イケメンすぎる冒険者、コワモテとして振る舞う⑥
激情型エルフくんは、魔道具で眉毛がないように変化した俺の顔を見て顔を強ばらせる。
「お、これだけでもコワモテ効果発動か」とほくそ笑みそうになると、激情型エルフくんは顔を引き攣らせながらも俺を殴りやがった。
眉なし効果を過信していた俺は、身を引いてダメージを殺したが指輪への魔力を止めてしまう。
当然のごとく、眉の色は元に戻るのだが、頬を打ったバチーンという音が思いのほか周囲の目を引いてしまった。
店中のエルフたちの視線が俺に集中するのがわかる。
さて、どうしようか。
ここでトラブルを大きくするのはあまりよろしくない。
依頼がキャンセルになるだけではなかった。下手をすると、罪人として拘束される可能性すら考えられるのだ。
殴られたから被害者になるとは限らない。
エルフは人間以上に自らの種族を誇りに思う。それを蔑ろにしたなどと認識されれば、二度とこの街から出られないということもありえるのだ。
刹那の時間でそう思いあたった俺は、頭を高速回転させて選択肢をふたつに絞り込む。
ひとつは、「笑ってごまかす」だ。
しかし、これはこれで危うい。
『笑う=バカにしている』と捉えられたらマズイことになる。
エルフは堅物も多いため、他種族の笑顔を嘲笑と捉える節があった。
ああ、めんどくさい。
そう、エルフは超めんどくさい種族なのだ。
では、もうひとつの手段にするとしよう。
コンマ何秒かでそこまで思考を進めた俺は、電光石火の勢いで行動を起こした。
そう、白目を剥いてパタンと倒れたのだ。
殴られた際に、脳が揺らされノックアウト。
ちょっとしたタイムラグが発生したかもしれないが、誤差の範囲だろう。
これで、悪いのは俺よりも激情型エルフくんになるはずである。
俺のとった行為がふざけていると思う者は少ないはずだ。
怒り狂って歩み寄るエルフくんから逃げるために、テーブルを迂回してグループが陣取る席へと座った。
眉なしコワモテ姿になったことについては、あまり気づかれていないはずである。しかも、激情型エルフくんには誤解だと弁明し、グループの各人には無作法の詫びに飲み物をおごるとまで言ったのだ。
これでも俺が悪者にされるようなら、あまりにも閉鎖的かつ排他的過ぎて、依頼遂行なんか無理じゃねって感じである。
ということで、しばらく気絶するフリをしようとした。
しかし、ここで予想外のことが起こる。
丸テーブルの足が四方に張り出しており、床よりもかなり高い位置で角ばっていたのである。
運悪く、俺はそこに頭をぶつけてしまい、フリのつもりがリアルに意識を飛ばすハメに陥った。
ふっ、相変わらずツイてないぜ。
気絶する前の頭に浮かんだのは、そんなくだらない言葉だった。




