第1章 その二 魔法の実演
「空を飛ぶ魔法かー。早速難易度の高い魔法を選ぶね!うん、やりがいがある。」
そういうと、アーシャは瞑想を始めた。
すると、周りの空気の様子がおかしくなった。
「……これは。」
今まで気持ちの良いそよ風を感じていたのが突如無風になる。
いや、遠くに見える木々が揺れているところを見ると、風が止まったわけではなさそうだ。
「はぁぁっ……!」
呼吸をするように気合を込めるアーシャの方をみると、彼女の元に空気が集まっていくのがみえる。周りの空気を吸収しているかのよう。よく草などの動きを観察すると、足元から上方に向かって流れているのがわかる。
「はっ!」
「おお」
アーシャの身体が地面から離れた。するとそのまま宙を縦横無尽に飛び回る。その度に風の流れが変わるのを感じる。というか物凄い勢いの風だ。魔法で風の動きを操って自分の身体を宙に浮かせているのだろうか。そして、その力で移動をする。その割には、スカートが全くめくれる気配を見せないのはご都合主義なのか。
しばらく空中散歩を楽しんだアーシャは、僕の目の前に降りて来た。
「どう?凄いでしょ!」
「初めて魔法を見たけどびっくりした。本当に魔法使いなんだね。」
「うん!今のは風を操る魔法を使ったんだけど、空を飛ぶならあれが1番派手だから使ってみたんだ!」
ほう。1番派手ということは、空を飛ぶ魔法にも色々あるということなのだろうか。色々と話を聞いてみたいけど、今はこの状況を把握するのが先かな。
魔法を目の前で見せられると、どうやら魔法が使える世界に来たようだ。何を言っているか頭が痛くなる話だけど、魔法を使いこなす民族がいると考えるよりは、まだそっちの方が理解できる。
「僕は自分の暮らしてる街からあまり出たことがなかったから今混乱してるんだけど、アーシャみたいな魔法使いは世の中にはいっぱいいるの?」
というより、そっちの方が夢があるからそう思うことにする。そうなると、相手からすると自分は異世界から来たことになる。ならば、今からでも異世界であることを隠した方がいいかもしれない。東京などこちらの世界に来る前の話をしてしまったけれど、幸い気づいていない様子だった。今からでも白を切ろう。
「いやぁどうだろう。魔法使い自体はそんなにいないと思うんだけど、そんなに私も世界のことを知らないから。誰にも負けない自信はあるけどね!」
「おお、それはすごい。」
実際さっきみた魔法はすごいものだった。こちらの世界でもあれほど自然に影響を与えられるものはきっとそうはいないと思う。あんな魔法を使える人がたくさんいたら、色々と問題が起きてしまいそう。生態系とか。
「さぁ、自己紹介が終わったところで、これからどうすればいいか考えようか!」
「え?これからって?」
これからのことを話し合う。そんな流れになるフラグはあっただろうか。
「和馬君がこれからどうしていくのかを話し合おう!」
「僕のこれから?」
「うん、たぶん迷子だよね」
今までの会話でそういう話があっただろうか。さすがに魔法使いともなると1を聞いて10を知るほど頭が良いのか。
そう言われると、僕はこれから今後どうすればいいんだろう。とりあえずお腹は空いていないし眠くない。現状特に困っていないので気にしていなかったが、早いところ身の振り方を考えないと。
「とりあえず雨風凌げるところを確保しなければいけないかな。」
食事の問題とかもあるけど、とりあえずは衣食住の住からだ。食に関しては最悪水が飲めればとりあえず生きてはいける気がする。一日何も食べない日なんかもあるし。
「だよね!それじゃ私の家に来ようよ!」
な、なんだと……!




