表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/86

女の嫉妬ほど嫌なものはない。(2)

「シュテルンベルガー様の冷たい視線…見ました?」

「いくら…彼女が平民の出だと言ってもね…」

「結構強く言ったみたいですよ」

「…怖いですわね」


周りから聞こえてくる話し声に、前を追いかける足が自然と止まる。声がする方を向くと、令嬢達はわざとらしく顔を逸らした。

後ろから追いかけてこないからか、前を歩いていた二人も足を止める。

今…彼女達が言っていたのはどういうことなの?何故か私が悪く言われてない?

アナベルに対してはキツくお灸を据えるように言ったが、あの少女に対しては普通に接したはずだ。

思いもよらない出来事に頭が真っ白になる。


「メル…気にしないで」

「歩けるか?とりあえず教室まで行こう」


支えるように両脇に手を添えてくれる。ツェツィーリアは私の腰に手を添えてくれている。その支えもあり、震えながらも無事に到着した。


「メルクーア様っっ」

「リタ様…」


隣の教室にいるはずのリタが焦りながらこちらへとやってくる。その後ろには、リタと親しい令嬢達も同じような表情で駆け寄ってくれる。


「……リタ様も…お聞きになりました?」


乾いた笑いで彼女に問う。


「嫌でも耳に入ってきたのです。私達、あの場に居たのですが…メルクーア様が強く言っていないのを見ています」

「無実なのは知っています」


手に拳を作って懸命に擁護してくれるリタ達。

彼女達が言ってくれるのはありがたい。本当に私は無実なのだから。


「…やはり…アナベル様が」

「私がなんですか?」


赤い髪を揺らしながら堂々と教室に入ってくるアナベルと、その取り巻き達。

ジークフリートとツェツィーリアは、壁を作って彼女達から遠ざけてくれる。


「アナベル様、変な噂を流してませんか?」


ツェツィーリアが攻撃的に質問を投げつける。彼女はそれを嘲笑うかのように反応する。


「嫌ですわ、ツェツィーリア様。私がこんなことをするとお思いですか?」


値踏みするようにツェツィーリアを頭から爪先までじっくりと見つめる。

そんなことをすると思っているから、彼女は貴女に聞いたのよ。とは誰も言わなかった。


「私は誇り高きルーマン家の娘ですわよ?やるなら正々堂々と致しますわ。殿下の婚約者であるお方が…こうも…酷いお方だったとは…」


誇り高きルーマン家?

ずる賢く、心汚いルーマンの間違いでしょ。お金ですぐ解決しようとする癖に、どの口が入っているのよ。

今すぐアナベルの口を封じたいのを、ルートヴィヒの婚約者としての立場で抑える。将来、上に立つものは何を言われても、何をされても動じないように…と教育係から口をすっぱくして言われてきた。

私は壁を作ってくれている二人の前から飛び出す。


「何か、勘違いをしておりませんか?私は別に、彼女を責めるようなことはしておりません」

「しかし、私は()()()()から、メルクーア様が()()()()()()を見る目で見たと聞きましたわ」


違う。

私は…そんなことしない。

ルートヴィヒに迷惑をかけるようなことは…しないわ。

いじらしい笑みを抑えきれないアナベルの顔を見て、ハッと気づく。

……全て仕組まれたもの?

最初から、あの子はルーイに色目なんて使っていなかったとしたら?

アナベルとあの子のやりとりが…演技だったとしたら?

見抜けなかった私が間抜けだ。

きっとずる賢いアナベルのことだ…私がルートヴィヒの婚約者に相応しくない、と入ってくるだろう。

私は桃色の形のいい唇を噛み締める。噛んだところから血が溜まっているのがわかる。


「教室の前で何をしているんだい?ルーマン嬢」


拳を握りしめる上から、白くてそれでも男らしい手が上から被せられる。


「で、殿下っ」


目の前にはルートヴィヒの背中がある。アナベルから物理的に遠ざけてくれているようだ。

彼の自然な優しさにじんわりと胸が暖かくなる。


「今、ローゼンハイン嬢から粗方話は聞いたよ」


ルートヴィヒの冷ややかな言葉と声色とともに、この場の温度が一気に下がる。

彼の背中から少しだけ顔を出すと、アナベルは顔を真っ青にしている。まさか、本人が出てくるとは思わなかったのだろう。


「僕がクラスメイトに色目を使われたって?メルクーアは婚約者なのだから、もう少し周囲に目を配れって?クラスメイトは本当に困っていて、僕が助けたんだけどね。それをメルクーアが対応してくれたんだっけ?なのに、いつの間にか色目を使ったと言われている子にきつく当たったと…」


彼の口から出る言葉全てが今までの経緯だ。

所々に混じった怒りを含んだ言葉に周囲は慄いている。ジークフリートさえも固まっているんだ。


「自分ではなく、他人をいいように使って僕の大切な人を傷つけるのは、いい加減やめてくれないかな」


そんなことをしたって、僕はルーハン嬢を好きになることはないんだから。

最後の一言が、アナベルの心臓に言葉の刃として突き刺さったのだろう。彼女は目に涙を浮かべている。


「ルーハン侯爵家を失いたくなかったら、静かに去ることをお勧めするよ」


最後に圧をかけると、彼女はか細い声で”申し訳ございませんでした”と紡ぐ。そしてこちらを…私を殺意が篭った目で射抜く。

それを見てしまい、私の心臓が嫌に鳴る。そして自然とルートヴィヒのブレザーの裾を強く掴む。

全てのことが済んだからか、集まっていた生徒達はまばらに散っていく。


「メルクーア気にしなくていいからね。ルーハン嬢が何かしてきたらすぐに教えてね」

「えぇ…わかりました。ルートヴィヒ様の手を煩わしてしまい、大変申し訳ございません」


頭を下げると、彼の手が頭を撫でる。

気にしなくていいよ。

今までの冷たい声とは反対に、優しく暖かい声が頭上から降ってくる。

私は涙を必死に抑えて顔を上げた。



嫌なシコリのような物が、胸に溜まったままだが…今は気にしないようにしよう。


ここまで読んでくださりありがとうございます(*^^*)


もしよろしければ、下の☆☆☆☆☆を押してくださると嬉しいです!

お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