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家族。

『ジーク…貴方は私たちの宝よ』

『私たちの分もしっかり生き延びるんだよ』


遠い昔の思い出の一片。

優しい表情と、声で言われているのだけが僕の中に残っている。

それを残したまま成長した僕は、徐々に顔つきが両親や兄弟たちと異なることに気が付いた。一緒ではあるんだけど、どこか違う…ピースが埋まらないようなそんな感じ。

父に十歳になるときに訊ねたことがある。


『僕、本当にクラウスハール家の子供なの?』


純粋に訊ねただけだったけど、両親は目を見開いて驚いていたし、兄たちは息をのんだ。

この反応で、聞いてはいけないことだったんだ…と思って後悔したのを思っている。

やっぱり大丈夫。なんて言ったけど、父はどこかに向かってとある物を持ってきた。そして、そのまま緊急の家族会議が開かれることになった。


僕はクラウスハール家の三男ではなく、今は亡き国…ニーベルンゲン王国の王子だと聞かされた。

今までずっと両親の息子だと思って生きてきたのに、二人と血が繋がっていないと聞かされて、言葉が出なかった。

より詳しく教えてくれたのは、父と王妃は兄妹で賢王と父は親友、そして兄妹である父と王妃と母は従兄弟同士。僕と両親は無関係ではないということだ。


賢王は暴君が殺害を実行しようとすることを察知したのか、僕だけを逃すことにしたらしい。運よく帝国と親交国だったため僕そっくりの人形を作ってもらえたみたいだ。

幸い暴君の目的は、賢王と王妃で王子である僕にはさほど興味が湧かなかったらしい。賢王が信頼していた公爵家に僕を託して、新しい地で生活させようと動いてくれたよう。

タイミングよく母が体調不良で、二年ほど社交界に出ていなかったらしく、表面上では僕を産んで療養したというにしたらしい。


兄二人は急に見知らぬ子供がやってきて嫌だったと思う。しかも、隣国の王子。

いくら血縁があるとはいえ、王子だから扱いに困っただろう。

ハーゲンとは七歳ほど離れているが、アルベリヒの方は二歳しか離れていない。まだ甘えたがりの年齢なのに、僕がそのポジションを奪ってしまった。

だから、昔はアルベリヒにすごく睨まれたし、僕の自我が強くなっていくと大喧嘩もした。


『お前なんか、俺の弟なんかじゃないっ』


と大声で叫ばれたことがある。その直後、アルベリヒはしまったという表情をし、ハーゲンは彼を殴った。

その当時は意味がわからなかったけど、今ならわかる。アルベリヒにとって、僕は弟じゃない。それを言ったことにハーゲンは怒ったのだ。


『アルベリヒっ、今すぐっ、謝れっ』


飄々としている優しい兄が、声を荒げたのが初めてで驚いた。その後、グスグスに涙を流したアルベリヒが謝罪をした。

そこから、アル兄と呼んでいたのをアルベリヒに変更をしたのだ。

過去の話は今では笑い話になっている。そんな昔の話を思い出したのは、今日メルクーアに僕の正体を伝えたからだ。

シュテルンベルガー邸から帰宅すると、珍しく家族全員集合していた。


「おかえり。どうだった?」

「ただいま。全部、話してきたよ。というか、伯爵がほぼ全部言ってた」

「あら、そうなのね。ねぇ…ジーク、ようやく肩の荷がおりたかしら」

「うん、おりたよ。伝えないとって思ってたから」

「メルクーア嬢、何か言ってた?」

「ジークはジークだよって」

「良かったじゃん。で?」


アルベリヒからの圧が強い。で?って何?僕が戸惑っていると、彼は楽しそうに笑っている。


「メルクーアがさ、殿下に蔑ろにされてるの知ってる?」


僕が話しながら座ると、全員が身を乗り出して話を聞き始める。


「あの例の男爵令嬢が、殿下を篭絡しているんだけどさ」

「アイツ…そんなことしてたのか」


夜会で見かけたことがあるハーゲンは鼻で笑う。馬鹿にしてんだろうなっていうのが一目でわかってしまう。


「そう。もう…一瞬だよ…落ちたの。メルクーアは王太子妃としてこの国で頑張るつもりらしい」

