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連れ去られました。(1)

「……ん…」


一体どれくらい意識を失っていたのだろう。ギシギシと床が悲鳴を上げているのに気がついて現実に戻される。

薄らと開いた目に映るのは、薄暗い小さな部屋。そこには数人の気配。私はギシリと音を立てた。

徐々に覚醒していく中で、しっかりとしていない椅子に縛りつけられて座っているのを理解する。動くのは、首…両手首に、膝から下だ。体内の血留まらないように、数回動かせる場所を動かしてみる。


「…あの…王都の騎士の方…ですよね?」


意外にも冷静な声で近くにいる人物に声を掛ける。薄暗い部屋の中で、大柄な男達の肩が微かに動いたのが目に入った。暗い中でも、騎士の勲章が輝いている。

多分だけど…誠実さで考えれば…こんなことをするのは、王都の騎士しかいない。申し訳ないけど。


「だったらどうなんだ?」

「こんなことして良いんですか?」


なるべく説得するように心がけるも、彼らは大きく舌打ちをする。

怒らせてしまったらしい。


「お金で連れ去れと言われましたか?例えば…アナベル様…ルーマン侯爵とか」


誰かが息を飲む音が聞こえる。

暗いからか、聴覚が敏感になっている。


「まさか、ルーマン侯爵がなぜ?」

「アナベル様が、私のことを嫌っておられる…からですかね」


そう言うと、私の首筋に鉄の物体が突きつけられる。

こちらも敏感になっている肌から、冷たい物を感じると同時に、心臓がおかしくなるぐらい大きい音を立てて鳴る。


「よくぞご存じで」


彼のこの言葉で、アナベルが企んだことだと判明する。

ため息をつきたい気持ちと、焦る気持ちが私の中を複雑にする。


「こんな簡単に捕まるような人が、未来の王太子妃になるなんてなぁ」


喉の奥でクツクツと笑う彼に、私は怒りと悲しみと恐怖が込み上げてくる。


「アナベル様が王太子妃にふさわしいか…と言えば、別にどうでもいいけど」


吐き捨てる彼は、心に余裕が出て来たのだろう。緊張が緩んだ声をしている気がする。

せめて、王都の騎士なのだから騎士らしい行動をして欲しい。


「どうして、私に傷一つつけないのですか?」


首に添えられる剣へと首を傾げると、チクリと痛みが走る。まぁ…自分から傷をつけに行ったんだから痛みがあるのは仕方ないのだけど。


「傷一つ付けないのが、アナベル様との約束ですか?」


目線を合わせるように質問をすると、奥にある扉が大きな音を立てて開く。


「よくぞご存じでっっ」


高らかに笑いながら堂々と登場するアナベルを見て、ついに私の口からため息が出る。それを目敏く見つけた彼女は、こちらへとやってくると頬を叩く。叩かれた部分から時間がずれて痛みが伝わってくる。


「貴女…どういうおつもりで?今、どういう状況に置かれているか知ってますか?!」

「知っていますが?むしろ、アナベル様こそ、こんなことをしてどういうおつもりですか」


大きい声で叫ぶ彼女とは対照的に冷静に彼女に質問をする。

……本当に……昔から嫌いだ。

無理なものは無理なんだから、早く諦めればいいのに。


「貴女がっっ私のことを馬鹿にしたんでしょ!?あんな大勢の前で恥をかいたのよっ」


そんなことを言われても、アナベルの自業自得みたいなものでしょ?

それを勝手に記憶を改ざんしないでいただきたい。


「メルクーア様にはもっと恥ずかしい思いをさせてあげますね」


楽しそうに笑うアナベルに、私の背筋がひんやりと凍える。

彼女の笑い声を合図に、今まで静かにしていたはずの騎士達が、立ち上がったりと動き始める。彼らが首や手首を鳴らしてアップを始めるのを見て、私はなんとか動こうと試みる。しかし、頑丈に縛りつけられており全く動く気配はない。

彼女の発言的に、今から本当に傷モノにするつもりなのだろう。

なんとか抵抗しようと手足を必死に動かす。ロープに縛られた手首がこすれて痛む。

いつの間にか消えていたアナベルを憎むように叫ぶ…が戻ってくることはない。


「…あ…あ……たす…」


ゆっくりと迫ってくる彼らから、目を逸らして助けを呼ぼうと口を開くが言葉にならない。

いつの間にか目の前には騎士達がおり、私と話していた男が片手で私の頬を物のように掴む。


「…ん…っい…」

「ようやく本領発揮だ。覚悟しとけよ、()()()()()()()


下卑た笑みを浮かべた彼の手が、私の胸へと届いた。そして、その胸元の布が引き裂かれると覚悟を決めた瞬間…扉が壊される音と何かが飛んでくる。それは、正確に騎士の髪をかすめる。

明るい陽の光が差し込んで、誰かが入ってくるのが目に入る。


「…ルートヴィ…」

「メルクーア大丈夫か?」


きっと。きっと私の大好きな人が助けに来てくれたのだと思い、名前を呼ぼうとすると…違う人物だった。

私は輝かせた目を一瞬で曇らせる。


「ジーク…」


緊張で固まっていた筋肉が一気に弛緩すると同時に、小さい声でジークフリートの名前が口から零れる。

…ルートヴィヒでは無かった…。

助かった安心と、嬉しさと、悲しさが頭の中をグチャグチャにしていく。

焦った表情をしたジークフリートが、私の縛られたロープを器用に剣で切っていく。ようやく解放された手両手足と胴体は力が入らず、前へと倒れていく。


「メルクーアっっ」


それをしっかりと受け止めたのはもちろんジークフリート。彼がしっかりと抱き留めてくれる。

私はその広い背中に腕を伸ばすと、マントがシワシワになるのを構わず逃さないように掴む。


「……ジーク…うぅ…」


名前を呼んだ後、自然と瞳から涙が零れる。

それは留まることを知らずに、彼の胸元を濡らしていく。ジークフリートは落ち着かせるように、私の背中をリズム良く叩く。


「何もされてないな?」


返事をする代わりに首を動かす。


「まずは、ここを出よう」


ジークフリートはそう言うと、私を軽々と持ち上げる。

私は拒否する気力すらなく、彼の首に自分の顔を埋めて誰にも見えないように隠す。傍では、ハーゲンとまた別の若い男性の声が聞こえる。もしかして…以前出会ったクラウスハール家の次男だろうか。侯爵の声も聞こえるので、北の守護が総出で出向いてくれているのか。

私はその嬉しさから、ジークフリートの首に回す腕の力を含めた。彼もそれに答えるかのように、一瞬も緩めることが無かったのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


自分でも今までの文章を読み返していましたが…あまりにも誤字とか脱字とか変換ミスが多い(^^;;

第一部分の思い出しました。〜第五部分の殿下を攻略しましょう。まではミスの修正、一部文章の変換を行っております。

特に小説の流れが変わったわけではありませんので、気になるかたはお時間がお手隙の際にご覧ください。



いいねや評価の方ありがとうございます。創作時の糧にしています!!

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