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遂に来ました建国祭。(2)

「…たまには、あぁいうダンスも良いですよね」


あれから休まずに三曲ほど踊り終えた私たちは、近くの木陰で休憩する。いつもしてくれるように、彼は私の座る場所にハンカチを置いてくれる。そこに座ると、膝を伸ばしてつま先を伸ばす。疲労が溜まっているのか、伸ばすとふくらはぎに効く。ヒールでダンスを踊りすぎたようだ。


「楽しかったよ。これが後二日続くなんて。これはずっと続けていきたいね」

「その時は、私も尽力を尽くしますね」


小さな声で紡がれた言葉に、私は広場を見つめながら返答する。ルートヴィヒが言った言葉は私も同じ意見だからだ。

風邪に靡いているルートヴィヒの髪が、陽の光に照らされて輝いている。その髪に手を伸ばそうとしてから引っ込める。流石に、こんな外で触れるのはよろしく無いだろう。


「メルクーアが居てくれれば百人力だね」

「そう言ってくださって嬉しいです」


二人で真っ直ぐ前を見据えて今日の建国祭を瞳に焼き付ける。

老若男女…皆んなが楽しそうに笑っている。

私たちの目の前で、小さな男の子が一輪のヒマワリを手にして小さな女の子に駆け寄る。どこの誰かから教えてもらったのだろうか、男の子は片膝をついて手にしていたヒマワリを差し出す。口パクでしか分からないが、”好きです”とかそういう事を言っているのだろうか…。女の子は頬を染めて、ヒマワリを受け取っている。男の子はガッツポーズをして大声を出して喜んでいる。


「…プロポーズ、成功しましたね」

「すごい幸せそうな場面を気がするよ」

「良いですね。ずっと、二人で仲良くして欲しいです」


そう言ってから固まる。

私の未来は本当に幸せ?甘えられるのが好きだ、と言ったから頑張って甘えたりした。最初は恥ずかしさが勝ったが、今は普通に甘えることが出来ているはずだ。。ヒロインが来ても、ルートヴィヒは彼女に心移りしないだろうか。

目の前の彼らのように、最初から恋愛じゃない。

だから…大丈夫だと心の中で思っていても、その小さな片隅にはどこかで不安がある。

幸せな時間だったはずなのに、急に手が冷たくなって震える。

私の異変に気がついたのか、ルートヴィヒが手を重ねてくれる。

…温かい。

冷えついていた手が一気に暖かくなる。

ルートヴィヒの方を見ると、不安そうな顔をしている。私は笑顔を作ってから小さく謝る。


「私たちもあの二人のように、仲良しでいましょうね」


怖くなった私は、ルートヴィヒに呪いの言葉を吐いてしまった。

彼の手の下で力が入ってしまう。


「うん。そうだね。僕たちならずっと仲良く出来るよ」


本当に?

という言葉は笑顔の下にうまく隠す。


「ここの近くに冷たくて美味しいレモネードがあるんだって」

「少し暑くなってきたので…良いですね」


腰をあげようとすると、彼が手を出して制止する。

待っていろとのことだろうか。

一緒について行こうかと思ったが、今はひとりになりたい気分だ。ここは彼の行為に甘えておこう。

一人になると言っても、近くに護衛がいるはずだから大丈夫だろう。


「ありがとうございます」


殿下を使うなんて…まぁ彼のことだから許してくれるだろう。

私たちの目の前にいたはずの子たちは、手を取り合って話をしている。女の子が男の子の耳元で何かを囁いている。それを聞いた男の子は赤くなっているから、甘酸っぱい話なのだろう。

こちらまで幸せな気分になれる。そろそろルートヴィヒが戻って来るころだろうか…近くに移動しようと腰を上げた瞬間、口元に何かあてがわれる。それと同時に、後から腕と体が拘束される。


「…んんーっっ」


首を頑張って振ってみるも、力が強く太刀打ちできない。

拐うことに手だれた何かなのだろうか。周りにいたはずの騎士は…?彼らは私たちを見守っていたはずでは?

意識が薄れゆく中、私は胸元からジークフリートから貰った翡翠のブローチが落ちるのが見えた。

…もう誰でも良い…誰か…助けて…。

助けを願うころには、抵抗する力すら無くなっていた。

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