「あーメルクーア嬢らしいね。でも、それで彼女が幸せになるとは限らないしね」

「限らないんじゃなくて、幸せにならないんだろ?」


兄二人は僕以上に討論している。両親は一歩後ろで見守ってくれているようだ。


「そう。で。前にも言ってたけどさ…建国の話ね」

「もしかして、実現させるのか?」

「あぁそのつもり。だけど、ついてきてほしい人が乗り気じゃない」

「そっか、メルクーア嬢は…まだ王太子妃だもんね」


王太子妃という単語が僕の心をえぐる。

もう少し早く出会っていれば、関係が変わっていたのかな。


「どうしたら良いと思う?」


やや絶望を感じ、手のひらで顔面を覆い、自分の弱音が自然とこぼれてしまう。


「どうもこうも…失礼だけど、王太子殿下がより興味を失うしかないね」

「噂だけど、王太子はほぼ興味を失ってきてるんだろ?」

「嫌な予感がするわね」


母は頬に手を当ててため息を零す。僕と兄二人は、そんな母に、何が嫌な予感なのかと声を揃えて訊ねてしまう。


「あのね、私の勘なんだけど。まだ婚約中でしょ?最悪…破棄されないかなって」


ハキ…はき…ってなんだ。


「婚約破棄ってこと?そんな酷いことは流石にしないって思ってるんだけど」


ハーゲンは僕より先に反応する。確かに男爵令嬢にうつつを抜かしてはいるが、婚約破棄をするような人ではないと思ってる。


「最悪の場合よ。それに…相手は男爵でしょ?お金を使って何かするわよ。もし…そのときにメルクーアちゃんの心が移っていると良いんだけど…」


普通の男爵なら気には止めなくて良いと思うけど、相手はエーレンバークだ。あの家はお金をぶつけて解決するような人だ。娘であるヒルデが王太子妃になりたいなんて言えば、金でなんとかしそうだ。


「移っていると良いけどね。そろそろ移っててもおかしくはないけど」

「俺に聞かないでくれ。そこまでメルクーア嬢のこと知らないし」

「多分だけど、この前見かけた後の感じだとね。良かったじゃん、ジーク」


からかうハーゲンを軽く睨んで話を変える。


「そのさ、シュテルンベルガー伯も手伝ってくれるって言ってた」


伯爵の話をすると、父が嬉しそうに頷いて、母は目を輝かせている。


「だから、準備が出来次第移動したいと思うんだけど…みんなは大丈夫?」


改めて聞くと、ハーゲンがわざとらしくため息をつく。それに片眉を上げるとこちらを見てから口を開く。


「大丈夫だよ。今更、何を気にしてるんだ?」

「俺も大丈夫。お前の正体を知ったときからこうなるのは覚悟してたし」


アルベリヒは普段無口のくせして、今日は饒舌になっている。


「レオも来るんでしょ?アイツも来るらしいし」

()()()()()()な。あぁ…ジークフリートに付いて行くって言ってたわ」


アルベリヒの言うアイツとは、彼の婚約者だ。レオ姉まで来てくれるなんて、恵まれている。


「傍でジークの成長を見届けたいもの。ね、貴方」

「あぁ。ここまでくれば、ジークの孫も見たいしね」


両親二人が楽しそうに会話しているのを、息子三人でじっと見つめる。その視線に気が付かずに、二人の世界に入っている。


「だから貴方は気にしなくて良いのよ。私たちはジークの大切な家族だからね」


母からの最大限の愛をもらった気がする。


「そうだよ。気にしなくて良いんだよ。自分が好きなように動きなさい」

「俺たちもサポートするし。賢王や王妃様にはお世話になったんだ」

「お前は、俺の()()()弟だから」


その言葉に自然と口角が上がる。ハーゲンを見ると、彼を見て笑っている。そんな彼は顔を逸らして気まずそうにしている。耳が真っ赤になっている。

笑ってはいけないと思いつつ、声に出てしまう。


「ありがとう。動くときは、協力お願いするよ」

ここまで読んでくださりありがとうございます(´˘`*)

また、誤字報告ありがとうございます!!修正させていただきました。

何か誤字ありましたら、報告してくださると嬉しいです。

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