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久しぶりのパーティーです。(1)

結局ルートヴィヒと一度も会話をすることなく、王家が主催する四ヶ月に一度のパーティーの日がやってきた。

普段はルートヴィヒからドレスのプレゼントがあるのだが、今回は何も贈られてこなかった。

現状から贈り物に期待はしていなかったが、いざやられると固まってしまう。両親は何も届かなかったことに、不信がっているようだった。

私は以前大量に贈られ、残しておいた数着のドレスの中から、一番大人しい物を選ぶ。そして、ベルが選んだ装飾品を身につけて馬車に乗り込んだ。


「…どうせいないんでしょうね」


自重気味に溢れた言葉は、空気と共に消え去る。

扉が開くと、金色の刺繍が彩られた白い衣装を身に纏ったルートヴィヒが手を差し出している。

…いた。

彼の姿を見て思わず息を呑んでしまった。

いるのは普通か…彼は私の婚約者なのだから。


「こんばんは、メルクーア」

「こんばんは、ルートヴィヒ様」


彼は普段通りの笑顔と柔らかな声で私の名前を呼ぶ。

それに眉が少しだけ上がるが、冷静を装い冷ややかな声で彼の名前を呼ぶ。

差し出された手に自身の手を重ねると、ルートヴィヒは優しく握る。

握られた瞬間、背中からゾワゾワとした感覚が湧き上がった。

一息吐いて落ち着かせると、いつの間にか入り口に到着していた。

中にはすでに貴族たちが到着しており、見慣れた人物がこちらの様子を伺っている。その中から痛いぐらいの視線を感じた。


ヒルデか。


髪と同じ桃色のフリルがあしらわれたドレスを身に纏った彼女の目は、私への憎しみがこもっていた。

それを横目で流して、各々に挨拶を済ませる。

陛下の挨拶が終了としたと同時に、ホールには音楽が鳴り響く。

悲しいかな、音楽が流れると自然とルートヴィヒと向かい合うような体になっている。

彼から差し出された手に自分の手を添えると、音楽に合わせて踊り始める。


こんなにも楽しくないダンスは生まれて初めてだ。

王女殿下の誕生日に、夜空の下で踊ったダンスはあんなにも心が踊っていたのに。

音楽自体はそう長くないはずだが、相手が相手だからか…長く感じてしまう。

ふと顔を上げると、珍しくオールバックにしているルートヴィヒと目が合う。

相変わらず顔が整っているな。

顔の良さに見惚れていると、横から痛いほどに視線が突き刺さる。

気づかれないようにヒルデを見てみると、彼女は例の義理の兄と踊っているのが目に入った。

憎くて憎くて仕方ない…という目に、思わず笑みが溢れる。

これ優越感とやらなのだろう。


「メルクーアどうかしたの?」


頭上から心配するような声がかかる。

その声に反応するかのように、首を動かすと紫色の瞳とぶつかった。


「いえ、特に」

「笑っていたから、何か楽しいことでもあったのかなって」

「あぁ…そうですね。ルーイが私と一緒にいてくださるのが…嬉しいなと思って」


そう言えば、彼は一瞬見開いたかと思うと引きつった表情を浮かべる。

その表情を見て内心ほくそ笑んでしまった。


「……僕も、メルクーアと一緒にこうしてダンスを踊れるのは嬉しいよ」

「本当ですか?学園では長い間会う機会を得ることが出来なかったので…私だけの片思いかと思っていました」


最大限の笑顔を浮かべると、ルートヴィヒはバツが悪いのか顔をそらした。

自分が悪いことを理解しているのだろう。


「そんなことはないよ」

「それは良かったです。片思いだったらどうしようかと」


ダンスを終えたタイミングで、胸を撫で下ろす仕草をしてみる。

彼はというと、乾いた笑いで誤魔化しているようだ。

義理の兄とダンスを終えたヒルデは、淑女らしからぬ速さでこちらへと歩いてくる。

その反対側からは、王女殿下がルートヴィヒにダンスを申し込んでいる。

聡い彼女はヒルデの思惑に気がついたのだろう。

妹からの誘いを断ることが出来ず、彼は二回目のダンスを始めた。ヒルデはというと、追いつかれた義兄に連れていかれている。

私は一連の流れを目で追いかけると、近くにあったグラスを手に取って窓際へとやってくる。

乾いた喉を水で潤してようやく生き返ったような気分だ。


「こんばんは、碧い瞳の素敵なご令嬢」


正面から聞き慣れた声が聞こえてくる。

黄金の瞳とかち合うと、キザな台詞に思わず声に出して笑ってしまう。


「こんばんは、黄金の瞳の素敵なお方」


同じように返すと、目の前にやってきた彼も小さく声に出して笑う。


「ギルベルト様は、あちらに行かなくてもよろしいのですか?」


人一人分空けると彼は私の横に並んだ。


「うん。今日はなんだか気分じゃないので」


女性と共にいることが多い彼からすれば、一人でいることは珍しい。

だからか、令嬢たちからとてつもない視線を受けている。


「そうなのですね。まさか…とは思いますが、私のためですか?」


手にしたグラスを回しながら訊ねる。

この間からギルベルトは私を気にかけてくれている。本当にありがたい。

ツェツィーリアは体調不良、ジークフリートは王宮の夜会には参加しないため、一人で寂しかったのだ。

知り合いが一人でもいると助かる。それを知ってかこちらにきてくれたのだろう。


「いや、俺がメルクーア嬢と話をしたいからだよ」


そういうのなら優しい嘘を受け取ろう。


「では…少しお話をしませんか?なかなかお話しする機会もありませんし」


ちょうど二曲目が終了したようで、ヒルデがルートヴィヒにダンスを申し込んでいる。

ギルベルトもそれに気がついたのか、私を隠すようにして腕を差し出す。


「そうですね。確かに…そんな機会ないですからね。夜風に当たっても平気ですか?」

「えぇ…少し当たりたいと思っていたので」


私は彼の腕に手を添えエスコートを受けた。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


早く、早くジークフリートを出したい!!と思いながら進めております笑

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