珍しい面子でのお昼。
先日の王家主催のパーティーでの謝罪の手紙が、ルートヴィヒから送られてきたが、開封することなく引出しに仕舞う。
きっと一生開封することはないだろう。嫌な思いを抱えながら登校する。
「おはよう、メルクーア嬢。先日は姉がお世話になったみたいで…手紙でも楽しさが伝わってきたよ」
教室について早々、二学年の廊下にいるエルヴィンに声をかけられる。
まずは荷物を置かせてくれ…。
「おはようございます、エルヴィン様。フロレンスお義姉様が楽しまれたのなら、何よりです」
差し障りのない返答をすると、エルヴィンは楽しそうに笑った。
「私も久しぶりにメルとお茶をしたいわ」
彼の隣にいたツェツィーリアが羨ましそうに言うものだから、彼女を優しく抱きしめる。
なんて可愛らしいのだろう。
二人で登校していたから、彼が二学年の廊下にいたのか。
「今度、ツェツィの体調が全快したお祝いでもしましょう?」
「本当?嬉しいわ」
愛らしい表情を浮かべるツェツィーリアを愛でていると、それ以上に愛おしそうな瞳を浮かべているエルヴィンが彼女の頭を撫でている。
朝から胸焼けしそうだ。
もうすぐ授業が始まるから後でね。とツェツィーリアに耳打ちすると、彼女は後でね。と可愛らしく返事をした。
二人が順調に愛を育んでいるようで安心した。
◇◆◇◆◇◆
「お昼どうする?ハインツェ嬢は、エルヴィン様と一緒に食べるって言ってたけど」
お昼を知らせる鐘が数秒後。
隣に座っていたジークフリートが声をかけてくる。
彼の言う通り、先ほどツェツィーリアはエルヴィンとお昼を共にすると言って早々と出て行ってしまった。
一考した後に、二人だが食事を取ることにした。
着々と育まれている二人の邪魔は出来ない。
二人でガーデンへとやってくると、つい先日も見た人物が楽しそうにこちらへと向かってくる。
「メルクーア嬢、俺もお昼一緒にしてもいい?」
全身からお花が飛んでいる…ように見えるのは気のせいだろうか。
ジークフリートの方を見ると、お前が好きなようにやれと顎で合図される。
私はそれにムッとすると、彼と一緒に昼食を取ることを了承した。
謎の三人で食事を囲んで会話を始める。
「ギルベルト様、今日はご機嫌がいいのね」
「ん?あぁ…今日はルートヴィヒが外交でいないからね」
「そんなお話も出ていましたね」
サンドイッチを口にしながら、横から突き刺さる視線に目を向ける。
「ジークフリート殿は、どうして?って表情をしていますね」
「え?まぁ…急に距離が縮まっていると驚きますよね」
彼はギルベルトを睨みながら淡々と答える。
睨まれた彼は首を竦めて楽しそうに笑っている。
「そう敵対心を出さないでよ。先日のパーティでメルクーア嬢を助けるって約束したんだ」
ギルベルトの言葉を聞いて、こちらに目を向けるので小さく首を動かして頷く。
するとようやく警戒心を解いたジークフリートは、眉間のシワと緩めた。
「本当よ?彼、私のこと助けてくれたの。頼らせてねって言ったの」
今度は苺を食べながらジークフリートに説明する。
彼は渋々だが納得したようだ。
「どうせなら、仲良くしませんか?」
「仲良く…」
「はい。同士なので、いいんじゃないですか?」
ぐんぐんと距離を縮めるギルベルトに、ジークフリートはたじろいでいる。
「同い年の友人がいないんだし、ちょうどいいんじゃない?ジークとギルベルト様が仲良くするのは、いいことだと思うのだけど」
紅茶が入ったカップを眺めて、こちらからも提案してみる。
「誰が友人がいないだって?僕にだって…」
「騎士団の方は数に入れないでよ?」
横目で彼を見ると言葉に詰まっている。騎士団の人を数に入れようとしていたようだ。
図星だったようで、こちらの顔を見ようとしない。そんな彼を見てクスクス笑っていると、耳が赤くなっている。
ギルベルトはこちらを見て私以上に楽しんでいる。
「ってことみたいなので、俺が友人になりますよ」
「……じゃあ…友人でお願いします」
ペコリと他人行儀に挨拶を済ませると、ギルベルトは急激に物理的にジークフリートに距離を縮めていく。
「ジークフリートは、普段何をしてるの?」
「……剣の訓練…です」
躊躇って敬語を使うと、ギルベルトは使わなくていいよ。と念押しする。
先日の私のようで、デジャヴを見ているようだ。
「ギルベルト様…ギルベルトは何を?」
様をつけようとすると、彼に睨まれている。
呼び捨てにすると、満足そうに微笑んでいる。表情で分かりやすい。
「俺は…何してるんだろ?あ。ルートヴィヒの補佐かな?」
なんて普通のなんともない会話をしていると、昼の終了を知らせる鐘が鳴り響く。
「残念。今日はお終いだ」
「短い時間だったけど、楽しかったわ」
「また参加させてね」
ぜひ。と短く返事をしてギルベルトと別れようとする。
男性二人はコソコソと何か話しているようだ。なんだかんだで二人が友人になってくれて良かった。
味方は多ければ多いほどいい。
ギルベルトはヒルデのことを好いていないから安心できるのだ。




