第1章 その十二 初めての冒険者家業
さて、街に入ったばかりだったけれど、わずかな滞在時間で外に出た僕。目的は魔物討伐。冒険者は完全歩合制なので、今日狩った魔物は今日金に変わる。1日の宿泊費は2500円(お金の単位はなぜか円だった不思議。)なので、先ほどの教えてもらったグリムを1頭(約5000円)狩ればこと足りる計算。生き物1頭の値段が5000円というのは高いのだろうか、安いのだろうか。狩場をすでに聞いている僕は、グリムが生息している地域を目指して1人歩く。
アーシャはというと、アーシャも狩に出かけた。ただ僕とは違ってもっと大物を狙いに行くらしい。グリムは初心者な冒険者でも討伐可能な獲物らしく、修行も兼ねて1人で行くことになった。今の所防御にしか使ったことのない魔法だけど、これでどうやって魔物を倒せばいいのか。
しばらく歩いて、グリムが生息しているという山の麓にある河付近についた。グリムは繁殖力が高く、山の中にたくさんいるらしいが、人間がすぐ狩るのでとても警戒心が強いらしい。だから生息するとはいえ、簡単に姿を現さない。根気よく待つか、山の奥深くに入るか2択だが、初の狩ということで無理はできない。ここでしばらく時間を潰してグリムが現れるのを待とう。
しばらくぼーっとしてたら、突然遠くの方で何かの鳴き声が聞こえた。前聞いた飛竜の鳴き声によく似ている。竜種の鳴き声かな?この近くにも竜がいるのか。是非とも出くわしたくない。それとともに、何やら地鳴りのような音も聞こえる。竜種が何かと戦っているのかな?
こんな近くでそんなのが戦ってたら、グリムが怯えて出てこないのではないかと懸念してしまう。おっと、そんなことを考えていたらグリムらしき生き物が目の前に現れた。
「フゴッフゴッ」
なんだか間抜けな鳴き声を出しているイノシシのような生き物だ。ようなっていうかイノシシ。大きさは全長1mくらいだろうか?日本の人里に現れたら化物として警察に討伐依頼が出されそうなたくましいイノシシだった。僕からするとすごく強そうなんだけど、これでも初心者冒険者向けなのか。
さて、どうやって討伐するかだけど、僕は考えてきた。今のところ相手は僕に気づいていない。この隙に……。
「ブヒッ!?」
緑の魔力を使ってグリムが抜け出せないよう隙間を狭めにして囲むように檻を作る。とりあえず囲めたけど、それに気づいたグリムは檻に体当たりを始める。流石に力が強く、檻が軋む音が聞こえる。その檻が破壊される前に、その檻に巻きつけるように木を生やし操る。それを一切の隙間がなくなるまで繰り返し、最後に天井にも蓋をして完成だ。ひっきりなしに体当たりを続けるグリムだけど、流石に助走する空間もなければ威力もたかが知れてる。
そして、檻の中心にグリムを貫くことをイメージして鋭利な木を生やす。
「ブヒィッ」
……むっ、硬いな。僕のイメージでは、グリムを貫いた木が天井を突き抜ける予定だったんだけど。まぁいいや。これをしばらく続ければそのうち討伐できるでしょう。
これ以上グロいことを考えるのは嫌だったので省略する。結果から言うとグリムは天に召された。物音を立てなくなった檻をみて、どうやって持って帰ろうかと考える。
担ぐ?それはちょっと……。アーシャみたいにものを宙に浮かせることができたら楽なんだけど。アーシャだったらよく異世界ものでみる異空間収納ですらやってのけそうだし。アーシャさえいれば。
あれできないかな。魔力を身体に流して筋力を強化するみたいなこと。魔法は想像力がキモだっていうし、やればできるかもしれない。身体を植物に変化させるよりよほど簡単なのでは?
とりあえず身体に魔力を流して、筋力が上がったことをイメージしてグリムを持ち上げてみる。
「よっと。」
すると簡単に持ち上がった。どれくらい簡単かというと、直系2mの発泡スチロールを持ち上げたみたいな感じだ。それなりに重量感はあるけど、その気になればお手玉くらいできそうだった。これなら街まで持って帰れそうだな。
今まで命の危険は何度かあったけど、初の魔物狩りは特に危険はないまま終わることができた。
意気揚々と街に帰り、グリムの入った箱を持ったままギルドへと向かう。門番の人にこれが何か聞かれて、グリムと答えたらびっくりしてた。まぁこんな方法で持ち帰る人なかなかいなさそうだもんね。魔法使える人なんてなかなかいないらしいし。
そしてそのままグリムを担いでギルドに戻ると、なんかざわざわしていた。何の騒ぎだろう。
「どうしたんです?何かあったんですか!」
「おう!坊主!聞いて驚け!あの伝説の冒険者アリシアさんがこの街に来ててな!何とこの近くの山に居着いてた水龍を討伐してきたんだ!」
僕は昼間お世話になった荒くれ者な冒険者に声をかけた。なるほど、アーシャが魔物を討伐して、それで騒いでいたのか。なるほど、ギルドの奥の方をみると、全長10mくらいのでかい龍の死体が転がっている。というか、ギルドの奥ってそんな広い空間になってたんだね。




