イケメンすぎる冒険者、出立する①
後日、マイク・バルカンと街を出た。
向かった先は馬車で十日ほどかかる大都市である。
途中、何度か街に宿泊し、その度にマイク・バルカンの甘味爆盛りオーダーを目の当たりにしてきた俺は、馬車旅にもかかわらず食欲減退により痩せてしまった。
しかも、あまり食べない俺を見たウェイトレスからは、「あまり食欲ないみたいね。良かったら私を食べる?」といったお誘いを毎回のようにされる。
その度に相席しているマイク・バルカンは呆れた顔をしていた。
何のことはない。
こういった旅人や行商人、冒険者が集う飲み屋などでは、ウェイトレスが気に入った相手を見つけて夜のお誘いをすることが少なくなかったりする。
相手や懐具合によりけりで、有料無料でサービスするという趣味と実益を兼ねたお遊びのようなものだ。
当然のごとく、後で旦那や恋人が出てきたり、病気をうつされたりとトラブルも多いため、俺は基本的に拒否している。
え?
トラブルにならなかったら誘いにのるのかって?
相手によりけりだが、金が目的なら興ざめだからほぼ誘いにはのらないといっておこう。
まあ、溜まりに溜まっていたら可能性はある。
・・・俺も健全な男だからな。
それはさておき、馬車で十日の旅路ともなると例外なく尻が破壊されてしまう。
馬車に座席がついてるだけでもマシな方だが、硬い一枚板の座面は容赦なくケツを攻めたてる。人によってはイボ痔ができ、それが路面の凹凸からの衝撃によって潰れて大惨事となってしまう。
馬車での移動が多い行商人などは慢性的な痔に悩まされる。だから緩衝材として中綿を入れたズボンが大流行したのだが、外を出歩く冒険者は雨や湿地で濡れるとケツ蒸れやケツ荒れを起こすためにあまり使用する者はいなかった。
個人的な対策としては定期的に外に出て歩くこと、そして空気イスをすることがオススメである。
じっと座っていると血流も悪くなり筋力も落ちてしまうため、健康と体力維持のためにはぜひやった方がいい。
ただし、同乗者からは空気イスで体をプルプルさせている様子を勘違いされてしまい、「漏らすなよ」とよく言われてしまうことがネックだと伝えておこう。
まあ、体裁よりも実利を取るなら、暇がある時に空気イスを実施することを推奨する。
因みに、飲み屋で空気イスをすると、なぜか酔いが早くまわり安い代金で酔っ払うことができるが、あまり楽しくないのでオススメはしない。
と、なぜかマイク・バルカンも俺の真似をして隣で空気イスを行っていた。
恐ろしく厳つい顔をしているマイク・バルカンを怖がっていた同乗者たちも、二人並んで空気イスを行いぷるぷるしている俺たちを見て、呆れた顔をするようになっている。
奇人か変人がいるとでも思われているのだろうが、実際にそうかもしれないのでマイペースを貫いた。
「むぅ、これは効くな。」
身長と変わらないくらいの大剣を膝上に置いて空気イスをするマイク・バルカンは、定期的にそのようなことをつぷやいている。
確かにその重い剣は筋力アップに効果的だろう。ただ、左右に座る者たちにとってかなり邪魔になっていることをいい加減気づいて欲しかった。
周りの乗客は怖くて何も言えないのだろうが、かといって俺が注意するのも空気イスを始めた当事者としては少しおかしい気がしたので沈黙を貫いている。




