73話
リガーフェルが戦線から離脱して暫くすると、空や地中から攻撃していた異形のモノも退いていき、自軍の陣地内の状態を確認出来る様になりました。
空からの攻撃は一部でのみ防げていた様ですが、それ以外の場所では被害が大きかった様です。また、医療隊の潰された天幕からは何人ものご遺体や重傷者が発見され、医療隊隊員の怪我人も多かった事から、私が纏めて魔法による治療を行い、怪我が治った人から順次陣地内に散らばり、怪我人の手当て、重傷者をここまで搬送する仕事に従事しました。
既にハイルク隊長は陣地内に散らばり、プリースダント司祭様達、高位司祭様は死者への鎮魂歌を捧げています。
その後、怪我人の治療がひと段落した所で、新しい天幕を張るかどうかで揉めましたが、場所を移動させて天幕を張る事に落ち着きました。
と言うのも、青空だった天候が曇天になりつつあったことと、夜は冷える為患者の体に障りが出ない様にする為です。
ですが、医療隊の面々や司祭様達も天幕の中には極力居たく無い様で、外に出て来ています。
確かに、天幕の中で下敷きになって死にかければ、同じ天幕の中には居たくはないですよね。
ですので、出来るだけ私は天幕の中に入り患者さんの心のケアをする様に心掛けましたが、だったら魔法でさっさと治してここから出してくれと言われます。
その度にキツク当たられて、何度も心が折れそうになりました。私の力は万能ではありません。
今日の事後処理の間にも魔力枯渇になり、その後に担ぎ込まれた重傷者に対応が出来なくなりかけました。
その時は、何とかその人を助けるだけの魔力が残っていたので助ける事が出来ましたが、戦況が激化すれば……。
考えたくはありません。
「…ミーナ、少し休んだらどうだ?ずっと働きづめだろ。
外に出て、気分転換でもどうだ?」
「ダンさん…。私、ここに居て迷惑なんじゃないんでしょうか?」
「何でだ?」
「だって…。同じ医療隊の人に…役立たずって言われました。」
「!そんな事は無い!!
ミーナが居たからこそ助かった命がたくさんあるんだぞ!?
それに、医療隊の隊員のほとんどがあの後職務を全う出来たのだって…。」
私はダンさんの言葉を遮る形で、ダンさんの胸に飛び込み泣きじゃくってしまいました。
私は本当にこんな力いらなかった。せっかく仲良くなれそうだった医療隊の人にも邪険にされるような力なんて…。
「その言葉を言った奴は、きっとミーナの力に嫉妬したんだと思うぞ。
助けたい命がそこにあるのに、自分にはどうする事も出来ない無力さとかがあったんだと思う。
ミーナはミーナの出来る事をすればいい。俺はいつでもミーナの味方だからな。」
そう言いながら、ダンさんが頭を優しく撫でてくれます。
そうされている内に、だんだんと意識が遠のいていき、遠くでダンさんと誰かが話している声が聞こえましたが、内容を理解する事が出来ませんでした。
気が付くと、天幕の中で毛布に包まっていました。いつの間にか眠っていた様です。
いつ眠ったのかを考えていると、昨日の自分の行動に思い至り恥ずかしくなります。私は何て事をしたのでしょうか。ダンさんに抱き着いて泣きじゃくるなんて…。
どんな顔をしてダンさんに会えばいいのでしょうか?
誰か他の人にあの行動を見られてませんよね?一応私は婚約者がいる事になっているのですから、ばれたらまずいですよね…。
「シュテルネン司祭、いつまでも毛布に包まってないでそろそろ起きて下さいね。」
「!プリースダント司祭様。申し訳ありません。」
「昨日は色々ありましたから、いいですよ。
戦場でも朝の祈りはしますので、支度をしたら天幕の前まで来てくださいね。」
そう言い残して去っていったプリースダント司祭様に返事をして、慌てて身支度をしますが、服の皺を伸ばして髪をささっと整えるだけでしすが。
昨日装備していた、暗器類は取り外されていませんでしたし、服装も昼のままでした。
流石に寝ている私を着替えさせることが出来なかったのでしょう。女性を探すのも骨が折れますからね。それに、父様もお祖父様も兄様達もお忙しいでしょうし。
天幕の前に移動すると、若手の司祭様達から遠巻きにされました。いつもの様に絡んでこないのは楽でいいですが、一体どうしたのでしょうか?
プリースダント司祭様は微笑んで私を手招きしていますので、若手の司祭様達を一瞥してプリースダント司祭様の元に向かい、そのまま朝の祈りをしました。
その後は、医療隊の方に合流をして医療活動を開始しましたが、緊急の会議が行われる事になりました。
そう言えば、昨日私に役立たずと言っていた医療隊員の姿が見当たりませんがどうしたのでしょうか?
「医療隊をいくつかの部隊に分ける事にする。これは昨日の襲撃による対応と、ミーナ様を侮蔑する者を切り離す為の処置である。また、戦後に侮蔑した者に関しては罰則を行う。
部隊編成は副隊長から指示をする。」
「部隊編成は…………。」
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