イケメンすぎる冒険者、コワモテとして振る舞う②
信用のない冒険者風情に、ハイエルフが暮らす場所を教えたくはない。
まあ、俺が逆の立場でも同じことを思いそうだった。
いろいろと思う所がないわけではない。しかし、ソロでしか活動できない俺にとっては、稼げる時に稼ぐべきだった。それに、エルフばかりが相手となると、容姿が問題でトラブルに発展する可能性は低いはずだ。たぶん。
排他的なエルフ社会に溶け込めるかどうかなど未知数だ。そもそも、学園の教師などやったことがない。尊敬を集められるか、ガン無視されるかは飛び込んでみるまでわかりようがなかった。
「ここはどこなんだ?」
気を取り直して疑問に思ったことを問いかけた。
ハイエルフの双子が居住する場所なら、わざわざ意識を奪われた意味がない。
「今回の依頼先である学園を中心に栄えた街よ。」
アリエルが答えてくれた。
「エルフの街?」
「ええ、そうよ。」
「そんな街があったのか。」
アリエルに意識を奪われるまでの道程から考えると、その周辺に宿屋があるような街はなかったはずだ。
「普段は精霊たちの術で、無関係の人が立ち入れないようになっているの。」
「認識阻害とか結界の類か?」
精霊魔法に関しては詳しくないため、そういったものかどうかはわからない。
「似たようなものよ。」
まあ、あまり詳しく聞いても俺が理解できないだろう。
精霊というのは数万種を超えるらしい。
それぞれの特性や属性など、ハイエルフですら把握していないのではないかと思える。
いや、数万種というのも真実かどうかはわからない。
何せ、それを専門に研究している者がいるかもわからないのだ。推測の域を超えない数といわれた方が納得できた。
「個人的な興味で聞くが、精霊ってどのくらいの種類がいるんだ?」
「さあ、知らない。」
ほらね。
「そんなことより、飯でも食いに行かないか?依頼についての打ち合わせもやっておきたい。」
マイク・バルカンが生産性のない俺たちの会話に終止符を打った。
「それはいいが、普通の飯が食べたい。」
「私も同じ意見よ。甘い物は好きだけれど、あなたの食べる姿を見ていると胸焼けがする。」
軽く牽制したつもりが、アリエルが直接的な言い方で乗っかってきやがった。
これでは、俺が言いだしっぺのようなイメージを持たれるだろう。まあ、胃がもたれるのは事実だがな。
「たまには良いだろう。で、どんなものが食べたいんだ?」
「甘い物の逆で、激辛料理なんてどう?おすすめの店があるのだけれど。」
アリエルがそんなことを言いだした。
激辛ねぇ。
嫌な予感しかしねぇな。
「ほう、激辛とは珍しいな。」
「そう?エルフは寒い地域で暮らしている者も珍しくないから、体を温めるためによく食べるわ。」
マイク・バルカンとアリエルの会話におかしなところはない。
だが、俺の頭の中で鳴り響くこの警笛はなんだ?
大人しく寝ておけと啓示がおりた気がした。まあ、無信仰者ではあるがな。
「鉄板で料理をしてくれるのだけれど、それが今流行りのオープンキッチンというのが売りの店よ。」
「ほう、目の前で調理してくれるのか。」
「ええ。料理の仕上げに赤い粉を振ってくれるのだけれど、それが湯気にのってみんなを感動の渦に巻きこむのよ。」
んん?
赤い粉?
感動の渦?
何言ってんのコイツ。
「それは赤い粉が店中に散って、皆が涙を流しているんじゃないのか?」
マイク・バルカンは冷静にそうツッコんだ。
「ああ、確かにそうかもしれないわね。」
因みに、アリエルは冒険者としても優れていて、ランクはAだそうだ。
大丈夫か?
このふたりが天然すぎるのだが・・・




