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68話

天幕に到着すると、多くの怪我人がいます。

まだ小競り合いの状態でこの数の怪我人が出るとは一体何があったのでしょうか?

そんな事を考えながらハイルク隊長の案内の元、瀕死の患者の元に向かいます。

向かった先に居たのは、魔法士の方々が中心でした。

最前線に立つのは騎士様なのに何故、魔法士の方々がこれほど瀕死の状態なのでしょうか?


「ミーナ様、状況の説明は後程しますので、どうか魔法の行使をお願いします。」

「っ!はい、直ちに行います。」


今は考え事よりも治療が優先ですね。1人ずつなどと悠長な事は言っていられないので、まとめて治療を行いましょう。

最初は傷口を全て塞ぐイメージをして魔法を使います。出血死の心配が無くなった後に個別に対応をしましょう。

傷口を魔法で塞いだ直後、ハイルク隊長に次の魔法の行使を止められました。どうやら、傷が塞がれば医療隊の方で引き受けて治療が出来るからとの事でした。


「ミーナ様、ありがとうございます。

傷をつけたモノに毒が仕込まれていた様で、通常の止血では血を止める事が出来なかったのです。

これで、通常の治療を行う事が出来ます。」

「毒、ですか?

毒を想定して傷を塞いでいなかったので、大丈夫でしょうか?

念の為、毒を排出する魔法を行使しますか?ただ、一か所傷を作らなければいけないのですが…。」

「そうなのですか…。

一旦患者の経過を見て決めさせて頂きます。」

「分かりました。必要な際はすぐにお知らせ下さい。」

「勿論です。シュテルネン魔法士団団長がお待ちですので、移動しましょう。

私はここを更に離れる事が出来ませんので、護衛の騎士に案内をしてもらって下さい。」


ハイルク隊長に頷き護衛の騎士様の案内の元、お祖父様がいる場所へ移動する事になりました。

この国境付近に来るまでは、がっちりと護衛の騎士様はついていなかったのですが、国境付近に近づいた昨日から、護衛の騎士様が着くことになりました。

私の護衛は3人の騎士様が中心に付いてくれていますが、その中にダンさんが居て驚きました。

もしかしたら、パディ様が私の思い人に気が付いて、この戦争中に婚約の事を決定させるために、私の護衛にしたのかもしれませんね。こんな非常時だと言うのに、いつも以上にダンさんの側にいられる事を喜んでいるなんて…。これは答えが決まってしまっていますね。

戦争に勝利して、王都に凱旋した際にパディ様にきちんと説明をして、婚約を白紙に戻してもらいましょう。

ダンさんが王宮の警備をして、その姿をずっと見る事になったら私の心が揺らぎ続けて、パディ様を裏切る事になりますから。

はっ、いけませんね。ここは戦場で安全な場所では無いのですから、物思いに耽っている暇はありません。

しっかりと前を見据えて歩いていると、他よりも大きめの天幕が見えました。きっとそこが指令室になっているのですね。

天幕に入る前に、名前と所属を確認されその後中に入る事が出来ました。

中に入って目を引いたのが、お祖父様の頭に包帯が巻かれ、さらに右腕を吊っていました。

父様と近接戦をしても怪我1つ負う事が無かったお祖父様が、怪我をしている姿に衝撃を受けます。

小競り合いが何度か起こったとは聞いていましたが、先程の瀕死の状態になっていた魔法士の姿も考えると本格的な戦闘でも行われたのでしょうか?


「ミーナ、無事に到着したか。部下たちの治療は済んだのか?」

「無事に到着し、先程瀕死の方々には魔法を使って止血を行いました。

その後は通常の治療が行われています。」

「そうか、良かった。」

「お祖父様のお怪我の具合は大丈夫ですか?」

「他の連中からしたら、大した事は無い。それよりもここの状況は誰からか聞いているか?」

「いえ、まだ何も伺っていません。」


その後、お祖父様からこの国境付近の現状の説明を受けました。

どうやら、帝国軍はあの異形なモノを大量に投入してきていて、空から飛来する異形なモノに王国軍は大打撃を受けてしまったそうだ。

空からの襲撃が行われたのは、私が軍行してきた本軍が合流する1時間程前まで行われていたそうです。

どうやら、本軍が遠目に見えて為に一度撤退をした模様です。

魔法士に被害が甚大になったのは、前回の戦争で一魔法士だったお祖父様に戦況をひっくり返された苦い思いがある為、早い段階で魔法士団に打撃を与えたかった事と、噂の回復・治癒魔法の使い手を最初に葬ってしまいたかったからではないかと推測されているそうです。

分かっていた事ですし覚悟していましたが、私はかなり危険な立場にいるのですね。

魔法だけでも厄介なのに、王国の陛下の婚約者と表向きは思われているので、敵である帝国からしたら消し去りたい人物でしょうね。

枢機卿に武器の帯刀及び抜刀を許可されていて良かったです。

一応私の服装は司祭の法衣に医療隊の隊員章を付けている形なので、人を切るのに躊躇われる格好をしています。

その為、一部の司祭に認められている帯刀及び抜刀の許可が必要だったのですが、それも司祭の法衣を見れば分かる仕様になっています。

そもそも帯刀及び抜刀を許可されている者の法衣は教会で統一の規定があるのでその法衣を纏っただけとも言いますが。

ただ、私は枢機卿の許可を得て、隠し武器を仕込めるように改造はしています。その話をした時の枢機卿の好奇心に満ちた顔を見ると、他の法衣にも正式採用をしていそうです。


話が何だかそれてしまいましたね。

空からの襲撃に備える為に、どうするかの会議をこれから開くそうですが、私の回復・治癒の魔法で消滅させることが出来るのかが争点になりそうだとの事です。

何故なのかと疑問に思っていると、王都襲撃に際、私が無意識で発動した回復・治癒の魔法を浴びた異形なモノが悉く死んだからとのことですが、私はその実験をしていませんし、どれくらいの魔力が必要なのか分からない為、出来ないと伝えました。

その代り代案になりそうな事を授ける事にしましょう。代案になるかはお祖父様の考えによりますが。


「お祖父様、空飛ぶ異形なモノが進行してくる直前に防御壁をドーム状に展開して侵入を阻むのはどうでしょうか?

それとこれは役に立つかは微妙ですが、これも使用するのはどうでしょう?」


お祖父様に王都襲撃後に開発を急がせたパチンコとその玉を渡しました。

お読み頂きありがとうございます。


医療隊隊長のハイルク隊長はミーナの魔法は最終手段と考えています。

また、医療隊の隊員もその考えに賛同しており、自分たちの医療技術に誇りを持って仕事をしているので、ミーナの魔法に頼りきりになろうとはしていません。

ただし、ミーナの医療隊での職務をみて仲間意識を持っているので、大切な妹分扱いをされています。

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