公爵家の息子と公爵家の娘③
シュテルンベルガー主催のパーティ当日、俺はクラウスハール家にニーナを迎えにやってきた。
あいも変わらず顔パスで入ると、メイド服ではなく着飾ったニーナが待機していた。
珍しい結い方をしている彼女を見て、心臓が鳴る。
「ニーナ嬢…お待たせしました」
「…エスコートありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
頬を淡い赤色に染めた彼女と共に、シュテルンベルガー邸へと向かった。
◇◆◇◆◇◆
伯爵と夫人がで開いてくれたパーティは、穏やかな時間が流れている。
王族からは王女と…パートナーである俺の弟だった。
横にいるニーナは、参加する側は初めてなのだろう。ソワソワ動いているのを見て、思わず笑ってしまった。
「な…どうして笑うのですか」
小声で怒ると顔を背けてしまった。そして、その勢いのまま何処かへ向かってしまった。
広いといってもしれてるだろうから、このまま満足するまで自由にしても大丈夫だろう。
飲み物をとりに行こうとすると、とある女性がこちらに声をかける。
「お久しぶりですね」
「夫人、お久しぶりです。最近はいかがですか?」
「上々ですわ。ギルベルト様のおかげで、暮らす術を見つけられました」
声をかけてきた夫人は、以前元旦那から言葉の暴力を受けていた。
心が壊れる前に、どうにかして離縁をしたいが相手の方が身分が上。そのため証拠を集め、旦那との離縁に成功した。
独り身となった夫人は、頭が良かったため貴族令嬢の講師として仕事をすることになった。
結婚をしているときは、死んだ目をしていたが今は生き生きしている。
「本当に…生きてるって心地がするんです」
「確かに、夫人は生き生きしていますね。噂によると、再婚されたとか」
なんて言ってみれば、夫人は頬を染める。
彼女は町で商売をしている男性と恋に落ちたらしい。その後、彼からのプロポーズにより再婚するに至ったらしい。
今度は失敗をしないように頑張ってもらいたい。
二人で談笑していると、裾を引っ張られる、そちらを振り向くと、真顔のニーナが立っていた。
「…そちらの女性は、ギルベルト様の恋人ですか?」
その声には怒りが含まれている。
俺は夫人とニーナを見比べて、夫人と見つめ合う。その視線に気が付いたのか、袖を掴む手が強くなる。
夫人が何かを言いかけるのを静止して、ニーナの方へ体を向ける。
「探しに行けなくてすみません」
「それは別にいいんです。勝手に離れたのは私なので」
いつもと変わらない口調のはずなのに、どこか一線を引いてるような感じがする。
「弁解をさせてください」
彼女の了承を得る前に、夫人との出会いから先ほどまでの会話を包み隠さず話す。途中で遮らずに最後まで聞いてくれる。
表情は暗いままだけど。
「…わかりました。私が勝手に関係を想像してしまったようです」
下を向きながらボソボソと告げるニーナ。
もう…今日は失敗だ。自分から誘っておいて、エスコートも不十分…そして別の女性と談笑する。
これ、メルクーア嬢が見れば激怒して、冷たい目で見てくるだろう。
それに、自分の保身を考えている時点でクズだ。
「本当に申し訳ございませんっっ。今からやり直しをさせてくださいっ」
自分の欲望で彼女を振り回しているんだ。
空回りしても。かっこ悪くなってもいい。ありのままの自分を見てもらおう。
「…無理をしなくても大丈夫です」
「無理なんかしてないです。俺は…ニーナ嬢のことが、気になってるんですっっ」
自分の中では小さく言ったつもりだったが、想像以上の清涼だったらしい。周囲の人間がこちらを振り向く。
「き、気になってる…」
だけど彼女は視線が入らないほど、俺の言葉に衝撃を受けたらしく放心している。
俺は彼女の手首を掴んでテラスへと向かった。
後方からはこそこそと話が聞こえてくるが、気にしない素振りをする。
「ニーナ嬢」
ぼんやりしている彼女の両方を軽く揺さぶる。何度目かで我に返ったのか、俺の目を見て爆発する。
「ギ、ギ、ギ、ギルベルト様っ」
「ニーナ嬢、もうお気づきだとお思いですが、俺は…ニーナ嬢のことを気になっています」
「…えっと」
「こんなにも自分の気持ちを振り回されるのは貴女しかいません。気持ちを抑えられず、今日のパーティに誘いました。もしよろしければ…仲を深めさせて下さい」
ニーナはこちらを見て逸らして、もう一度、こちらを見つめる。口もパクパクと動いている…可愛い。
「……知ってました。もしよろしければ…お願いします」
「ありがとう、ニーナ嬢っ」
気持ちが昂っていた俺は、彼女を抱き上げて喜びを爆発させたのだった。




