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師匠とみる優しい世界  作者: 輝美
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第1章 その九 初めての街

魔法のことを話す時のアーシャは本当に生き生きしている。魔法がどれだけ好きなのかということがひしひしと伝わってくる。好きなものを周りに伝えたい感覚は人間ならきっと誰しも持っている感覚。それを持っているから、相手の気持ちを受け止めることもできる。実際アーシャと話す内容の9割は魔法のことだった。食事中もその食事をどんな魔法を使って調理したかとか、材料をどんな魔法を使って調達したかとか、内容は様々でもその根幹にいるのは魔法だった。そんな人に魔法を教えてもらえてるのはとても恵まれていることかもしれない。まぁその分、万能感が強いのかむちゃくちゃされて大変だったけれど。


そんなアーシャに魔法について教わる日々を 繰り返しながら、僕達はついに街にたどり着いた。その街の周りには草原が広がっており、ちょっと遠くの景色をみると河が流れている。水源の近くに人は住処を作るという話をぼんやりと聞いたことがあるけど、あの街はきっとそういう理由で作られた街だろう。


「それじゃ、あの街に入るよ。街の名前は確かイースとかそんな名前だったはず。」


日本に住んでた頃は、街と街が基本隣接してたからなんかファンタジーを感じるな。とりあえず、この世界に来て初めての街になるからなんかワクワクして来た。


その街に入るまでには結構歩いた。遠目に見てたらわからなかったけど、かなり大きな街だった。東京都分くらいあるのかな。まぁ他の街を見たことないから、この街が大きめなのかどうかはわからないけど。


「すいませーん、この街に入れてください。」


街には門番の人に断りを入れて入る。そのために、隣にいるアーシャが門番の人に声をかける。そんなアーシャは今は見た目が変わっている。身長がちょっとだけ高くなって、髪の色は赤く、腰ほどまでに長い。顔もあどけない美少女のような、どちらかというとロリ路線だった顔だったけど、今は妖艶な魅力が漂う大人な女性に変わっている。


「なんだ?冒険者か?入るのはいいが、まずはこの街のギルドに顔を出すように。そこで滞在許可証を貰わないと、基本ものの売買はできないからな。」


門番の人はそういうと、すんなり中に入れてくれる。警戒心がかなり薄いな。まぁそれも事前に聞いてたから不思議ではないんだけど。門番は基本的には魔物が近くに来ないか見張っている程度で、人に対しては特に厳しく取り締まっていないらしい。


「さ、それじゃ門番の人も言ってたしとりあえずギルドに行こうか。」


そう言って歩き出すアーシャについて僕も中に入る。街並みはなんていうだろう。行ったことないけど西洋の街がこんな感じなのかな。街は基本歪なレンガで建てられてて、道も似たようなものが敷き詰められて舗装されている。移動手段は基本徒歩。街を徒歩以外の交通手段で移動している人はいない。よってもちろん信号のようなものはなく、高い建物も基本ない。1棟だけ5階建くらいの大きさの建物があるけど、基本的には2階建分くらいの大きさ。


「ところで後で聞こうと思ったんだけど、アーシャはなんで見た目を変えてるの?」


「しっ!私をここではその名前で呼ばないで!私のことはアリシアって呼んで!」


何をそんなに焦っているのか、とりあえずアーシャは人には名乗れないようなことをしていて、それで見た目を変えているというのはこの反応でわかった。


「……なに?アリシアはここでなんか悪いことでもしたの?」


「そういうわけじゃないんだけど……とりあえず私の名前は禁句なの!気をつけて!」


うーん。よくわからないけど聞いても教えてくれそうにないからやめておこう。まぁ後でギルドの人にでも試しに聞いてみればわかるでしょう。それやったらすごく怒られそうだけど。


ちなみに、ギルドはイメージ通りというか魔物の討伐依頼や、その死体から得られる材料の取引をしている機関だ。この世界には冒険者がいて、その人達は道中倒した魔物の材料とかを取引して生計を立てている。それを直接利用する人とやりとりするわけではなく、ギルドを仲介して売買の流れを調節する。この機関があるから、冒険者は新たに人間関係を築く必要もないし、商人達も安心して材料を手に入れることができるってことだ。


「さて、あの看板があるのがギルドよ。覚えておいてね。」


指し示す方を見てみると、読めない文字(たぶん文字。ただの絵かもしれないけど。)で何かが書かれた看板が見える。覚えるのは難しそうなので、とりあえず写メっておこう。携帯を構えて写真を撮る。するとアーシャがキョトンとした顔でこっちを見てくる。


「あれ?和馬が持ってるそれ何?」


おっとしまった、携帯は電波が届かなくて使えなかったから今までアーシャにみせてなかったんだけどここで見つかってしまった。なんて説明をすれば伝わるんだろう。写真を撮る機械でわかればいいけど、伝わらなかった時が面倒だ。

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