イケメンすぎる冒険者、教鞭を執る②
プレ講義の後、アリエルにカフェに誘われた。
学園内にある店で、一通りのメニューは揃っている。しかし、残念ながらコーヒーは見当たらない。
「どうした、難しい顔をして?」
「いや、やはりコーヒーは希少品なんだなと思って。」
「ああ、メニューにないからか。それなら、これはどうだ?」
アリエルの指さす所を見ると、穀物焙煎やら何とかの根を乾燥させて焙煎しただのと記載されている。
「ひょっとしてコーヒーの代用品か?」
冒険者をやっていると、諸事情によりコーヒーがない地域というのによく出くわす。
そのほとんどは多湿で日持ちしないか、海路につながる物流拠点がなくて手に入りにくいかのどちらかである。
ただ、どんな所にも愛好家がいるのが嗜好品というものだ。
彼らは高い金を払ってでも手に入れようとするか、安価な代用品を探すために奔走する。
特にコーヒーやタバコは学者の中にも愛好家が多いため、エルフにしてもそれは同じなのかもしれない。
「よくわかったな。」
「何となくな。ここにそういったメニューがあるってことは、研究室にコーヒーを準備してもらうのは難しいことのように思うな。」
「まあ、これまで同じ要望を出した講師で話が通ったというのは聞かない。」
「だろうね。」
「ただ、君なら可能性はあると思ってる。」
可能性はあくまで可能性だ。ほんの小さなものがあろうと、通る確率は低いだろう。
俺の報酬は決して安くはない。
しかし、それで大きな期待をされていると思うほど単純ではなかった。
講師として呼ばれはしたが、あくまでも短期的な依頼でしかないのだ。
期待にそわなかった場合は、いつでもサヨナラと言われるようなものである。だから多大な期待はしない。
他の講師と同じようにあるもので折り合いをつける。
そんな生き方が俺には似合っていた。
「穀物焙煎のコーヒーもどきをもらおうかな。」
「それって美味しいのか?」
それをこのタイミングで聞くとは、アリエルもたいがい天然だなと思う。
「さあな。飲んだことはない。これまではコーヒーがなければ酒を代用していたからな。」
「ここでは酒はダメだぞ。」
「わかっているさ。学園以前に職場では飲まない。」
エルフはともかく、昼間から酒を飲むのが当たり前の地域もある。
それはそれでうらやましい気もするが、やはり酔って仕事はするべきではないだろう。
「あ・・・」
「どうした?」
とんでもないメニューをみつけた。
「アリエルにぴったりなドリンクがあるじゃないか?」
「ん?」
「激辛ジンジャエールだってさ。」
「ああ、それは私が監修したんだ。」
は?
バカじゃないのか?
「生姜の生の搾り汁20パーセント配合。柑橘系で爽やかさをプラスして、スパイスで火を吹くほどの刺激をあなたに。」
何だこのキャッチコピーは?
喉を潰すか、間違いなく飛ぶだろう。
よくメニューに入れてくれたな。
「美味いのか?」
「まあまあだ。冬の寒い日に飲んでも汗をかくくらいかな。」
ヤバそうな飲み物だな。
「良かったら一度試してくれ。」
絶対に嫌じゃ。
「今度機会があったらな。」
俺は店員を呼び、穀物焙煎コーヒーをオーダーした。
それを見ていたアリエルは、「自分も同じ物を」と注文する。
コイツ、絶対に激辛ジンジャエールは失敗作だったと思っているだろう。
「激辛ジンジャエールは頼まないのか?」
「それ、1日限定五杯なんだ。私が頼んだら他の人が飲めなくなる。」
心配しなくても誰も頼まないだろう。
「すいませーん、激辛ジンジャエールをふたつ下さい。」
あれ?
少し離れた席からそんな声が聞こえた。
マジか?
チャレンジャーだな。
「やっぱ眠気覚ましにはアレっしょ。」
「わかるー。あれ飲んだら、体がカッカして睡魔も吹き飛ぶんだよね。」
・・・使用用途が別の物と化してるようだ。




