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夜空の下の円舞曲。(1)

ルートヴィヒと仲直りをした後、私は父に全てを報告した。複雑そうな表情を浮かべていたが、私がそれでいいのならいいよと言ってくれた。兄も義姉も二人とも呆れた表情をしていたが、それは私にではなくルートヴィヒに対してなのだろう。

休暇の間は学園で出された課題をこなしたり、おやすみしていた王太子妃教育に励んだり、恋愛小説を読んだりと…それなりに忙しい日々を過ごしてきた。以前から続けていたルートヴィヒとのピクニックも、お互いに時間がある時に開催してきた。


「お嬢様、ルートヴィヒ王太子殿下からお手紙が届きました」


自室で小説を読んでいると、ベルがトレーに手紙を置いてやってきた。それを丁寧にナイフでカットしてから目を通す。

”月のように美しいメルクーア。一週間後、我が妹の誕生日パーティが王宮で開催されます。ぜひ、今回も僕のパートナーとして参加してください。返事を楽しみに待っています”

少しだけ癖のある字で書かれている。私はその手紙を見て微笑んで返事を書き始めた。

手紙を送った数日後、王宮から大量の贈り物が届けられた。

今まで贈られてきた中で一番の量な気がする。


「お嬢様…この量どうされますか?」


ベルがこちらの顔色を伺いながら訊ねてくる。部屋に広げられた贈り物に、私は絶望したように手で顔を覆う。

……すごい量だわ。


「とりあえず、中身を確認しましょう」


私の合図でベルを含むメイド達が中身を丁寧に取り出していく。きちりと並べられたプレゼントを見て、改めて手で顔を覆った。


「ドレスの量が…すごいわね」


十数着のドレスに、各々のドレスに合ったヒールや宝石に…若干引いてしまう。

ベルがおずおずと私に手紙を差し出した。

”参加してくださるとのこと、ありがとうございます。僕からのささやかなプレゼントとはなります。メルクーアのことを想いながら選びました。ぜひ、お気に入りのドレスで参加をお願いします”

ささやかが、全くささやかじゃないのよ。

前回の事件のこともあるのだろうが、それにしては多すぎる。今回の主役は誕生日を迎える王女様ではないか。これでは彼女に申し訳ない気持ちになる。

私は並べられたドレスをじっくりと見渡し吟味していく。そして、その中で何度も目にしたドレスにしようと決めた。


「ベル、このドレスを着て行くことにするわ。装飾品とかは貴女のセンスに任せるわね」


指で差したドレス以外はとりあえず元どおり箱に閉まってもらうようにする。

後は…王女様の生誕祭まで待つだけだ。


◇◆◇◆◇◆


手紙をもらってから一週間後。

私はルートヴィヒから贈られた中で気に入ったドレスを纏い王宮へ向かった。

今回選んだドレスは、背中がバックリと開いたものだ。素肌が見えている部分に夜風が当たると、ほんのり冷えるのがデメリットだが、自分の顔にはよく似合っていると思う。流石…ルートヴィヒといったところか。

馬車の外からノック音が聞こえると、外から夜空に晒された金色の髪が見えた。


「こんばんは、月のように美しい我がレディー。僕の手をどうぞ」

「こんばんは、ルートヴィヒ様。月の美しさには敵いませんわ」


エスコートするルートヴィヒに、クスリと笑うと差し出された腕を取る。

二人で並んで歩いていると、ホールの前へと到着する。扉の前に立っている騎士がお辞儀をすると口を開いた。


「ルートヴィヒ・ノイエンドルフ王太子殿下、婚約者のメルクーア・シュテルンベルガー様の入場です」


その声と同時に扉が開くと、先入りしていた貴族達が一斉にこちらと向く。

あーこの感じ久しぶり。

全員の視線を受けてそう思った。隣にいるルートヴィヒの腕を添える手を少しだけ強めて背筋を伸ばす。

堂々とすれば誰も何も言ってこないだろう。

国王と王妃の前に立って軽いお辞儀を行うと、二人の横にルートヴィヒと共に並んだ。

後は彼の妹である王女殿下が婚約者と共に入場してくるのを待つだけだ。

足元をぼんやり見つめていると、会場に拍手が鳴り響く。急いで顔をあげると、ルートヴィヒにそっくりな顔の王女殿下が、ギルベルトにそっくりな顔の婚約者にエスコートをされながら入場してきた。私もタイミングを合わせて拍手をしていると、王女は可愛らしいカーテシーをしているのが目に入る。

国王の祝言、王女の謝辞が終わると、貴族達が王家への挨拶を始める。私はルートヴィヒと共に彼らの挨拶を聞きながら、好奇心旺盛の貴族達の視線を流して行く。

うん…。ここまで噂が流れるものなのか。

ルートヴィヒは彼らの視線の意味に気がついていたのか、私より少し前に立つと貴族達から隠してくれる。

言葉の通り護ってくれるようだ。

一通り挨拶が終わり、王女殿下とギルベルトの弟がファーストダンスを始める。それが終わると、今度は参加者のターンになる。


「メルクーア、ぜひお願いします」


ルートヴィヒのスマートなエスコートを受けると、音楽に合わせて踊り始める。


「そのドレスにしたんだね。似合ってるよ」

「この度は贈り物ありがとうございます。けど…一着だけで十分ですよ」


小さい子供を諌めるように彼を叱ると、声を我慢するように笑う。


「君ならそう言うと思った」

「でしたらなぜ」

「僕のメルクーアの気持ちと…反省の表れだよ」


本当はもう少し贈る予定だったのだけど、父に止められたんだ。と笑いながら言うのを聞いて、私は思わず絶句した。

国王が止めなかったら、贈り物がもっとあったというか…。

止めてくれた国王に感謝だ。


「そんなことしなくても…良いのですよ」

「だけど…僕が納得しなくて」

「私が物で満足するような人じゃないじゃないですか」


頬を膨らませていると、彼は腰をぐっと寄せつけた。


「それはわかってるよ」


近い近い近い…良い匂いがする…。

今の私はルートヴィヒとの距離にパニック寸前だ。


「次から…気をつけてください」

「メルクーアに嫌われたくないからね。気をつけるよ」


会話が終わると同時に一曲目が終わる。

その後、私は近くにいた人と一緒に踊ると、二曲目でホールから離れる。そのまま誰もいない壁際へとやってくると、周りに気づかれないようにもたれた。

今日の主役である王女殿下は楽しそうに踊っている。今は兄であるルートヴィヒと息の合ったダンスで周りを魅了している。それを見終えた後は、周囲を見渡す。

ツェツィーリアはエルヴィンと来ているようだ。こういう場面で、令嬢に片っ端から声をかけているエルヴィンだが、今日は片時もツェツィーリアから離れる気配はなさそう。彼女に相当本気らしい。

私は近くに見慣れた色の服に身に纏った人物を目にする。そちらへと急いで向かっていると、彼の前に立つ前に、彼がこちらの行く道を塞いだ。

お久しぶりです。私生活と仕事が忙しくなかなか筆を取れなかったので…ようやく更新できました!!

このまま続きます。

長くなってしまったので、分割にてお送りします。

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