イケメンすぎる冒険者、浮かれてやらかしてしまう①
「と、止まれ!」
「怪しい奴め。両手をあげて大人しくしろ!」
ああ、なんでこうなった?
マイク・バルカンからもらった魔道具を使用して試してみただけなのだが、まさか街に入る際に門衛に止められるとは・・・。
俺はここで初めて、コワモテでいることの弊害を知ることとなった。
─三時間ほど前─
「本当にそれで外出する気か?」
マイク・バルカンは呆れた顔でそう言った。
指輪を譲ってもらったのは定宿からほど近いカフェだ。昔ながらの軽食と、コーヒーや紅茶を出す喫茶という趣きのある店である。
マイク・バルカンが宿泊している宿からも近く、客は近所に住む老人が主体のため同業者はほとんど見なかった。
ただ、メニューにある軽食はボリューミーで味も良いため、俺は贔屓にしている。
因みに、マイク・バルカンはコルネット・コン・パンナを頬張っていた。
コルネット・コン・パンナは、半分に切った小さめの甘いクロワッサンに溢れるほどのホイップクリームを挟んだものだ。それをさらにエスプレッソにホワイトチョコレートと濃厚ミルクで作ったホワイトモカで流し込んでいる。見ているだけで胸焼けがしそうだった。
口の周りはホイップクリームで真っ白で、一見すると白ひげをたくわえたオーガのような印象である。
「ちょっとしたことだが、これで印象がだいぶ変わると思う。このまま外に出て、どういう反応をされるか試しておきたい。」
「そうか・・・まあ、捕まらんようにな。」
「捕まる?」
「自分でどう思ってるかはわからんが、そういうこともありえるということだ。」
イマイチよくわからなかったが、容姿だけで誤解を生むということは身に染みて理解している。
「わかった。忠告感謝する。」
俺は立ち上がって颯爽と店を出た。
出しなに出入口付近にいた老人が「ひっ!?」と叫んで恐怖に顔を歪めていたが、マイク・バルカンがいることに気づき、顔を見て驚いたのだろう。
まあ、彼の顔を初めて見たらそうなるわな。
俺はそんなことを考えながら、内心の高揚感に抗わずに歩き出す。
一方、一人残されたマイク・バルカンはつぶやいた。
「大丈夫か、あれ・・・」
別にマックスが心配というわけではない。
しかし、依頼をこなすためには彼が必要だった。
ここで余計なトラブルを起こして欲しくはないが、嬉々として歩いて行く彼を止めることは躊躇われたのだ。
「最悪の場合は、身元引受人になれば何とかなるか。」
マイク・バルカンは起きてもいないことを深く考えても仕方がないと、そう結論づけた。
マックスは勘違いしている。
自分にとって最善だと思っていた魔道具を、苦労することなく手に入れることができたのだ。
もちろん、無条件で譲ってくれるというわけではないことくらい理解している。
しかし、夢にまで思い描いたことを実践できるのだから、浮き足立つなという方が無理だろう。
想定していた魔道具よりも機能性は劣る。しかし、それでも俺の印象を大幅に変えてくれるのだから、いろいろと試したかった。
心なしか、すれ違う人々が俺をチラ見した後に目線を逸らしていく。
中には顔を見た途端に泣き出す子供もおり、慌ててあやす親もいるくらいだ。
おお、良い。
これは良いぞ。
俺は魔道具の力で、理想とするコワモテに少しでも近づいたんじゃないだろうか。
もっと様々な反応を見てみたい。
そう。
その時の俺は、そんな風に短絡的に考えていたのです。




