イケメンすぎる冒険者、コワモテとして振る舞う⑤
「何ジロジロ見てんだよ。」
久しぶりに他ではなかなか食せない山の幸を楽しんでいると、いきなりからまれてしまった。
少し前に店に入ってきた若いエルフの5人組だ。
そのグループが近くの席に座ったため、チラ見するとひとりの女性と目が合った。その女性は切れ長の目が特徴のエルフの中では珍しく、パッチリとした愛らしい目をしていたのが印象的だったのだ。束の間、目が合ったままで互いに微笑みあって会釈した直後のことだった。
エルフの実年齢はわからないが、彼らの見た目的には十代後半に見える。
うち3人は女性だが、青い果実というよりも可憐な少女といった感じだ。
余談だが、エルフは人間の主観でいうと美男美女揃いではあるが、総体的に細身だ。要するに、出るとこは出ていない。細マッチョはいるが、ガチムチムッキーもいなかった。
つまりどういうことかというと、エルフの女性に対して綺麗な容姿を見惚れることはあっても、性的な目線はほとんどやらないということだ。
この「ほとんど」というのがミソなため、少し注釈を入れておこう。細身の女性が好きな者もいれば、貧乳が大好きという者もいる。
例えば、胸の谷間を強調した美女がいたとしたら、8割くらいの野郎共はさり気なく視線をやるだろう。もちろん、ガン見する強者もいるだろうが、それは少数派である。
しかし、貧乳女性が同じような服装をしていたとしたらどうだろうか。
何?
まず谷間がない?
そんなふうに答えるヤツは無視だ無視。
貧乳女性には、谷間美女にはない可憐さが存在する。
だから全体的な雰囲気や仕草、はにかむ表情などを堪能すべきなのだ。
何?
おまえもたいがい変態だなだと?
違う。
俺は守備範囲が広いだけだ。建前上、「異性は外見ではなく中身だよ」とも言っておく。
今、「最低のクソ野郎だな」と思ったヤツ、これだけは言っておくぞ。
そうだよ、俺はクソ野郎ですが何か?
「ジロジロ見た覚えはない。」
そう答えると、男性エルフのひとりが立ち上がり、こちらに歩み寄って来た。
席は人が通れるくらいの広さを隔てて隣同士である。そして、各テーブルは5人が座れる円形をしており、入店時に空いていたこともあって俺はひとりでひとつのテーブルを使わせてもらっていた。
彼らとはテーブルを隔てて一番離れた座席に座っていた俺は、時計回りに丸テーブルを迂回してくる男とは反対側に歩き出す。
つまりどういうことかというと、一時的に丸テーブルを中心に同じ向きに周回するという舐めたマネをしたわけだ。
呆気にとられた血気盛んなエルフを無視して、彼が先ほどまで座っていた席まで行って腰をおろした。
「失礼。見知らぬ人間が無作法な真似をしてしまいました。お詫びに皆さんにドリンクでも振る舞わせていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
腰をおろした時点で無作法極まりない。
しかし、好意を寄せている女性に色目を使ったとして嫉妬しているのか、種族が異なるから差別的な行為をされていたのか見極めたかった。
その答えによっては、人間である自分へのあたりの強さを念頭に入れた行動が求められるだろう。
「おまえ、ふざけてるのか!?」
無視されていたエルフくんが、俺のシャツを掴んで凄んできた。
激情型エルフというのは珍しい。
ネチネチと嫌味をいう学者肌のエルフに知り合いが多かったから、そう思うだけかもしれないが。
「ふざけてはいない。君がどういった感情で、俺に敵意を剥き出しにするのか知りたい。」
「こちらをジロジロと見ていただろうが!」
「そう感じたのなら申し訳ない。エルフの知り合いは多いが、君たちのような若いグループとはなかなか遭遇する機会がなかったから感激したのかもしれない。視線が留まっていたのなら無意識でのことだ。」
「口では何とでも言えるだろうが!やらしい視線をゼネに向けていたのに、気づかなかったとでも言うのか!?」
ゼネというのは彼女のことだろう。
今の対話からすると、差別的な意味合いはなかったように思える。まあ、難癖をつけたいだけなら、どうとでも捉えられるが。
「ひとつ、今後のために忠告しておく。初見の相手には感情的にならず、見極めてから対処するほうがいい。」
「ああっ!?何言って・・・」
俺は片方の指輪にだけ魔力を通した。
眉毛だけを変色させ、顔面をコワモテへと変化させる。
さすがにここで瞳孔まで変色させたら、エルフの怨敵が現れたとしてフルボッコにされてしまうからな。




