第1.5章 一方その頃
「おかしい。どう考えてもおかしい。」
和馬がいなくなって3日経つ。普段特に遡行の悪くなかった弟が、無断で3日も家を空けた。何かあったに違いない。それなのに家族の反応は淡白だ。
「和馬も男だ。ついにやる気になって武者修行の旅にでも出たんだろう。」
父親は訳のわからないことを言っている。行く訳ないし、行くにしても家族に何か一言言ってから行くでしょう。てかそもそも携帯持ってるはずだし、それなら連絡くらい取れるはず。常に電源を切っているなんてことあるの?
「まぁ大学生になったんだし、ある程度好きにさせればいいんじゃない?友達と毎日飲み会でもして携帯を見ることすら忘れちゃってるだけよ。」
母親は親としてそれでいいのか的なことを言っている。父親に比べれば現実的なことを言っているけど、あの真面目な和馬がそんな遡行の悪い友達を作る訳が……いや、あるか。大学生デビューってやつかも。
母親の言うことは否定できないけど、私が和馬を心配しない理由にはならない。
「正直どうでもいいよねー。」
妹に至ってはそもそも興味がない。自分の兄弟が家にいようがいまいが連絡がどうとか全く気にしていない。
全くひどい人でなしだ。
家族がこんな感じなので、捜索届けを出すこともしていない。どうしてそう冷たくいれるのだろう。そもそも、私の和馬レーダーに反応がない時点でおかしいというのに。私の和馬レーダーなら、この世に居てさえくれれば反応があるはず。たぶん……。正直今まで反応がなくなったことがないからわからないけど。
和馬レーダーは微弱に和馬の気配を感じることができ、近づけば近づくほど気配が強くなる非常に優秀な代物だ。双子であれば誰でも持ってるレーダーだと思われる。
とにかく、私のこのレーダーに反応がないってことは何か重大なことが起きたに違いない。そのことを言っても家族は何をアホなことをと否定するばかりだけれど。
和馬を助けられるのは私だけ。和馬を助けるまで帰らない覚悟で探す旅に出るしかない!
「お父さん!お母さん!明日香!私和馬を探す旅に出る!」
「おーう、気をつけて行ってきな。」
「あんまり遅くならないでねー。」
「ついでに今週のジャ◯プ買ってきて!」
旅に出ると言っているのに!
本当に危機感の薄い家族だ!
「和馬を見つけるまで戻らないから!今生の別れにならないことをぜひ祈っててね!」
そう言い残して、必要最低限の荷物だけ持って私は家を出た。キャリーバッグは邪魔になるのでリュックサック。3日分の着替えを持って、ちょっと不潔だけどこれをローテーションして行く構え。最低でも2日に1回は洗濯すれば何とかなるはず……。まぁ道中買えばいいし。
女子力の何たるかを捨て去り、私は和馬のために人生の一部を投げ出すのだ!
そんな献身的な自分に酔いつつ、和馬の未来を守るため、私は旅に出かけた。
といっても目的地はどうしようかと。この近辺にいないことは明らか。大学は家から2駅のところにあるから近辺って言っても差し支えないし、この広い世界の中から1人探そうと思ったら手がかりがあまりにも足りない。
どうしたものか……。




