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お姉様方に囲まれて癒されましょう。(3)

「切り替えて、エレオノーラの最近の話を聞きましょう」


義姉から話を振られ、声が裏返るエレオノーラ。


「私もエレオノーラ様のお話、聞きたかったです。ぜひ、聞かせてください」


追い討ちをかけるように訊ねると、彼女は両手で顔を覆ってしまう。


「私の話なんか、聞いても面白くないですよ」


面白いか、面白くないかは…聞いたこちらで判断させていただきたい。


「貴女、仕事仕事でこういうお茶会には参加しないでしょ?たまにはこうして私やメルとお話をして欲しいのよ」


わざとらしく涙を見せる義姉は名女優だ。

それに罪悪感や心当たりがあるのか、彼女は数回口を動かしてからため息をつく。


「最近の話ではないですし…ここだけのお話になりますが。実は私の初恋はハーゲン様のお父上である、ジークムント様なのです」


初めて聞く話に、口にしようとしたクッキーを落としてしまう。隣にいる義姉は聞いたことのある話なのか、顔色一つ変えない。


「幼い頃からの憧れであるジークムント様は、それはもう…かっこいいの一言では言い表せない程です」


恋する乙女のような瞳で、クラウスハール候を語っているが聞きたいのは、その人物ではない。私が一番気になっているのは、その息子であるハーゲンとの関係だ。


「それと…ハーゲン様もこのことをご存知です。親戚であり、幼なじみでもある彼とはよく一緒に遊んだ仲ですので。ところで、クラウスハール家は、血縁者と婚約するのはご存知ですか?」


彼女の問いに義姉は頷き、私は首を横に振る。

そういえば、クラウスハール候夫人は従兄弟だったような気がする。


「実は…ハーゲン様と私には、婚約の話が出ていたのです」


これには義姉も目を見開いて驚いている。

刺入にも話していない秘密だったようだ。


「私の両親も承諾し、いざ婚約をしようとした瞬間…クラウスハールの遠縁のご令嬢が声を上げたのです」


ハーゲンの元婚約者は、以前話したように傲慢な人。

男爵家の愛娘で、両親に甘やかされて育ち、欲しいものは何でも手に入れてきた。ハーゲンも言えば手に入れることが出来ると思っていたらしい。

だけど彼は断った。それに逆上した彼女は、近くにあった刃物で自身を傷つけたらしい。傷モノになった彼女と彼女の両親は、ソレでクラウスハール家を脅し婚約者の座へと収まることに成功したんだ。

と彼女は語る。


「私の婚約の話は全て白紙に戻されました。そこからハーゲン様は私を変に気を遣うようになりまして…。少なからず、私に後ろめたさもあったのでしょう。彼を支えられるようにと、北の守護に入団したのもその辺りです。武人であるクラウスハール家の血が流れていて、良かったと…思いました」


彼女が騎士団に入団した経緯を聞いて驚いた。

元々入団が決まっていたようではないようだ。


「実力が実って、本当に良かったです。婚約の話が出ていた時から、彼の傍で陰ながら支えようと決めていたので。最初とは別の視点にはなってしまいましたが、ハーゲン様を支えられるようになりました」


胸の前で手を置いて話すエレオノーラは、ハーゲンのことを誰よりも想っているんだろう。表情が侯の話をしている時とはまた違ってた表情をしている。

過去の話をきっかけに、お互い変に距離を置いてしまっているのだ。


「貴女…大切なことどうして言わないのよ。それに、ハーゲン様とこのままでいいの?彼…というか、クラウスハール家は、エレオノーラとそうにか引っ付けようとしているわよ?」


