イケメンすぎる冒険者、依頼内容をようやく知る⑩
「わかってるわよね?ここであったことは一切口外しないこと。それを守れるなら合格にしてあげるわ。」
ふたりの治療を終えた後、姉の方からずいぶんと上から目線でそう言われた。
世間ズレもいい所だ。
それが自分たちにとって弱みだと言ってることに、気づいていないのだから。
まあ、俺にとってはどうでもいいことである。
悪用する気はないが、何かあった際の後ろ盾になってもらえると思えばいい。
「姉様、姉様。合格とするためには、もうひとつ条件をつけた方がいいかと思われます。」
妹の方がそう言って、姉に何か耳打ちしだいた。
何となく話している内容に予想はついたが、黙って待つことにする。
「妹様。それは重要なことね。いいわ、条件付きで合格よ。私たちに継続的な治療を行うこと。それと、その治療内容については一切口外しないことよ。」
「わかった。」
「なにか質問はある?」
「依頼内容について何も知らないから、教えて欲しいのだが。」
「「あ・・・」」
「「あ・・・」」じゃねえよ。
ようやく、依頼内容についての説明があった。
双子の名は、カラドリエルとサラドリエル─長いのでカラとサラと呼ぶことにする。
彼女たちは見た目に反して三百年以上を生きるハイエルフで、ある学園の理事長と副理事長だそうだ。
因みに、ハイエルフはエルフ以上に長命なため、三百年くらいならまだまだ若いらしい。人間なら十代後半から二十歳くらいかと思われる。
まあ、言動が幼かったり、世間知らずなところを見ていると納得できた。そもそもがエルフたちと人間では時間軸も違うし、生活する環境も違うことが多いのである。
街で暮らしたり、冒険者をやっているエルフの方が少数派なことを考えれば、さらに希少な種族であるハイエルフが、世間ズレしていてもおかしくはなかった。
で、本題だ。
前述したように、カラとサラが理事を務める学園は、エルフのみが通う教育機関として古くからあるらしい。
一般的には公開されておらず、他種族でその存在を知る者はほとんどいないといっていいだろう。
そして、そのエルフだけの学園に治癒回復に関する教育課程を導入しようと考え、外部から特別講師を招くこととなった。
その白羽の矢に立ったのが俺というわけだ。
しかし、それだけではマイク・バルカンはただの紹介者でしかない。
この話には続きがあった。
ある事件が人間の居住区で起こり、その容疑者として学園関係者が浮上しているというのだ。
その者はもちろんエルフで、事件の実行犯は別にいる。ただ、それなりに強大な組織として機能するその犯罪集団の一員として、重要な役割を果たしているのは間違いないらしい。
思っていたよりも面倒な依頼だと思った。
既に学園で講師をしているアリエルと、外部で調査にあたるマイク・バルカンの三人でチームを組むということだ。
犯罪組織の実態や人間の居住区で行われた事案が、どのようなことかまでは語られなかった。おそらく、それも実際に依頼に従事してから明かされるのだろうが、そこまで秘匿するには理由があるはずだ。
それに、マイク・バルカンに依頼が通ったということは、簡単な内容ではないということである。
彼がバックアップに回るということが、その犯罪組織の厄介さを物語っている。
ここまできて、「やはり辞めときます」とはいえなかった。場合によっては、双子への治療が猥褻行為として大事にされる可能性すらあるのだ。
安易に受諾した自分を呪うしかなかった。
はぁ、と深いため息を吐く。
「悪いけれど、この場所はまだどこか知られたくないの。目隠しさせてもらうわ。」
そう言いながら、俺の頭部に麻袋をかぶせてくるカラとサラには曖昧に頷いておく。
先のことを思い憂鬱になったが、すぐに後頭部に衝撃を受けて意識を失うことになった。
後から思ったことだが、アリエルの当身はともかく、体術を習ったこともないカラやサラに鈍器なような物で殴打されるのは勘弁して欲しい。
下手をすると、意識だけじゃなく命まで飛んじゃうよね。




