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師匠とみる優しい世界  作者: 輝美
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第1章 その八 旅立ち

「もういい加減わかってるでしょ?私がそんなこと考えてるわけないって」


「うん……まぁね。もちろん拒否権がないことも知ってる。」


この3ヶ月振り回されてだいぶアーシャのことはわかってきた。初めて会った時、というより瞬間は丁寧なお淑やかな感じがしたけれど、蓋を開ければ天真爛漫で猪突猛進、望むものを見つけたら手に入れる努力を惜しまなくて、手に入れる力も持っている。それ故にか、願望が思いついたらそれが本当に必要か検討をせずにすぐに行動に移す。考えなしのような印象も受けるけど、それで失敗はなくこういう人を賢者と呼ぶのだろうと思わせる力を持っている。話していると賢さを感じないのだけど、僕と同じ時間でより色々なことを考えているに違いない。


「とりあえずこの森から出ればなんとか、基本その辺の魔物はなんとかなると思うから頑張って出ないとね。あぁ、ついでに教えとくと、この辺の魔物は緑の魔力には慣れてるから和馬の魔法は基本的に通用しないと思った方がいいよ。」


それじゃなんで最初にその魔力を教えたんだと言いたくなる情報だ。


「魔法に抵抗するにはその事象を変換する魔力に抗うだけの魔力をぶつけて相殺するのが基本なんだけど、魔物はそれを意識せずに天然でやり遂げる化け物よ。特にこの森は魔力が強くて、それを浴び続けてるから抵抗力が強い魔物も多いの。まぁ私がここに住んでたのも同じ理由なんだけどね。」


この辺に住んでるだけで魔力の扱いが上手くなるってわけか。まぁそれなら修行のターゲットに選ばれたのが緑の魔力っていうのも頷ける。


「ということで、森の中で魔物に出くわしたらうまく逃げてね。」


「……一応聞いてみるけど、魔物をアーシャが寄せ付けないようにしてくれれば簡単に脱出できるよね?」


「一応答えるけど、それは修行にならないから却下。」


ですよね。やれやれ仕方ない。この3ヶ月間で命をかけることに慣れてしまった僕は、言われた通りに脱出を試みることにした。いつ実行するのかと思えば今日とのこと。アーシャは自ら作った家に名残のようなものは一切持ってないらしく、それどころかその家を完膚なきまでに破壊した。自然に還るようにとその全てを燃やし尽くして。その際には周りの森に燃え移らないよう、かつ酸素もなくならないよう風の結界を作って丁寧に作業を行なった。まだまだ学ぶことが多い。


さて、優しいアーシャは僕の行く方角だけは教えてくれた。自分はそれを飛んで森の上空から光を灯して、その光を頼りに進めばいいらしい。悠々自適に空を飛ぶアーシャはとても楽しそうに僕のことを見ている。前々から思ってることだけど、アーシャにとって僕はおもちゃか何かなんだろうか。


まぁさりとて僕としては生きるための術を教わっているので特には不満はないのでおもちゃに甘んじる。ぶっちゃけるとアーシャは美人なので歳上の女性におもちゃ扱いされるのは悪い気持ちはしない。そんな僕は気持ち悪いけど。


歩いてる最中は暇なので色々なことを考えながら進んでいると、魔物らしきものが見えた。小動物だ。見てくれは兎に近い。頭にツノが生えている。よくファンタジー的な作品で出てくる一角獣だ。なかなかツノのある生物をみる機会がなかった僕だから、ツノが生えてるだけでそこそこ感動する。


でも僕は知っている。あいつもきっと僕を殺すくらいの力はある。自衛の術を習ってたけど、こいつをなんとかする力はきっと僕にはない。その戦力差を測る力すらないわけだけど、そう思った方が身の為だよね。


