イケメンすぎる冒険者、依頼内容をようやく知る⑤
「今回、あなたに求めている能力は、治癒に関するものです。」
妹の方が先ほどまでは何だったのかと思えるような、真面目な口調で話し始めた。
「治癒─回復魔法ということか?」
「単刀直入に言うとそうです。」
含みのある言い方をする。
そういえばわかるだろうと言わんばかりの目線に、なるほどと思った。彼女たちは既に俺のことをある程度調べあげているに違いない。
「具体的には何をするんだ?」
エルフという種族は魔法に長けている。
さらに、一般的な人間が扱えない精霊魔法まで使えるという。
しかし、エルフの唯一苦手とするのが治癒系統の魔法だった。適性なのか、種族特有のものかはわからないが、エルフには高度な回復魔法を扱うことができないらしい。もちろん、例外は存在するのだが、それもかなり少数派だそうだ。
治癒と一言にいっても様々なものが存在する。
エルフが得意とする薬術や教会が行う神威術、そして回復魔法やマインドフルネスという特殊なものまで、数えあげればキリがないだろう。
ただ、実践的なもの、即効性の高いものは集約される。
この時点で、俺はエルフに治癒に関する技法を教えることが、今回の依頼内容ではないかと思っていた。
アリエルが既に属している場所とは、教育に関する場なのではなかろうか。
本来、排他的なエルフの地に、別の種族が入り込むことは難しい。しかし、こと治癒に関することならば、そういったことの例外は発生するのではないだろうか。
いや、しかし、マイク・バルカンが入れないのはコワモテだからか?
顔の造りがエルフに近しいものでないとダメだから、容姿がどうのと言っていたのかもしれない。
「その前に、あなたの技能が本物かどうか見極めないといけません。」
「何をすればいい?」
エルフは厄介な相手である。
しかし、この時の俺は既に好奇心の方が勝っていた。
苦手な分野だとしても、他種族の助力を得てでも技術を身につけようとしている所に、聞いていたエルフの傲慢さとの差異が大きい気がする。
これまでは種族差以上の壁を感じていたが、急に距離感が近くなったのは錯覚ではないだろう。
まあ、このふたりのハイエルフはちょっと変わっている・・・というか、頭がおかしい。しかし、マイク・バルカンやアリエルが俺を面談のために送り出したのだから、真面目に受け答えはするべきだと思った。
「私たちを治療して欲しい。」
「どこか悪いのか?」
見た感じでは病弱な印象はない。
痩せているのは総体的なエルフの特徴でもあるし、少し青白く血色が悪そうな肌色も驚くほどのことじゃなかった。
「ええ、慢性的な冷え性なの。」
ああ。
まあ、見た目的にそうなんだろうなとは思う。
しかし、冷え性を治せとは、なかなか難しいことをおっしゃるものだ。
「もしかして、即効性に期待しているのか?」
「「もちろん!」」
ふたり揃ってか。
まあ、それくらいでなければ、ハイエルフのお眼鏡にはかなわないのだろう。
だが、それでいい。
ハイエルフやエルフは美形揃いである。
いちいち俺のルックスで、荒事に発展することもないだろう。
「耳が尖ってない」「ちっ!?人間か!」などとマウントを取られることはあるかもしれないが、その程度のことである。
こんな思考に至る自分をどうかしているとは思わない。
友だった者、仲間だった者と、ありもしない痴情で殺伐とした関係になるよりは余程マシである。
それに、エルフたちとの距離感や環境が嫌なら逃げ出せばいい。
どうせ、マイク・バルカンやアリエルとは友人でも何でもないのだ。
精神的に病みそうなら、すべてを捨てて旅に出れば良かった。それくらい割り切った方が、将来の不安に思いを馳せることもないだろう。




