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師匠とみる優しい世界  作者: 輝美
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第1章 その五 今後の身の振り方

「まぁ仕方ないよね。この辺は私が修行の為に選んだそこそこ危険な森だから、これからは注意した方がいいよ。」


そういうと、もうひとあくびをし、そのまま踵を返して家へと戻っていく。


「和馬も早く寝たほうがいいよー。血は戻ってないから体力も落ちてるだろうし。」


そういわれると、ちょっと貧血気味かな。いや、貧血って血が足りなくなることではないと思うけど。

ちょっとだけ頭がふらふらする。


とりあえず当初の目的である夜風にあたるは満たしたし、部屋に戻って寝よう。

この短時間で人狼に襲われて、アーシャの実力を垣間見れたのは終わってみればいい経験だったかな。

もう二度とごめんだけど。


アーシャの姿を見送りながら、今後の生活のことを考える。

冷静に考えてみると、相当なピンチなのでは?

異世界に召喚されてしまったのは憧れてたところもあるしこの際いいけど、1日目にして死にかけた。

今まで自衛する手段を学ぶことを避けてた僕は、身を守る手段がない。

アーシャの保護なしでは生きられない状況はなんとかしなければならない。


とりあえず今日のところは家に戻って寝てしまおう。

しかし、早いところ今後どうするべきか、対策を考えないと、明日や明後日には死んでしまうかもしれない。

朝一になったらその辺をアーシャに相談してみるかな。


――――――――――――◆◇◆――――――――――――


遠くのほうで何やら鳴き声が聞こえる。

何の鳴き声といえばいいのか、あえて言うならドラゴンのような。

身体の奥深くから、相手に恐怖を植え付けるような力強い鳴き声が聞こえる。


「あれは飛竜の鳴き声よ。食べるととても美味しいの。」

そうか、この世界には飛竜がいるのか。しかも美味しいのか。


今はアーシャとの朝食の時間。メニューは材料はよくわからないが、肉野菜具たくさんのスープとパンのようなもの。

朝からがっつりなスープと、おそらく小麦ではない芋か何かでできたふパンは胃にどしんとくる。これがこの世界では普通の朝食なのだろうか。僕は朝はコーンフレークがいい。


「まぁこの辺の地域では朝の風物詩よね。」

鶏みたいなものか。


「今日は和馬どうする?私は特に何も予定ないけど」

「うーん、ここが何処かもわからない状況だからね。正直何するもないよね。」


せっかく異世界に来たのだから、世界観を楽しみたい感はあるんだけど、まずはこの世界のことを知って安心感を得たいよね。情報が少ないと不安になる。


「あー、それじゃ私がこの辺のこと教えてあげるよ!」

「え、いいの?」

「まぁね。暇だし」


ということで、僕とアーシャは散歩に出かけた。とりあえず今生活している森はイリスと呼ばれる場所らしく、ここには非常に凶暴な獣がたくさん住んでいるらしい。絶対に入ってはならない森として知られていて、近隣に人里はなく、人は滅多に寄り付かないとのこと。なぜそのような場所に住んでいるのかというと、もちろん魔法の修行のためだそうだ。魔法に対する向上心が半端じゃない。


「魔法使いは魔法に対する理解を深めるのももちろんだけど、身体も鍛えないとね。」


ふむふむ。アーシャの言うことに心の中でメモを取る。今のところ紙や鉛筆をみてないけど、筆記具はこの世に存在しているのだろうか。


「身体を動かすのに使う脳が勿体無いから、全てのことを反射レベルでできるようになりたいの!それには修行あるのみだから!」


見た目は華奢で可憐なのに言っていることが体育会系すぎる。まぁでも、物語の世界でもあまり魔法使いキャラが修行してる姿ってみないからな。知らなかっただけでこんな感じなのかもしれない。


危険な魔物が住む森か。確かに昨日の夜は人狼が現れて死にそうな目にあったけど、アーシャと歩いているうちはそんなに危険に思えないんだけどな。


昨日も思ったけど、空気がすごく美味しい。身の回りの植物たちが青々としており、深呼吸をすると酸素が脳に染み渡るよう。


そういえば、この世界の植物は地球のそれと同じなのかな。具体的にいうと、ちゃんと光合成をして二酸化炭素を吸収し、酸素吐き出してるのか。その辺の大気成分が地球と差があったら、油断すると死んでしまうんじゃないかって思うんだけど……。まぁそれは気にしても確認できないから、考えるのをやめよう。


「和馬はこれからどうする?私としては和馬を養うのも、修行の一環になるから居てくれてもいいんだけど、正直ここにいたら命がいくらあっても足りないかも。」


「まぁ確かに、昨日もアーシャが気づいて外に来てくれなければ死んでたからね。でもそれにしてもどこに行けばいいのかなんてわからないよ。」


自分がピンチでも解決策が何もない。弱肉強食な世界にて圧倒的弱者。仮にこの森を出ても人里もないから野垂れ死ぬのが関の山。


「んー。それじゃ何がしたいかだけ言ってみて?全知全能を目指す私がその願いを叶える方法を考えてあげる」


全知を口にする割には日本のことを何も知らなかったアーシャからありがたい言葉をいただいた。全知ではなくても、今の僕からみたら全能の存在に近いアーシャなら、願いを言えば叶えてくれるかも。


パッと思いつくのは"元の世界に帰りたい"だけど、全知ではないアーシャにそれを願ったところで、怪しまれるのがオチだろう。基本的にはこの世界で生き延びるための術を得ることを目標にしなければ。


「……それじゃ、強くなりたいかな」


助けてもらうんじゃなくて助かり方を教えてもらう。それがやっぱり建設的。


「なるほど、強くなりたいのか。それじゃ修行しかないね」


アーシャは僕の強くなりたいという願いを聞いて、修行という結論を出した。ほぼ反射的な速度で話が早い。


「修行……。具体的にどんなことするの?」


修行をすることには文句はないけれど、正直多少剣道やってたくらいでほぼ一般人な僕が、一朝一夕で人狼に勝てるくらい強くなるとは思えないんだけど。

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