女王の誕生。
「二人に朗報」
私が執務室に入ってくるなり、早々にギルベルトが口を開く。書類を手に持ち、顔は彼の方に向いて聞き返すジークフリートの隣に座る。
「どんな情報?」
「ベルティーナ様が女王として即位なさるそうだ」
「へぇ、ベルティーナ様が。あの殿下がよく許したね」
「男爵令嬢が浪費しているから、それを上手くついたようだ」
「国民からも支持されているみたいね」
ギルベルトが持ってきたノイエンドルフの新聞紙を読む。
見出し一面にベルティーナの顔写真が載っている。生き生きとした表情の彼女を見て、思わず微笑んでしまう。
可愛らしいのは変わらないみたい。
「アルベルトに単語でしか伝えてなかたけど、上手く利用してくれたみたいだ」
「さすがリーシュ家の次男。それで、アルベルト殿はベルティーナ様の王配になるんだよな?」
「みたいだな。とりあえず、二人が卒業したら結婚式を挙げるみたいだ」
殿下と会ったとき、隣にいたのが、ベルティーナだった。お姉様、お姉様と呼んでくれていたベルティーナのことは、ずっとずっと可愛がってきた。
だから、ルートヴィヒと縁が切れた後も、こっそり繋がらせていただいた。
本当の妹のように可愛がっていたベルティーナが、結婚だなんんて…自分のことのように嬉しい。
「招待状は…まだ届いていないわよね」
ジャジャーンという効果音と共に、ギルベルトは三枚の手紙を出す。王家の印が押されており、彼女本人が出したことがわかる。
彼はスピーディーに手渡してくる。
急いで手紙を開けると、美しい字で文章が書かれている。私は胸元に手紙を抱きしめて噛み締める。
「また先だけどね。その表情なら行くんだろ?」
「えぇ、もちろんよっ」
「殿下がいるのに?」
それをすっかり忘れていた。
二人が兄妹だということを、頭から抜け落ちるなんて。
生写しかってくらいそっくりなのに。
「そう言えば、女王なら…殿下はどうなったんだ?」
青ざめている私を放置して、ジークフリートはギルベルトに質問を投げかける。
こっそり聞き耳だけを立ててみる。
「殿下…王太子の称号を剥奪された。ヒルデと共に、とある場所に追いやられているらしい」
新しい手紙をジークフリートに手渡し、彼が内容を確認するのを横から覗き見る。
陛下からの手紙には、罰として二人には北西の領地に追いやったことが書かれていた。
「北西の領地って…」
「げっっ。あんな生きるのに適していない場所に追いやられたのか」
今度は二人が青ざめている。
そうなるには理由がある。北西の領地はノイエンドルフで一番暗くて、湿気が強くてジメジメしている陰湿な場所だ。それに野獣が野放しにされている。
作物を育てても、野獣が荒らすのか…環境が悪いのか、全く育たない。
少し前まで、クラウスハール家の北の守護が整備していたが、隣国へ移ってしまったため無法地帯になっている。北の守護もお手上げの場所なのだ。
「よくあの令嬢が受け入れたよな」
「暴れたらしいけどね。ただ、王家に代々伝わっている宝石を売ったらしくて、自分を担保にされているらしい」
「もしかして…あの魔法道具渡した?」
こちらが知らない謎の会話が繰り広げられる。
帝国と親密な関係を持っているジークフリートから、ノイエンドルフに魔法道具を送ったらしい。
その魔法道具はとある一定の場所から離れると、突然息苦しくなってしまうとのこと。
国王陛下を怒らせた男爵は、娘を助けられないらしい。
「二人とも、大丈夫なの?」
「「大丈夫じゃないな」」
声を揃えて言うものだから、声に出して笑ってしまう。
「さすがに、あの領地は殺されに行くようなものだから」
「僕も、レオ姉と一緒に行ったことあるけど、呼吸するもきつい」
こんな弱音を吐くジークフリートは初めて見るかもしれない。
それほど大変な場所なのか。
温室育ちのルートヴィヒには大変キツそうだ。
「もしかして、殿下は平民になったの?」
「そうだな。まぁ…仕方ないだろうな」
本当に王位を剥奪されたんだ。
今、苦しいでしょうね。まぁ私にした仕打ちにして結果としてはいいと思うけど。
ざまぁってやつね。
本当の愛とやらで頑張っていただきたいわ。




