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久しぶりの対面での会話です。

昨日の出来事があった後、自室で気を紛らわせながら過ごした。そうすることで、少しだけ気分が落ち着いたような気がする。

登校するとツェツィーリアがいつものように声をかけてくれる。


「そうだ、ツェツィ。今度、私の家に遊びにきて欲しいの。ほら、この前言っていたでしょ?」

「あ、私の全快祝い?嬉しいわ、ぜひお邪魔させて」


近くにいたジークフリートを彼女が誘う。

訓練で忙しいだろうと思っていたが、すぐに首を縦に振った。

気のせいかもしれないが、少なからず彼は喜んでいる気がする。


「ジークが来るのは珍しいわね」

「名前で呼ぶのはやめろ。聞かれたらどうするんだ」

「気にしないんでいいんじゃない?誰も聞いてないでしょ」


注意されてハッと口を押さえていたが、時すでに遅しな気がする。

自分の気が緩みすぎて失態を起こしてしまった。ツェツィーリアが庇ってくれるが、気を緩めたのは間違いだった。


「ごめんなさい、気をつけるわ」

「わかれば大丈夫だよ。次から気をつけて」


優しい声で許す彼にほっこり心が暖かくなる。

別の用事を思い出し、二人を残して目的地へ向かう。その道中、目の前には久しぶりに見かけた金髪がいた。


「あ…。お久しぶりです」


歩いている足を止めて、軽くお辞儀をする。


「久しぶりだね、元気にしていた?」

「えぇ…元気でした。殿下もお元気でしたか?」

「うん、元気だったよ。心配してくれたの?」


心配ね。

心配なんてしていたら、もっと前に話しかけている。脳天気なのか、私に興味がないのか。

あぁ…私に興味がない方か。

休憩時間は無限にない。ここで潰すのは勿体なさすぎる。


「殿下、これで失礼いたします」

「あ…えっと…これから時間はある?」


もうすぐ授業が再開する。だから、お互いに時間がないのはわかっているはずだ。


「今からの時間はございませんが…放課後なら」

「そっか。じゃあ…バラの庭園で待ち合わせはどうかな?」

「バラの庭園ですね。了解しました」


少しだけ未来の約束をして、この場をそそくさと去る。

バラの庭園か。あまりいい思い出がないし、他の人も多数集まる場所だから嫌だけど。仕方ないか。用事を終えたら早々と帰宅しよう。


◇◆◇◆◇◆


放課後早々にバラの庭園へとやって来ると、すでに到着していた。

彼の金髪はなびいており、その姿は様になっている。


「お待たせしました、殿下」

「大丈夫。僕もついさっききたばかりだよ」


誰もが言いそうな言葉だ。

なんて考えていると、目の前に手を差し出される。差し出された手と彼の顔を見比べる。まさか…こんなところでエスコートされるとは思わなかった。

躊躇うことなく彼の手に自身の手を重ねる…と、ゆっくりとした歩幅で歩き始めた。

ちらりと横を見ると、黄色のバラが目に入った。このバラを見て、ヒルデがルートヴィヒに何か言っていたな。

ふと過去の思い出を振り返っていると、ルートヴィヒが不意に足を止めた。


「メルクーア、この前の建国祭は大丈夫だった?」


何が、大丈夫だった?のだろうか。大丈夫か大丈夫じゃないかと言えば、大丈夫ではない。

変なのに絡まれるわ、貴女からの贈り物は去年と同じものだし。

鬱憤しか溜まっていない。


「大丈夫だと思いますよ」


質問に対しての返答ではないと思うが、彼に対してはこれくらいの返答でいいだろう。

去年までいい感情を持っていたがはずだが、今はそんな気持ちすらない。

こんな気持ちになるなんて思わなかった。

メルクーアに憑依して、小説と同じ結末にならないように、私なりに努力した。だけど、どうしてもヒロインが登場するとうまくいかなかった。

だったらもう…取り繕うとは思えない。


「そうか、だったら良かった」


ルートヴィヒの発言でここ周囲に沈黙が流れる。

あぁ…静かなのは好きだけど、共に居たくない人といるのは苦痛だ。早くこの時間が過ぎればいいのに。


「そういえば、()()()が言っていたよ」


私をかき乱す人物の名前が聞こえた。

それに肩を動かすも、冷静を装う。

いつの間に呼び捨てになっているんだろう。そこまで仲良くなる程、一緒にいる時間が長いのだろうか。


「何をでしょう」

「メルクーアにきつく言われたと」


今のは聞き間違いか何か?

