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気分転換です。(1)

ギルベルトが本当に伝えたかはわからない。ルートヴィヒは変わらず私を避けるからだ。

ここまで来ればもう何も言えない。周囲は噂をなぜか信じているし、その噂のせいで二人は不仲になったと広まっている。不仲説が囁かされているせいで、以前の候補であった令嬢達の親が続々と手を上げているらしい。

早くルーマンの罪を明るみにしろと、私たちの家族は王に怒っているらしい。

ソレを知っているが、何も言わずに静かに学園生活を送る。

私にとって噂も怖いが、ヒロインが出てくるのが一番怖いのだ。

そういうことを考えていて、最近眠れない日が続いている。化粧で隠しているが、目の下にクマが出来てしまっているのが証拠。私のクマを見つけたのか、ツェツィーリアが明るく声をかける。


「ねぇメル。もうすぐ夏季休暇が始まるでしょ?」

「えぇ、もうそんな時期なのね」

「もし良かったらなんだけどね、ハインツェ家の領地へ行かない?」


目を輝かせながら誘ってくれるツェツィーリアは可愛い。

彼女の提案はちょうどいいのかもしれない。王都から離れれば離れるほど、噂から遠ざかり、ゆっくり出来るかもしれない。


「すごく素敵なお誘いだわ。両親にお願いしてみるわね」

「私からも後押しさせて欲しいわ」


ツェツィーリアは私が行くことが決まっているかのように話を進める。

ハインツェ家の領地には大きな湖があり、そこでボートを漕ぐのだそう。彼女はボートが得意らしく、楽しみにしておいてねと笑う。

その日の夜、両親にお願いしてみると、快く返事をしてくれた。むしろ、行っておいでと後押ししてくれたのだ。

私はそれをツェツィーリアに伝え、夏季休暇と同時に出発することとなった。それまでの間、苦痛だった学園も何も思わずに生活できた。

楽しみに指折り数えていると、ツェツィーリアの領地へと向かう当日となった。


◇◆◇◆◇◆


ハインツェ家が馬車を出してくれたので、荷物とともに乗り込む。

馬車の小窓から見える景色は、王都の賑やかな街並みから、マイナスイオン溢れる田舎へと徐々に変化していく。小窓を開けると自然特有の匂いが鼻腔を擽る。


「気持ちいい」


ツェツィーリアが自慢するのがわかる気がする。こんな素敵な領地…休むのに最適すぎる。

私は顔に大自然を受けながら、ハインツェ家の別邸へと到着した。

馬車の扉を開けてもらうと、招待してくれた当人であるツェツィーリアと…何故か驚いた表情をしているジークフリートと、彼女と大した関わりがないエルヴィンがいた。

(どうして、エルヴィンがいるのよ…)

ジークフリートに目を向けようとしているのに、どうしてもエルヴィンに目を向けてしまう。

満足そうに微笑んでいる可愛いツェツィーリアと、不満げな表情のジークフリートと、こちらも満足そうに微笑んでいるエルヴィンと、状況を掴めていない私の謎の構図が出来てしまった。

手を出している私に気がついたエルヴィンが、スマートに手を添えてくる。私も手を添えてもらった反射で、馬車から降りると、ツェツィーリアから歓迎を受けたのだった。


「いらっしゃい、メル」

「えぇ…招待ありがとう。ねぇツェツィ」


近づいてくるツェツィーリアに、こっそりと耳打ちをする。そんな彼女はなぁに?と可愛い声で返事をしてくれる。


「私とツェツィだけじゃないの?どうして、ジークとエルヴィン様がいるの?」


エルヴィンは私の傍でエスコートしているから、会話の内容は聞こえている。ニヤニヤとした効果音が私の元に届く。


「クラウスハール様は、メルを護衛するんでしょ?アウヘンミュラー様は…何故かついて来たのよ」

「…エルヴィン様」


確かにジークフリートは私の護衛役だけど…エルヴィンは本当に何をしに来たのよ。


「ん?俺も気分転換だよ」

「ツェツィ…一番連れて来てはいけない人を連れて来たのね」


彼から目を逸らしため息をつくように話す。

エルヴィンはわざとらしく寂しそうな声で反応してくる。

…鬱陶しい。

ツェツィーリアが前を歩いたのを確認すると、私はエルヴィンの腕をぐっと引く。


「…ねぇエルヴィン様。貴方…ツェツィを狙っているとかじゃないでしょうね」

「どうして俺がハインツェ嬢を?」

「貴方の好きそうな見た目だからよ」


そうなのだ。

ツェツィーリアの綺麗な見た目は、美しい見た目の女性にばかり声をかけていたエルヴィンのタイプそのままなのだ。


「流石にメルクーア嬢の親友に手を出したりしないよ。向こうが俺に近づいて来たら話は別だけどね」

「……馬鹿なの?!」


楽しそうに言うので、私は彼の足を思い切り踏み込む。爪先を踏んだからか、肩を揺らして呻き声をあげた。


「ツェツィに変なことしないでよ」

「……し、しないよ」


エルヴィンを睨みながら、ジークフリート達と合流する。ジークフリートは不満げな顔をしていたのに、私を見て一瞬考え込んでから微笑む。

…何このイケメン。

爽やかな笑顔を向けられた私は、高鳴る心臓をぐっと抑える。やばい…破壊力がすごい。


「ジーク貴方も来ていたのね」

「ハインツェ嬢に押されてね。来るつもりは全くなかったんだけど」

「一緒に楽しみましょうね」


ジークフリートは自分の腕を差し出してくれる。

私はエルヴィンに預けていた手を、彼の腕に添える。

ようやく私の休暇が始まったのであった。

ここからは明るい話が続く…予定です!!

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