イケメンすぎる冒険者、自らの正体を知る②
「ところで、精霊石が人間には異常を示すとよくわかったものだな。もしかして、マイク・ヴァルカンあたりに使ったのか?」
この辺りにいる人間は俺とマイク・ヴァルカンくらいしかいない。
「そうだ。立証するためにそうした。」
なるほど、俺がエルフの血を継いでいるかどうか調べようとしたのか。
いや、それだと少しおかしい。
「俺に使用した時には、そのことについてわからなかったと言っていたな。マイク・ヴァルカンも健康診断を受けたのか?いや、違うか。立証するためにと言ったな。一体何があった?」
「やはり君は鋭いね。それも精霊石にまつわることだ。君がこちらに来た理由にもつながる。」
「俺がこちらに来た理由というと、依頼絡みなのか?」
「そう。今回の依頼は、エルフにしか手に入れることができない精霊石が、不当に持ち出されたことから始まるんだ。」
「密輸みたいなものか。」
「ああ。これまでも精霊石がまったく人間の手に渡らなかったというわけじゃない。公表していないだけで国交のある国もあるからな。しかし、ほんの一部しか出回っていないのも事実だ。」
「病気の診察のために、わずかな量だけを流通させていたというわけか。」
「流通というほどの規模じゃない。君のように、ボディスキャンによって病状を知ることができる者は市井には極めて少ない。あのスキルは限定された宗派の中でも、極一部の神官でしか使えないものだからな。」
俺のスキルは基本的に公表していない。
こちらに来てから大勢の前で公開したのは依頼のためでもあるが、エルフの国だからという理由もあった。
仮に人間の王族などがこのスキルを知ったとすると、俺は宮廷医師などとして拘束される可能性が高いと考えている。確かにそこで勤めれば、高給で安定した生活を送れたかもしれない。しかし、自由はまったくといっていいほど確保できないと思っていた。
そもそもが貴族や王族などの気位の高さが嫌いだったのだ。
現実として、ボディスキャンが使える治癒回復士は複数の国でお抱えとなっているらしい。だが、その多くは、治癒回復士の背後にある宗教を、国教と定めていることが多かった。
もちろん例外もある。
それは多額のお布施を定期的に納め、さらに国政にも関与を許している場合だと聞く。
フリーの冒険者の俺がそいつらと同じスキルを有しているのが知られると、間違いなく強制的に確保されてしまうのは想像に難くないだろう。
しかし、こちらでは学者として雇われている。
しかも、エルフと人間では価値観が異なり、精霊信仰を揺るがすものもない。
そして、個人的には特別扱いされずに、快適に過ごせるのではないかという目算もあったのだ。
まあ、逆に人間として差別を受ける可能性もなくはなかったが、そちらは幸いにもそういったことにはならなかったのである。




