第1章 その十七 ケモ耳少女とご飯
そのお食事屋さんは、西洋な雰囲気にマッチしたと言うか、オープンテラスのある爽やかな料理屋さんだった。観葉植物が立ち並び、荒くれ者が集うイメージだったこの街にも、一般人の居住区が存在することを今知る。当たり前なんだけどね。
そこでルーシーはパスタのようなもの(小麦からできてるわけではない?芋かなんかでできてるのかな。よくわからない。)を美味しそうに食べた。僕はもちろんグリムですよ。頼めたからね。流石に郷土料理なだけあって確かな味だった。それだけだとわからないと言われても、特にグルメ的な表現は思いつかないので美味しかったとだけ言っておく。
食事中もルーシーはとにかく喋る。自分の好きなこととか、この街に何しにきたかだとか。どうやらルーシーも旅をしているらしく、歳は17歳。そんな若さで旅なんかに出るのかと思ったけど、この世界の常識はわからないのでそこには突っ込まない。まぁ聞いてみても、僕が住んでた街では珍しいといえば誤魔化せそうな気がするけど、あまり世間に疎いことを悟られたくもない。そんなことを気にしてたら僕の方からは全然発言ができなく、ルーシーがひたすら喋ることになっているのだけれど、それでも気まずい思いはしてない様子で楽しそうに話している。
「ところで、和馬さんはこれからどうするんです?」
「んー、そうだなぁ。僕は今後何するかとか師匠に任せっきりだから、正直どうするかとかはわからないよね。」
元々は森にいる魔物では強すぎて修行にならないから弱い魔物から始めようというスタンスで旅に出たはず。ちょっと森から出てみれば、僕でも相手出来そうな魔物しかいなさそうだから確かに修行としては問題ない。でもなんだったかなぁ、旅に出る目的が他にもあった気がするんだけど。
「師匠、ですか。その方のお名前は?」
「名前?うーん。言っていいかわからないからちょっと内緒で。」
なんか正体隠してるっぽいもんね。下手なことを言うとどんな目にあわされるか。
「……そうですか」
「ルーシーはこれからどうするの?」
「私は、探している人がいるのですが、その人を探し続けます!」
「あぁ、そういえばさっきも言ってたね。そういえばどんな人を探しているの?見かけたらルーシーが探してたって伝えてあげるよ?」
さっき旅の目的を話している時に言っていたんだ。ルーシーの旅の目的は人探しらしい。その時は先の事情と緊張もあって話を広げられなかったんだけど、慣れて来た今なら聞ける。
しかし、これは広げてはいけない話だったのかな?ルーシーの顔に陰りができる。
「私は……私の故郷を助けてくれる人を探しているんです。ですから、特定のだれかをさがしている訳ではないので伝える必要はないんです」
そして、心痛な面持ちのまま故郷のピンチを告げるルーシー。ルーシーから話し始めたから広げても良いかと思ったんだけど地雷だったのかな。
「故郷を助ける……。何かあったのかな?良ければ話を聞かせてくれないか?」
いや、そういうわけじゃないだろう。故郷が危険な状態な割には元気に話をしているなと気になるけど、それは僕に故郷を助けて欲しいと考えているのであれば理由はわかる。僕と親しくなれば、もしかしたらその望みが叶えてもらえるかもしれないと考えているのかなと。
「はい。私の街は魔王軍が攻めて来てしまって。何とか大人たちが追い返してくれたんですけど、街のすぐ側で陣取ってしまって……。まともに街の外に出られない状況になってしまったんです」
なるほど、籠城状態になってしまったと。助けを呼べないとこれからジリ貧で街が滅ぼされてしまう状況。その助けを呼ぶべく、ルーシーだけ単身で抜け出して来たということか。17歳の少女には重すぎるミッションだと思うけど……。
「私を何とか逃がしてくれたみんなの為にも、早く助けに戻らないといけないんです!そ、それで、あの、和馬さん」
「いいよ、僕と師匠が助っ人になるよ」
まぁ、選択肢などない。唐突に出た魔王軍という存在。この世界に魔王と呼ばれる存在がいて、それがその他の民族を脅かす存在となっている現実。その脅威は未知数で、死を恐れる僕としては関わらない方がいいに決まっているんだけど、この話を聞いて見捨てれるほど僕は人間としてできていないし、ゲームや物語の世界ならば、ルーシーとの出会いは魔王軍と関わっていくフラグとなるのだろう。存在を知ってしまったのであれば、旅を続けていればそのうち関わりは嫌でも持つことになる。
そうと決まれば話は早い方がいい。メンタル効率というか、どうせ見捨ててもそのうち争う羽目になる相手なら、ここで美少女を助けた方が精神的に得ということだ。まぁ、この計算には師匠が何とかしてくれるだろうという打算が多分に含まれるわけだけど。冒険者として最高ランクの称号を持つ師匠は、きっとこの世界でも最強クラスの人間なんだろうし。