ということで、この生き物は無視して進もう。なんかこちらをガン見してるけど、きっと手を出さなければ--。


「あいたっ!?」


右腕に激痛が走る。また右腕かとみてみると、先ほどの一角獣が僕の右腕を貫通して突き刺さっている。もうほとんど致命傷だよこれ。胸に刺さってたら絶命は免れなかったな。


器用に右腕を狙ってくれた一角獣に多少感謝しつつ、振り払って落とした。急いで緑の魔力を使って右腕の傷口を木に変質させる。木が血管の代わりをするようにイメージしながら魔法を構築すると、なんとかできたみたい。体組織について知識がなくても、そこは身体の知識が補ってくれるようだ。痛みは消えないんだけどね。


右腕の激痛に悩みながら一角獣の対処法を考える。といっても悩んでいられる時間はない。こうしている間も飛びかかってくる一角獣を避け続けている。こういう生き物って群れるイメージがあるんだよね。だから仲間が集まってくる前になんとか対処しないと。


そして思いついた。まずは一角獣の出てくるタイミングを伺う。こうしてみてると飛びかかってくるのに一定のリズムがある。さっきは目を離したから右腕を貫かれたけど、よくみていれば避けることは難しくない。そのタイミングを見計らって……。


「キュイッ!?」


目の前に高速で作り出した木を盾にする。すると思惑通りにツノが木に刺さる。これで一角獣は身動きが取れなくなった。じたばたを暴れる一角獣。とりあえずは抜け出した後襲われないよう、そのまま木を増やして一角獣を囲んだ。これで身動きはとれまい。


「とどめを刺しても、経験値がもらえるわけでもないし、このままにがしてあげよう。」


木はそれほど強度は強くないので、そのうち脱出できるだろう。そのままにして森を進むことにした。


それから一角獣だけでなく、猪のような魔物や植物が魔物化したもの、何か巨大なムカデと多様な生物と出会う。ムカデなんて本当に身の毛のよだつおぞましさを感じたが、基本最初のように命が危険にさらされることはなかった。道中に気付いたんだけど、身体に緑の魔力を流す(身体が変化しない程度に)と魔物に襲われなくなった。よくわからないけど、たぶん奴らは肉食獣で、僕の身体から発せられる生物の気配を察して襲い掛かってくる様子。なんとか気配を察せられないように色々試した結果、この方法に出会った。

まぁこれくらい自由に魔力を使うことができるようになっていたっていうのは、わざわざ歩いて脱出したかいがあったかな。


そして森を脱出。こうみえて3日ほど時間を使った。その間食事を取っていなかったけどなんとかなった。とりあえず水さえあれば不思議と空腹感にも耐えられた。必要なエネルギーはどこで手に入れているんだろう。僕の身体は光合成でもしてるのかな?葉緑体はなさそうだけど。


「はい、お疲れ様ー。思ったより早かったね。さすがは私の弟子!」


アーシャはこの3日間ずっと見守っててくれたのか、森から出るとすぐさま降りてきた。とてもありがたいことです。


「いやでもこの短期間で僕は結構成長できた気がするよ。魔物の回避の仕方も身に着けたし。」


「みてたよー。気づいたみたいだね。魔物たちは必ずしも目で獲物を見つけているわけじゃない。触覚だったり嗅覚だったり聴覚だったり、様々な器官を使って獲物を見つけている。それは知恵として知っているのではなく、本能として感じるところが強いから、生物以外の情報で身を包んでしまえば案外身を隠せたりするものなんだよ。」


ふむふむなるほど。


「ちなみに私たちが住んでいた空間の周りにも、緑の魔力の層を厚めに作ることで魔物が近づくことを防いていたんだよ。」


へー、勉強になるな。それじゃ、魔力を体に流して気配をごまかしてたけど、周りに展開するだけでもなんとかなったんだな、きっと。

アーシャに聞けばなんで自分が食事をしなくても大丈夫だったかとか、いろんな謎が解けそうだな。ちょっと今日は疲れたから聞かないけど。


「まぁといっても万能じゃないんだけどね。それなりに強い魔物は意識みたいなものが芽生えているのもいて、そういったやつらは平気で見つけて襲い掛かってくることもあるの。変に勘違いしてもらっちゃ困るから教えるけど、ある程度強いやつが近づいてきたら私が蹴散らしといたわ。だから魔力に過信することなく、この森がとても危険な森だったってことだけ覚えておいて。」

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