バチバチ、ギクシャクしています。(2)
授業が終わるごとにジークフリートに声をかけようとするも、私が教師に呼ばれてしまったり…彼が令嬢達に話しかけられたりして、タイミングが掴めない。諦めようとしていると、お昼を知らせる鐘が学園に響く。私は誰よりも早く席を立ち上がると、廊下近くに座っているジークフリートへと近く。彼は私に気がつくと、立ち上がり廊下へと出る。そんな彼を追いかけると、後からはツェツィーリアが私の名前を叫んでいる。
「ジーク…クラウスハール様」
彼に倣って名字を呼ぶ。背中を私を向けたまま彼はこちらを向くことはない。顔を見るために縮まない距離を必死に縮めようとする。
「クラウスハール様っ」
私の声で廊下にいた生徒達は一斉にこちらを見る。そんな視線を無視するかのように、彼の制服の裾をやっとの思いで掴まえた。背を向けたままの彼は小さく息を吐く。
「シュテルンベルガー嬢」
「メルに、クラウスハール様」
後から追いかけて来たツェツィーリアが、私達の腕を引っ張り廊下の隅へと追いやる。彼女の表情は明らかに怒っている。私の行動が彼女を怒らせてしまったのだろうか。
「どうかしましたか?ハインツェ嬢」
仮面を貼り付け対応するジークフリートに、私の前にいるツェツィーリアは小さな口から舌打ちをする。
「私に対して猫を被らなくて平気です…顔見知りですので。メルはルートヴィヒの婚約者だとご存知ですか?」
「では、お言葉に甘えて。それは…勿論知ってますけど?」
「ご存知なのに…どうして肩に触れることができるのですか?」
「先程のは…どう考えてもハインツェ嬢の過失では?」
「…ぐっ…。確かにそうですが…ですが、すぐに手を離すことは出来たはずですよ」
「あーそうですね。では、シュテルンベルガー嬢、失礼致しました」
二人の会話の後、彼は軽く頭を下げて謝る。ジークフリートとの壁があるように見える。急に拒絶されて、意味がわからない。だから…そう簡単には、はい。そうですか。とは言えない。
「謝らないでください。もうツェツィの前なので、私も猫を被らないです。ジーク…貴方どういうつもり?いい加減にして貰えます?私と貴方の関係は?友達じゃないの?」
ツェツィーリアとジークフリートの謎の言い合いを見た私は、彼の態度に鬱憤が溜まっており、彼に初めて怒る。近くにいる彼らは目をパチパチと動かしている。
「頭のいい貴方のことだから、何かお考えがあるのでしょうね…ジークフリートさん?」
「…失礼しました。僕は君の友達だよ、メルクーア。君が言った通り…考えがあったんだ」
「そう…なら良かったわ。その考えは後で聞かせてもらう…。私、傷ついたんだけど?」
「…傷ついた」
「そう、ジークのせいで傷ついたの。貴方…入学前に言った言葉覚えていないの?忘れるぐらいなら…自分の言葉に責任を持ってもらえる?後…」
「ストップ。一回ストップして」
ジークフリートに説教していると本人から制止される。私はその行動にシワを寄せる。
「ちゃんと覚えてる。ごめん、メルクーア」
「…そう…分かった」
「…メル、終わった?」
言い合いという名の一方的な責めを終えると、今まで黙っていたツェツィーリアが口を開く。彼女は痺れを切らしたらしい。
「終わったわ。そうだ…二人の関係も聞きたいから…お昼でもどう?」
笑顔で提案すると、彼らは青ざめながら頷いたのだった。
◇◆◇◆◇◆
ルートヴィヒが”またね”と言ったことをすっかり忘れていた私は、ジークフリートとツェツィーリアを連れて食堂近くにあるテラスへとやって来た。私の目の前に二人を座らせて、こちらはニコニコと微笑む。
「で?お二人の関係は?ツェツィ、私とジークはね友達なの。ね?ジーク」
彼はなぜか嫌そうに肯定する。それに少しだけ眉を寄せる。
ジークフリートは一息、息を吐くとようやく口を開く。
「僕とハインツェ嬢はただの顔見知りだ。母親がハインツェ家の商会のお得意様で、たまたまついて行った時に出会っただけ」
「私の家が商会なのは知っているでしょう?クラウスハール様が言った通り、私達はただの知り合いなだけよ」
二人して同じようなことを言う。
私は一人ずつ顔を数秒ほどじっと見つめる。彼らは瞬きだけで目を逸らしたりしない。ということは…嘘はついていないのだろう。
「私…ジークのこともツェツィのことも知らないことが多すぎたのね」
勝手に一人でショックを受けて、勝手に一人で落ち込む。晴天のこの場所だけで…ジメジメと陰気臭い場所になっているだろう。
二人は何も言えないのか、話しかける素振りもしない。
…あぁ…困らせてしまった。
こうやって友達の全てを知ろうとするのは、確かに相手からすると嫌だろう。もう…この話は出さないでおこう。
「私もクラウスハール様と友達なの…知らなかったわ。私だってメルの知らないことが多いの」
「僕も、メルクーアとハインツェ嬢が仲良いこと知らなかった。思っているより知らないこと多いよ」
ようやく口を開いた二人は、私と同じようなことを口にする。
二人共気を遣ってくれたのかもしれないが、なんだかありがたい。
「これから知っていけばいいのよ」
「僕は、ハインツェ嬢のことは興味ない」
「あら、奇遇ね。私もクラウスハール様のことは、別にどうでもいいわ」
二人は犬のように喧嘩をする。
ツェツィーリアの方が元気な子犬で、ジークフリートは大型の静かな犬。飼い主は私といったところか。
「まだまだ学園生活は始まったばかりよ。お互いに沢山知っていきましょ?」
これからの生活に期待を込めていった言葉は、ウキウキで溢れている。ツェツィーリアは目をパチパチと動かし、ジークフリートは口元に弧を描いている。
「そうね」
ツェツィーリアは同じようにウキウキが伝わっている声で賛同してくれる。
二人の関係に最初はちょっぴり傷ついた私だったけど、分かって一安心だ。
その後は、三人で優雅にお昼にしたのだった。
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