私は別にきつく言ったつもりはないし。記憶が正しければ、建国祭の話を振られた時のことを言っているのだろうか。

別に普通の対応をしていたし、きつく言っていたのはどちらかといえばヒルデの方。

私を侮辱していたのに、どう解釈したらこちら側が悪いみたいになるの?


「私がきつく言うとでも?そんな人だとお思いですか?」


静かに怒りながら告げると、彼は首を横に振る。


「思っていないよ。だからこそ、聞いているんだ」

「思っていないなら。そんなこと聞かないでください。そうやって聞いて来るのは、私のことを信じてくださってないってことでしょ?」


段々と声が大きくなってしまう。


「十年以上を共にした人と、出会って数ヶ月の人とどちらを信じているのですかっっ」


自分が思っている以上に、感情のコントロールが出来ない。

信じてくれないことに怒って目に涙を浮かべながら叫ぶ。こんな自分に嫌気がさす。


「信じている。だから、落ち着いて」


怒る私とは反対に、彼は冷静に諌めるように話す。そして私を包み込んで、子供のようにあやす彼の中で、私はドンドンと胸板を叩いて抵抗する。

近づいて欲しくない。信じているならそんなことを言わないでよっ。


「だったらどうして聞くのっっ。私の方が…傷つけられているの」


嫌な出来事を思い起こされ、勝手に話して過呼吸になったのに。

それに…その原因はルートヴィヒ貴方にあるのよ。


「建国祭のこと、彼女に聞きました?私が傷モノだって聞かれて、何も言えなかったんですよね?」


彼の腕の中にいながら睨むように質問する。

すると、驚いたのか腕に力が入る。

正解なのか。


「カマをかけられました?せめて…表情には出さないで欲しかったです」


彼からの発言がないまま、こちらは話を続ける。


「彼女は…私のことをどうしてでも蹴落としたいんですよ」


最後の方は声が小さくなる。


「ヒルデはそんなことをするような子じゃないよ」


ようやく落ち着いたところで、彼がまた火に油を注ぐような発言をする。

そんなことをするような子じゃない?

いくらルートヴィヒの前で猫を被っているとはいえ、彼女の肩を持つなんて馬鹿馬鹿しい。


「彼女はメルクーアのことを心配していたんだよ。だから、建国祭のことを聞いたんだ」


ヒルデが私のことを心配?

彼女は私のことを”さん”をつけて呼ぶし、どこか馬鹿にしている。

それのどこが心配しているんだ。


「……そうなんですね。ヒルデ様は小さいことで怒る女とは違って、お優しいのですね」


私の中でプツンと何かが切れた。

彼に何も言っても無駄だと言うことを理解した。自暴自棄になりながら告げると、驚いて緩んだ彼の腕の中から逃げる。


「本当に…お優しいんだわ…ヒルデ様は」


視線は彼を見ているはずなのに、瞳にはルートヴィヒが映っていない。

あぁ…本当に信じたくない。彼は私が何を言っても、ヒルデの肩を持つのだろう。

もう…嫌だ…疲れた。


「そうだけど…メルクーアも優しいよ」

「あは、ありがとう…ございます」


今更こんな言葉を求めていない。


「そうだ…ルートヴィヒ様」

「どうかした?」

「私、側妃や愛人は反対ですので」


それだけ短く告げると、彼にお辞儀をして去る。

この場に止まれる自信がない。今すぐ離れないと、狂ってしまいそうだ。

後ろから追いかけて来るが、なんとか死に物狂いで逃げ切ると馬車に乗り込む。


…何…あの苦痛の時間。

ヒルデが来るまで普通に生活出来ていた。だけど、その前から彼との関係が歪になっていって、ヒルデの登場からより狂い始めた。

…もう無理なのかもね。

一度崩れた関係は、もう修復が不可能なのだ。

そうね…これからは仮面をかぶって生活していくべきだわ。

ここまで読んでくださりありがとうございます❁¨̮


いつの間にか、ブクマが増えており!大感謝です!!

こんなに見てくださってる方がいるのかなぁ…と思って嬉しい気持ちでいっぱいです(´˘`*)


ここから佳境に入りますので、ぜひ気長にお待ちください!

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