75話
お待たせ致しました。
轟いた轟音で、一緒に眠っていた女性の魔法士団の団員が起き出し、天幕から数人が飛び出し状況を確認しに行きました。
本来なら私は医療隊の天幕で寝る予定でしたが、今回戦場に来ている医療隊の中には女性が居なかった為、唯一女性のいる魔法士団の天幕で就寝する事になっていた様です。
戦場で男性だけの中にいれば、最悪の事態になる可能性があるからと言う事からです。流石に13歳の子供にとも思いましたが、15~6歳の騎士見習いもいるので、無防備になる時は、極力女性の側にいさせたい様です。この決定はお祖父様とハイルク隊長で決めた事になります。
外に状況を確認に行っていた魔法士団の女性団員がヘレンさんを連れて戻って来ました。
どうやらヘレンさんが今夜の夜警の責任者をしていた様で、状況を説明する為にここに戻って来たようです。他の部隊に状況説明はいいのかと思いましたが、他の男性の団員がそれぞれの部隊に連絡する様です。
女性の寝所に使われている天幕には女性が説明に来るのが一番だと言う事で、ヘレンさんがここに来たそうです。
「状況としては、帝国が夜陰に紛れて本体で攻め込んできたわ。
前衛にはあの異形なモノとその隙をついて影から攻撃してくる隠密に長けた部隊。その後ろに騎士と兵士。さらに弓や投石などをつかった中距離攻撃部隊が居たのは確認が取れたわ。恐らく魔法士の部隊もこの中距離に混ざっていると思う。取り敢えず、前衛にいる異形なモノを掃討しない事には、帝国の騎士や兵士との戦闘になれない。私達魔法士団は、広範囲に向けての殲滅魔法を使う事になる。
すぐに準備をして、持ち場に就いて。
広範囲の殲滅魔法に向かない団員は騎士団の補助をお願い。ミーナちゃんを医療隊に送るのは……。」
「私には護衛の騎士が付いているので、その人と一緒に医療隊の天幕へ移動します。
既に戦闘は始まっていますか?」
「ごめんなさいね。
戦闘は闇討ちと言う形で奇襲をされたから、既に国境線は戦闘状態になっているわ。」
「わかりました。既に怪我人が出ていると思いますので、急いで医療隊に合流します。」
ヘレンさんや魔法士団の女性陣に簡単に挨拶をして、急いで医療隊の天幕へ移動します。
夜警時は私の護衛は1人だけになるので、念のため片手に短剣を出して移動をします。敵がここまで侵入してきてないとも言えませんから。何せ前回は簡単に侵入をしてきていたのだし。
「ミーナ、恐らく護衛はこの後俺以外に就くことは無いと思うから、警戒は十分にしてくれ。」
「既に戦場に向かっていると言う事ですか?」
「そうだ。騎士経験の短い俺しかいないのは不安になるかも知れないが…。」
「ダンさんだったら、逆に安心です。
時々シルバ兄様と手合わせしているのを見ていて強さを知っていますから。」
「あ、ありがとう。ほら医療隊の天幕に着いたぞ。」
ダンさんが頭を掻きながら少し頬を染めています。こんな一面が見られるなんて…、とここは戦場でした。気を引き締め治さなければ。
一度深呼吸をしてから、天幕の中に入ります。中にはまだ重体者や重傷者が運び込まれていない様でしたが、物々しい雰囲気が漂っています。
「ハイルク隊長遅くなり申し訳ありません。」
「いえ、夜番以外は私達も今到着したばかりです。状況は聞いていまか?」
「はい。帝国が本体で攻め込んできたと。」
「まだ戦場が混乱しているでしょうから、それが落ち着いたら一気に私達が忙しくなりますので、覚悟をしておいて下さい。」
落ち着いたらと言う事は、怪我の程度に関係なく、怪我人は放置された状態にあると言う事ですね。ですが、ここで私達が怪我人を回収に前線に赴けばさらに戦場を混乱させてしまでしょうから、ここで待機するほかありません。
出来るだけ戦況が落ち着くまでに死者が出ない事を祈るしかありません。
私が医療隊の天幕に着いておよそ30分しない内に、医療隊の天幕の中は戦場と化し、あちこちで怒号や叫び声が木霊するようになりました。
重体者や重傷者が次々と運び込まれてきたのです。私はハイルク隊長が順番を付けた順に魔法を使って治療を施していきます。患者を運ぶのをダンさんが買って出てくれています。流石に、何もせずに警護だけしているのが忍び無い様でした。
私は魔力の残量を気にしながら治療を施しますが、どうやら傷口を塞ぎ難くする毒を使って切られている人が多い様で、止血をするだけでもかなりの量の魔力を持っていかれます。その為、軽傷者が少なくこちらに回される患者がとても多い状況です。
魔法士団で使用する魔力回復補助薬を飲みながら治療を施していますが、魔力の残量が心もとなくなって来ました。
そんな時にギルさんが、今回の毒に効能がある毒消しを作り終えたので一安心です。これからそれの量産に取り掛かるそうで、医療隊から数人と後方支援隊から十数名程がその毒消しの量産体制に入るそうです。
戦闘がはじまってから約半日、漸く戦況に光が差した様に感じます。
意識を取り戻した患者さんが言うには、前線では魔法士団の広範囲の殲滅魔法で異形なモノを一時的には殲滅出来たそうですが、すぐに何処からともなく異形なモノが終結してまた殲滅をしてを繰り返していたそうです。しかし魔法士団の魔力が尽き始め騎士と兵士による殲滅戦になり、魔法士団の魔力がある程度回復しても戦場には負傷者が多数いて、魔法に巻き込まれてしまう為に広範囲の殲滅魔法が使えない状況になっているそうです。
なので今後も怪我人が増える一方で、しかも異形なモノの爪や牙には、傷が治りにくくなる毒が仕込まれているそうです。
怪我人が出れば、その人達は必ず重体者や重傷者になると言う事でしたが、毒消しが完成したので、こちらの負担が大分減る事でしょう。
「ミーナ、居るか!?」
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