表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/86

笑顔が戻ったようです。

前回のジークフリート視点です。

夏季休暇の五日ほど前、ツェツィーリアが僕の前にやって来た。


「今度、私の領地に遊びに来ない?」

「…は?ハーゲンと間違えてないか?」


彼女からの提案に目を見開いて驚く。僕のその反応に彼女は眉を寄せた。


「間違えるわけないでしょ?じゃあまた追って連絡するから」


そう言い残したツェツィーリアの後ろ姿を見送って、呆れたようにため息をついた。

その後夏季休暇の当日、朝早くからハインツェ家から馬車が到着する。それに乗り込み、クラウスハール家より西に移動すると、彼女の家の領地へと到着する。そこに居たのは、ハインツェ邸の家主であるツェツィーリアと…何故かいるエルヴィン。ツェツィーリアとは全く関係ない彼がいることに一瞬詰まる。


「おはよう。いらっしゃいませ、クラウスハール様」

「ご招待ありがとうございます、ハインツェ嬢。えっと…どうして…」


ツェツィーリアから視線を動かした後、横に立っているエルヴィンへと目線を動かす。


「お久しぶり、ジークフリート。俺も来ちゃった」


令嬢達に声をかける時と同じように、甘い声で挨拶をしてくる彼に言葉が出ない。

ツェツィーリアとエルヴィンは、特に関わりがある訳ではないのに、ここに来るなんて…図々しいにも程があるだろ。


「ハインツェ嬢と知り合いだったんですか?」

「いや?そこまで知ってるわけじゃないよ。君たちの会話が聞こえたから、お願いして来たんだ」

「そういうことです」


二人してニコニコ笑っているのが怖い。まぁ…彼女が良いというのなら良いのだろう。

何だか不思議なメンバーだな…と思っていると、到着した数十分後にもう一台馬車が到着する。そこから降りて来たのは、綺麗に身を包んだメルクーアだった。

成程…メルクーアがいるのなら、エルヴィンとは無関係ではなくなる。ツェツィーリアも声をかけられて、一瞬で考えたんだろうな。

僕は思わず不満げな表情を浮かべてしまう。彼女は…メルクーアとエルヴィンの仲の悪さを、あまり気にしないのだろうか。色々考え込んでいる間に、エルヴィンがスマートにメルクーアをエスコートする。後ろを歩く三人の会話を盗み聞していると、エルヴィンがツェツィーリアを狙うだ何だと言っている。

その後、ツェツィーリアが好きだというボートを乗ることになった。折角だからという事で、くじでペアを決めることとなった。くじの結果、僕はツェツィーリアと組むことになったのだ。


「…どうして…貴方と…」

「それはこっちのセリフだけど」


不機嫌丸出しの彼女に、こちらも自然と同じ不機嫌になる。


「ねぇ…ルートヴィヒは、どうしてメルクーアを避け続けるのかしら」


彼女はエルヴィンとボートに乗っているメルクーアを見つめる。


「、仕えていたはずの騎士達がお金で買われていて、自分がメルクーアから離れた途端、そいつらが自分の婚約者を連れ去り監禁した。男が女を監禁すれば、後はわかるだろ?」


一つずつ説明していけば、目の前のツェツィーリアが顎に手を当てて考え込む。


「それに、お前もメルクーアにそのことを確かめただろ?」

「…え?どうしてそれを」


目を見開いて声が震えている。本当に聞いたんだろうな。メルクーア本人は、聞かれたことを何も言わなかったけど。猪突猛進になる時があるから、言ったのだろうとカマをかけたつもりだが、本当だったようだ。


「カマをかけたつもり。お前なら聞くだろうなって」

「だって…本人の口から聞きたくて」

「メルクーアが傷ついたとしてもか」


僕がはっきりと伝えると彼女は顔を逸らして項垂れる。頭の上には陰湿なオーラが漂っている。それはどんどんと大きくなり、こちらまでやってくる。

…鬱陶しい。


「本当にメルには申し訳ないことをしたと思っているわ。あの二人が…早く仲直りしてほしい…」


ツェツィーリアは、メルクーアの方を見ながらボソリと呟く。

メルクーアの悲しい顔を見るのは、僕だってごめんだ。


◇◆◇◆◇◆


湯浴みを終えた後、エルヴィンと一緒にいると疲れる気がしてこっそりと外へと出る。そこには、レースの羽織を羽織ったメルクーアが居た。

彼女からなぜここにいるのか訊ねられると、”眠れなかったから”と嘘をつく。


「気分転換になった?」


メルクーアの顔を見ることが出来ずに、前を見て問いかける。数秒沈黙が流れた後、心配そうに顔を覗くと焦点があった彼女と目が合う。


「気分転換になったわ」


彼女の返答の後、夕食時に盛り上がった話になる。

ツェツィーリアと僕の仲を疑われたのは二度目だった。それに少しだけムッとすると、メルクーアは気づいて謝る。

いや、別に良いけど。疑われるようなことをしたってことだろう。

エルヴィンはツェツィーリアを狙っていることを、メルクーアは必死に止めていた。彼女の顔は彼の好みらしいが、きっと一筋縄ではいかないだろう。それを理解していない彼ではないだろうから…何かが狙いなのだろうか。


「本当にハインツェ嬢のことが好きなんだね」

「当たり前じゃない。大好きよツェツィのこと」


僕が言った一言に、彼女は声を大にして答える。

”そうか”と小さい声で答えてから、もう一つ付け加える。


「じゃあ…僕のことは?」


自分で言っておいて恥ずかしくなってしまう。彼女は一瞬考え込んでから口を開く。


「好きよ?当たり前でしょ」


当たり前か。

目を見開いて驚いてから、自然と笑みを浮かべる。彼女はそんな僕を見て柔らかい表情で笑う。ようやく自然な笑顔を見ることが出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