イケメンすぎる冒険者、実は岐路に立っていたらしい①
「なるほど。それで精霊石を密輸しようとしたエルフがいて、その調査のためにマイク・ヴァルカンが雇われたということか。」
「そうだ。そしてその依頼をしたのは、ある国に出向している治癒回復士が、神官として仕えている宗教本部だった。」
「エルフ側からの依頼じゃなかったのか?」
少し驚きだった。
もしかして、エルフ側はそれまで知らなかったということなのか。
「恥ずかしい話だが、マイク・ヴァルカンから事情を聞いて初めてわかった事実だった。エルフの国が関わる事案ということで、彼は私に一時的なパーティとして動かないかと打診してきたのだ。そこで事情を知った私がこちらへと戻り、内部調査を行っていた。学園の講師となったのもそのためだ。」
「もしかして、俺が講師になったことで、学園内にいた密輸の実行犯が焦って行動を起こしたのか?」
話を聞いていて感じたことをそのまま告げた。
俺一人の存在などたかが知れているが、その講義を受けてボディスキャンや治癒回復を行えるエルフが増えたらどうなるかを考えたらたどり着く内容だ。
「ああ。君の講義はエルフに新しい可能性をもたらせた。精霊石に頼らずに病状を知り、治癒回復を行う者を国中に配備できる可能性だ。」
そうなった場合、病気の診断に使っている精霊石の価値は著しく低下する。
何せ、詳しい病状がわからないのだから。それならば、今後増えるであろう、自前の治癒回復士を頼ることに期待した方が現実的でもある。
「そうなると、エルフ国内での精霊石の価値は下がり、人間への流通制限を緩和する。国交をさらに強いものとし、外貨を稼ぐには有効だからな。」
エルフの国も鎖国しているわけではない。
メリットが少なく、秩序を乱されるのを嫌っているため、あまり快く受け入れはしないが稀に人間は訪問しているのだ。
「それで焦った犯人が、今のうちにと大量に精霊石を持ち出そうとして逮捕されたんだ。」
何と呆気ない幕切れなのだろうか。
「もしかして、そこまで考えてマイク・ヴァルカンは俺をこちらに連れて来たのか?」
「そうらしい。こんなにうまくいくとは思わなかったがな。」
さすが、世界でも有数の凄腕冒険者なだけある。
ただの超絶甘党ではなかったのだな。
「ひとつ疑問なんだが。」
「なんだ?」
「精霊石は病を患ったエルフと人間には異常を示すと言っていたが、人間の病にも反応するのか?」
「ああ、人間が精霊石に魔力を通すと病を患ったエルフと同じ反応を示す。しかし、病にある人間の魔力では別の反応が出るそうだ。だから、機能的には人間に対しても問題なく使える。」
「なるほど。マイク・ヴァルカンで試したのは、俺に使った精霊石に異常がないか調べるためだったんだな。」
「そういうことだ。」
「それで、俺はお役御免になるのか?」
「そんなわけないだろう。君にはここにいてもらいたい。エルフにとって命に関わる病が根絶できる機会なのだから、こちらとしてはこれからも君の力を借りたいと思っている。」
「もしかして、アリエルはこの国の高官なのか?」
「言ってなかったな。私はこの国の諸事の調整役となる長老会のメンバーだ。」




