第1章 その六 願い事を叶えてあげよう
「いやぁちょうど最近考えてたんだよね。私の魔法を継いでくれる弟子みたいなものを。」
ほう。それじゃ修行っていうのは魔法の修行なのかな。え?僕魔法使いになれるの?
「魔法は適正のある人しかなれないよ。しかもこの適正のある人はなかなかいない。1000人に1人いたらいいかなって感じ。まぁ私知り合い1000人もいないからわからないけど。」
適正か。異世界召喚されたものとしては、魔法の適正くらいはあってほしいけど。
「適正のあるなしは、”魔法を使うのに最低限必要な3つの条件を満たしているか”になるね。」
1.魔力をその目に捉えることができるか。
2.魔力を使ってこの世に事象を起こせるだけの想像力があるか。
3.できないことをできると信じる力があるか。
「まぁ基本は1だけなんだけど、それでも頭の固い人には無理って話だね。私の持論だけど。」
持論なのか。
「そもそも魔法を信じてない人が大半を占めるね。世の魔法使いは固まって生活するか、私みたいに周りに誰もいない環境で生きてる。まぁ魔力が見えない人にとっては理解できない文化だからね。仕方ないよね。」
なんだろう、目が特別なんだろうか。魔法使いになれる人はその光を目に捉えられるかどうかで変わるってことでとりあえずいいのかな。地球でいう幽霊みたいなものかな。知らんけど。
「さ、魔法について語り始めると長くなっちゃうからね。とりあえず適性審査始めよっか!」
そういうと人差し指を立てるアーシャ。すると、その指先が淡く光りだす。その色は何色かと言われたら、なんと言えばいいのか。言葉にするなら虹色。しかし、その中でも強く感じる色は常に変化し続けている。明滅を繰り返しているわけでもないが、例えるからプリズムに様々な色を当てながら回しているような感じだ。きっとこれが魔力なのだろう。
「私の指どうなってる?」
「光ってる。」
「おーっ、いいね!それじゃ何色?」
「虹色というか、いろんな色に光って見える。」
「ええっ!?それほんと!?」
それを聞いて、アーシャは驚愕の表情を浮かべた。
なに?もしかしてやっぱり才能は持ってる感じ?
「とりあえず魔力を見える目は持っているみたいね。ただ、そうなると困ったわね。」
「え?何が?」
「私は今指先に魔力を集めたんだけどね、大抵の人は見える魔力の色は限られてるの。特性っていうか、相性みたいなものがあって、基本的に見える色が司る魔法しか使えないの。もちろん私は全魔力に適性があるんだけど、どうやら和馬もそうみたい。」
なんだ、やっぱり才能があった感じか。何も困ることないじゃん。
「まぁこうなると、逆に得意不得意がわからないから教える方としてはどうすればいいか迷うのよね。」
あぁ、なるほど。
「とりあえずここは森だし、この緑の魔力を使えるようになりましょうか!さぁ、さっそく始めましょう!」
そういって元気よく手に緑色の魔力を手に集めだした。本当にトントン拍子に話が進むな。話が早くてとても助かるけど、逆に言えば、僕が自分で考える隙間がなくて流されてる感がしてやばい。異世界に飛ばされて、起きたら目の前にいた女性にお世話になって魔法まで教えてもらえる。こんな都合のいいことがあっていいのか?
そんなこと言ってたらアーシャが集めた緑の魔力を大きく振りかぶってーー。
「うわっ!?」
投げた!とんでもない豪速球だった。いや、正直光ってるから距離感とかは測りにくいからわからないけど、体感的には卓球のスマッシュくらい早い。
それを文字通り間一髪のところで避けた。しゃがんで避けたから髪の毛スレスレだ。完全に頭を狙ってきた。
「こらーっ!避けちゃだめじゃん!修行にならないよ!?」
「えっ!?なに!?何の修行なの!?」
魔法の修行ってなんかこう、精神統一して魔力を集めるとかそんなんじゃないの!?
「もちろん魔法の修行だよ。え?なんかおかしいかな。」
「いや、おかしいかおかしくないかは僕にはわからないけどさ。アーシャが今光を集めてたから、その集め方とか教えてくれるのかなって思って。」
「いやいやー、そんなには行かないよこれは。今の和馬は私が集めて凝縮した光が見えるのがやっと。これを集めるためには今も空気中に漂ってる魔力を見れるようにならないと。」
なるほど。そうだよね、目に見えないものを集めるなんて無理だもんね。なんか集中すれば勝手に集まるのかと思った。
試しになんか集まれーっと適当に念じてみても何も起きない。
「それはわかったけど、それと今の暴投と何が関係あるの?」
「ほら、諺にもあるじゃない?習うより慣れろって。」
それはあるけど全く繋がらない。というかこの世界にも諺とかあるんだ。
「まぁようするに、魔力に触れて実際に感じればそれを普段から認識できるようになって、そのうち魔法が使えるようになるって寸法よ。」
理にかなってるようなかなってないような……。
「ちなみにこれに当たったらどうなるの?」
「んーどうなるのかな。緑だし、身体から木が生えたりするんじゃないかな?」
「えっ!?」
いやいや、そんなものぶつけないで欲しい。
ていうかなんでそんなあやふなな感じなの?
「大丈夫、何かあったら死ぬ前になんとかするから!」
やだ、やめて!生きてるまま肥料になりたくない!そうこうしてる間に、アーシャは次の魔力を溜め始めた。
「んじゃ次弾いくよー。今度は受け止めてね!」
くっ!こうなりゃやけだ!なんか朝から絶体絶命だけど、死ななければ大体のことは些事だと偉い人も言っていた気がする!
「こい!」
そして僕はアーシャの緑の魔力を受け止めた。




