イケメンすぎる冒険者、依頼内容をようやく知る⑥
「こ、これって、本当に治療するために必要なの?」
さすがに長寿のハイエルフでも男慣れしていないようだ。口調も先ほどとは違って砕けたものとなっていた。
「必要だ。俺の両手は拘束されたままだしな。」
そう、冷え性の治療など、体に触れず見ただけでできるわけがない。
傍から見たらどう思われるか知らないが、近くで様子を見ている双子の妹はずっと赤面している。
「今から君の血流を診るから、じっとしていてくれ。」
姉の方は少し前から俺の膝の上に横座りしていた。
「み、診るって、どうやって?まさか透視!?」
「全然違う。」
「脱がないわよ!」
「脱がなくていい。」
俺の膝と彼女の臀部による接点からボディスキャンを試みる。
ボディスキャンとは、魔法ではなく精神修練の瞑想から派生した技法だ。
体の任意の部位に意識を集中させ、ありのままの状態を観察するマインドフルネスと呼ばれる神威術の一種である。
基本的には五感をフル稼働させて行うのだが、熟練者ともなると密着した相手の体を診ることも可能なのだ。
「あ・・・何か、あったかい。」
自らの体内を見る場合は感覚によるもので問題ないのだが、他人の体はそういうわけにはいかない。霊的な放射体─宗教学的には気やプラーナと呼ばれているものを、相手の体に流すことでボディスキャンする。
簡単にいえば、気を流して抵抗を感じる部分を詳しく調べ、悪い所を診察する手法だ。
因みに、俺が修行を積んだ流派ではオーラと呼ばれている。
神威術のひとつではあるが、もちろん俺は出家などしていない。幼い頃に両親を亡くし、ある宗派が運営する孤児院で育ったことで、物心つく前から日課として瞑想する日々が続いた。
孤児院をたまに訪れる僧侶は、俺を本殿に連れて行って本格的な修行をさせようと考えていたようだ。しかし、俺自身はそんな窮屈な生活をしたいとも思わず、6歳頃から街の露店の手伝いを始めて少額とはいえ金を稼いでいた。
十歳頃には冒険者御用達の店で革製防具の清掃や修繕に携わり、職人と勘違いされるほどの技能を身につけていたものだ。
え?
そのまま職人にはならなかったのかって?
いろいろあったからなぁ。
その店の職人の奥さんが妙に色っぽい人で、気がつけば食われていたんだよ。
え?
具体的に聞きたい?
何を食われたのかって?
ん~、アレをナニされて大人の階段を駆け上がったとだけ言っておこう。
アレだぞ、その後に旦那にバレて半殺しにされたからな。
で、そこで運ばれた先の治療院で先生に師事することになり、回復系を含めた光属性魔法を身につけたというわけだ。
別に感動的でも何でもない話である。
当時の俺は目的もなく、ただ将来的に何かの商売でもしたいと思い金だけを貯めていた。
しかし、その治療院で貯めていたなけなしの金のほとんどを治療費として持っていかれ、すぐにでも稼げる可能性のある地下闘技場で拳闘士になる道を選んだ。
そしてこの地下闘技場で、勝てども重傷を負って治療院に何度も運び込まれることを繰り返した俺は、不憫に思った先生に半ば強制的に弟子にされたというわけである。
因みに、先生は俺の瞑想から派生した技能に気づいていた。
あの人は同情で俺を弟子にしたんじゃない。
ボディスキャンによる診察を治療院でさせるために囲い込みたかったのだ。
しかも、光属性魔法を教える対価として、俺の体を散々もてあそんだりもした。
あ、因みに先生は女性だ。
しかも、とびきり色香のあるクール系美女だった。
まあ、どんな時も冷めた目で見下されていたため、あまり良い感情は持っていない。
ああ、体はボインバインだったけどな。




