台にも近かった。だが、今はクランハウスに屋台があるので遠い! 新人達は安い依頼料に対応するために数や量を多くこなすことでなんとか生活している。そのための出来るだけ長く竜の森にいたい為にこの時間が勿体ないのだ。
今までの屋台でのお客さんのほとんどはご近所さんと冒険者達だ。ご近所さんはこっちから出向くことでなんとか解決した。なら冒険者達にはどうするか。こちらもこっちから出向くことでなんとかすればいい。ということで
「おじいさん、竜の森で屋台をやってもいいですか?」