義姉は机に肘をついて夫人らしからぬ格好をする。彼女の目はお酒を飲んだかのように座っている。


「まだ話していないことがあるの。元婚約者は、ハーゲン様に相手にされなくて…別の男性と結婚しました。私にこの傷を残してです」


エレオノーラは覚悟を決め一息つくと、立ち上がりドレスの裾をまくる。

彼女の大腿部には、刃物で傷つけられていた。義姉と私は痛々しい傷に息をのんでしまう。


「ハーゲン様が私に良くして下さるのは、恐らくですがこの傷があるからだと思うのです」


裾を下ろし腰を下ろした彼女の瞳はどこか寂しそうだ。


「その傷のことは初めて知ったわ。私はハーゲン様ではないからわからないけど、傷があるから良くしているのではないと思うの」


二人にとっての障壁は、元婚約者なのだろう。それに加えあの大腿部にある傷も。


「そうだと嬉しいわ」

「だから、本音で話してみるのはいかが?そろそろケリをつけてみるべきだと思うの。貴女達が今以上の関係になるのを願っているわ」


義姉の言葉に賛同するように、首を振って頷く。

今の話を聞いている感じ、エレオノーラもハーゲンのことを想っていそうだ。だから、二人には幸せになっていただきたい。


「……お二人がそういうなら…そろそろ覚悟を決めますね」


そう言った彼女の表情はスッキリとしていた。


◇◆◇◆◇◆


深い話だけでなく、義姉達の学園時代のより詳しい思い出を聞いていると、日が沈んできた。

そろそろエレオノーラは帰宅しなければならない。

席を立つタイミングで、遠くから茶髪の男性が優雅にやって来た。


「ハーゲン様お久しぶりですね。女の花園へどうして来られたのですか?」


義姉は茶髪の男性に気がつくと、誰よりも先に立ち上がると彼と相対する。エレオノーラは、”ハーゲン様”という単語を耳にすると急いで立ち上がった。


「あぁ、久しぶりだねフロレンス嬢。ここにエレオノーラが来ているから迎えに来たんだ」

「貴方だけですよ、私のことを令嬢扱いするのは」


大きくため息をつくと、義姉は少し離れてハーゲンを手招きする。

それに抵抗することなく、彼はついて行き二人でヒソヒソと話し始める。


「メルクーア様」


その二人を見ながら、エレオノーラが私にこっそりと耳打ちをする。


「先程、フロレンスが言っていましたが、本音で話すのは大切です。あとは…自分の意思を持って下さいね」

「エレオノーラ様…」


彼女の言葉をかみしめるようにゆっくり頷く。

自分の意思…。


「わかりました。ありがとうございます」


話終えたと同時に、義姉達も終えたようだ。


「本日はありがとうございます。また、誘ってくださると幸いです」

「こちらこそ忙しいのに割いてくださり、ありがとうございます。今度はハーゲン様とご一緒に」


いたずらっ子のように微笑むと、ハーゲンとエレオノーラは目を合わせて数回瞬きをする。

その後、ハーゲンは声を出して笑い、エレオノーラは頬を赤らめる。


「では、失礼します」


彼は彼女をエスコートすると馬車へ乗り込む。

その姿を義姉と見送ると、隣から声がかかる。


「今日はありがとう。久しぶりにエレオノーラと話せて楽しかったわ」

「私もお義姉様とエレオノーラ様とお話で楽しかったです」


笑顔で彼女を見つめると、義姉は優しく私の頬を撫でる。

その表情は慈愛に満ちている。


「また誘ってね」


頷くと彼女は部屋へと戻る。

それを見送ると、ベルと共に片付けを行う。

今日は濃い一日だった。ハーゲンとエレオノーラがいい方向に向かうのを楽しみにしておこう。

これでひと段落します。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


ちょうどこの投稿で50話ということで、執筆についてお話しさせて下さい。

まず、投稿が遅れている理由として、まず紙に小説の内容を記載します。そして、ある程度記載し終わった後にパソコンへ打ち込みます。

ですので、時間がかかってしまうのです。

この方法を変えることはありませんので、ご了承下さい!!


ぜひ、これからも応援してくださると嬉しいです。

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