第1章 その十四 暗がりで襲われる美少女
まぁ確かに、日本でも2億なんて大金を手に入れたところでどうやって使っていいかもわからないし。この世界の娯楽もわからないからな。ぱっと思いつくのは衣食住にお金を使うのみ。それだったら2億持ったところで宝の持ち腐れなのかな。……いやそれでも2億は欲しいけどね。
「まぁお金はある分には困らないからいいんだけどね。それじゃ私はサクッとお金を確認してきてギルドに署名しに行くから和馬は1人でその辺を散歩しておいて。ついてこられても面倒だし。」
などと冷たいことを言ってこの部屋を去って行ったアーシャ。さっきから部屋を出たり入ったりと行き来が激しい。こんなことならギルドから戻ってこなくてもよかったのではと思ったけど、単純にあの場に長いしたくなかったのかなと。どうでもいいかもしれないけれど、この部屋に戻ってきたときはアーシャは元の姿に戻ってた。けれど、この部屋を出ていくときには文字通り瞬く間に着替えていた。いつの間に変身したのかわからなかったが、自分の姿を偽らないといけないのは大変だな。
さて、そんなわけで僕は1人で街に散策にでかけた。特に目的はないけれど、この世界のことを知るいい機会だ。せっかく異世界にきたのであれば、ファンタジーな存在に出会えることを期待したい。街並みだけは比較的ファンタジー感あるけど、まぁそれでも常識から外れていないから新鮮味がない。ならば期待するのは、地球との生態系だ。きっと、特殊な人種が探せばいるに違いない。今のところ僕と同じような人間しかみたことないけど、獣人とかエルフとかドワーフとか、いかにもファンタジーな人がきっといる。
ということで、街に出てみた。この街は冒険者にとって過ごしやすいだけあって、冒険者にあふれかえっている。最初来たときはよくわからなかったが、ギルドにいって冒険者がどんな感じな人たちなのかということを知った今、街歩く人のほとんどが冒険者だということがわかる。見るからに住人って人はいない。みんな剣や斧をもって鎧を着ている。この世界には銃刀法違反はなさそうだな。銃はわからないけど。ついでじゃないけど獣もいない。
「せっかくだし、俺もギルドに行くかなー。グリムみたいなおいしい依頼があるかもしれないし。」
そこでアーシャと出くわしたらまた怒られそうでちょっと気が引けるけどね。そう思ってギルドに向かって僕は歩き出す。
「おっ、こっちに何かいい感じな抜け道がある。こういう横道ってなんかわくわくしちゃうんだよな。」
余りに退屈なのでそっと独り言をこぼしながら、横道の中に入っていく。この日の当たらなさ。そして何の店かわからないドアが人の気配を感じさせずひっそりと並んでいる。このちょっと物静かな街の裏側みたいな空気が好き。こういう道を歩いていると、曲がり角曲がったあたりで殺人現場や食人現場に出くわすのは映画や漫画にはよくあること。日本ではそういうことにはならないと思ってたけど、この世界じゃわからない。緊張感をもってこの道を通らないといけないな。
「……っと!……て……さい!」
「いい……おと……くし……!…ら!」
おっと、そんなことを考えていたら何かすぐそこの曲がり角のあたりから何やらもめ事の気配がする。片方は女の子の声で、もう片方は何やら図太い男性の声。期待していたのは間違いないけど、実際に起きてしまうとは。こうなってくると、さっきの期待していた話は不謹慎な気がしてきて心が痛む。とりあえず様子をみてみるか。
「誰か―!!助けて―!人さらいよーー!!」
「うるせぇ!静かにしやがれ!!」
「うっ……」
思ったよりバイオレンスな光景に出会ってしまった。男2人がかりで美少女を囲んで美少女の腹を殴っている。女の子に手を上げちゃいけないんだぞ!男の方の背格好をみると、なぜか上半身裸にサスペンダーみたいなものをつけてズボンを上げている。そして筋骨隆々とはこういうことだと男としてあこがれを抱かずにはいられないくらいのマッチョ。もう片方は細身で、それでも身長は高めで髪型はモヒカン。さっきから叫んでいるのはマッチョの法で、細身の方は協力しているだけな印象をうける。
「……いやぁ……いやぁぁ……!」
うーん、僕は陵辱物とか特に好きじゃないから、というか仮に好きでも現実でこういう状況をみると焦燥感というか助けなきゃいけない感覚が凄い。……現実助けるかは議論の余地があるけど……。屈強な男たちを前に僕にできることは何だろう。魔物を討伐慣れして命が元の世界よりも軽いこの世界。ここで助けに行って僕は生きて帰ることができるのか。
「ちょっと、その娘の悲鳴が心に来るのでその辺にしておいてもらってもいいですかね。」
まぁ、助けるんだけどね。




