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誕生日会までの日。

あれからヒルデは燃えたのか、ルートヴィヒとの距離をずっと縮めてきているようだ。

それを満足げに眺めた。好きにすればいいのよ…自分が思うようにすればいいのよ。

私とはと言うと、お父様が隠してきたニーベルンゲン王国の歴史から神学に関してのあれそれを勉強してきた。

お互いの時間があれば、ギルベルトと一緒に。


賢王が在位している間は、魔法の帝国とは友好国だったらしい。暴君が賢王夫妻を殺害したこと、帝国の祭りの際に皇太子に不敬を働いたこと。そのことにより、絶縁状態となった。

ということまでは頭に入ってきた。ギルベルトは地頭がいいのか、短時間で覚えているようだ。


勉強をしている以外は、ベルと一緒にクローゼットの中を整理していく。

婚約した七歳の頃から、贈られてきたドレスや宝石などの装飾品が多数ある。そこから質の良い物を選んで断捨離を進める。

私は状態の良さが分からないから、ベルに訊ねてみればほぼ全てが状態のいい物らしい。これを質屋に少しずつ持っていこう。

ただ…幼い頃に着ていたドレスは、流行から外れているから難しいか。


それと…どこに行って売ってもらうかだ。

王家から贈られた物だから、相当質がいい。怪しいところに出すのも…憚れるし。


「ツェツィーリアのところは?あの家、一応商家だったよね?」


一緒に勉強していたギルベルトが紹介してくれたのは、友人であるツェツィーリアの実家だった。

確かに親友で理解のある彼女だが、私は詳しいことを伝えていない。

ジークフリートと共に、この地を離れるかもしれないことを。


「ツェツィに言ってないのよ」

「伏せてたらいいと思う。あの性格だし、深いところまでは追求してこないだろ」


さすが幼なじみといったところか。

確かに彼女は、友人であれば一定の距離を保ってくれる。その部分に今回も甘えさせてもらおう。

売る場所を決めたら問題が解決した。


「少し休憩しますか?」

「あぁ…少しだけ。もう、こんな時間なんだ」


ベルを呼ぼうとしたタイミングで、彼女は走ってくる。そして、彼女はとある人物がやってきたことを伝える。


「ル、ルートヴィヒ王太子殿下がいらっしゃいました」


名前を聞いて二人して体が大きく揺れる。

ギルベルトは机に膝をぶつけたようで、抑えながらうずくまっている。

ベルに彼の手当てを任せて、乱れた髪を整えながらルートヴィヒの元へ向かう。


「お久しぶりです、ルーイ。どうかなさいましたか?お手紙をよこさずいらっしゃるなんて」


少しだけ嫌味を忘れずに。

彼の傍には、見かけたことのある執事が立っている。


「急に訪ねてごめんね。この前言っていたドレスが届いたから渡しに来たんだ」


…だったら別に今じゃなくてもいいでしょうが。

小さく拳を作ると、自然と震えてくる。

どうして、今わざわざ渡しに来るの?本当に…タイミングが悪い。


「あぁ…そういえば…そんなことありましたね。ルーイのお手を煩わせてしまいました」

「いや、僕がメルクーアの反応を見たくて、急に訪ねてきてしまったんだ」


傍にいた執事に贈り物を渡された。

彼は目を輝かせて期待している。まさか…この場であけるの?


「今、開けてみて欲しいな」


促されて箱にかけられたリボンを解いていく。


「わぁ…すごい上品なドレスですね」


開けるとシルクを使ったドレスが入っていた。

今までもらった中で一番上質のものかもしれない。所々に青い宝石であるサファイアが添えられている。

あまりにもいいものすぎて、ドレスを持つ手が震える。


「こんな良いもの…よろしいのですか?」

「うん。もちろん、メルクーアのために用意したからね」


柔和な表情でこちらを微笑んでいるが、私はぎこちない笑みになっているだろう。

今更なぜ?という疑心暗鬼に陥る。誰がルートヴィヒに助言をしたのだろうか。


「ありがとうございます。こちらを着させていただきますね」

「当日楽しみにしてるよ」


ルートヴィヒは本当に贈り物だけを届けにきたらしく、そのまま帰宅した。

ひとまずは、ギルベルトと会わなくてよかった。


「すごいドレスだね」

「ひっ。あ…はい。殿下からの贈り物です」


物音を立てずに近づいたギルベルトが、手にしたドレスを見て感謝を呟く。

私も他人がこのドレスを見たら同じ感想を呟くだろう。


「今度の誕生日だよね」

「そうです。ついこの前聞かれていたのに…用意が早いなって」

「これ、オーダーメイドじゃないでしょ」


ギルベルトの口から告げられた真実に言葉を失う。

オーダーメイドじゃないってことは、既製品が届けられたってこと?


「ごめん、言い方間違えた。完全オーダーメイドじゃないってこと。半オーダーメイドだね」


ジークフリートのメイドは言っていた。と付け足す。

彼女とはいつの間に仲良くなっているんだ。

彼が持ってきたドレスに対して、一喜一憂するのは疲れる。


「そうなの。情報ありがとう」

「期待した?」

「まさか、彼のセンスは…ないじゃない」


ないというか、流行が変わっただけか。

でも、ほんの少しだけ期待したのは事実。


「昔はあったはずだけどね。今はない方だと思う」

「やっぱり貴方もそう思う?昔はマシだと思ってたんだけどね」

「相手にするの疲れるんでしょ」

「急にどうしたの?」

「顔が物語ってる。今日はもうおしまいにしようか」


ギルベルトに言われるってことは、ルートヴィヒも気付いているわね。

だめだ…自分の制御が効かない。

自分にとってはいいんだけど…ヒルデは喜ぶだろうな。


嬉しいお祝いのはずのなのに…憂鬱だ。

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