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64話

長らくお待たせいたしました。

ストックが無い為、なるべく頑張りますが毎日投稿が出来ない日があるかもしれません。

私は昨夜のリガーフェルの襲撃から起こった事を簡潔に感情をなるべく込めない様に分かりやすく話しました。

その話を聞いた人々の反応はそれぞれでした。

私の回復・治癒系の魔法の効能に目が眩んでいる人々は、王宮で保護と言う名の軟禁状態にした方が良いとパトリック王太子殿下に進言しています。

しかし、帝国との戦争を回避したい人々からは、私を帝国に差し出して戦争を回避する為の材料にするべきだと進言をしています。

さらに、リガーフェルの20年前の凶行を覚えている人々は、私をリガーフェルに引き渡し、戦争にだけ集中すべきだと進言しています。

私の話をしているのですが、私の意見は全く聞かれる事がありませんね。私は何も言わない物ではないのですが分かっているのでしょうか?

この中で一番まともなのが、軟禁ってどうなのでしょう。

イヴォール大臣は何も言わずに、好き勝手に話している貴族達を睨んでいます。パトリック王太子殿下の出方を伺っているのでしょうか?


「皆の言いたい事は分かりましたが、それでは余りにもミーナに酷い仕打ちではありませんか?

まだ私とミーナの婚約の話は陛下から口頭で一部の貴族に伝えたのみで、正式な場で披露目はしていませんが、ミーナは私の婚約者です。

それを物扱いにするのは、私に対して侮辱しているのと同義なのですが分かっているのでしょうか?

それとこの場は、ミーナの身の振り方を決める場ではありません。

宰相の罪を裁く場です。」

「な、何の事ですか。私には何も罪などはありません!」

「私は、王都襲撃事件にこの国の元王族であったリガーフェルが係わっていたので、騎士団や法務局とは別に独自でこの事について調べました。

その中には、20年前のリガーフェルの凶行も含まれています。

宰相、貴方は20年前の事件の後に頭角を現し、子爵家出身の文官から瞬く間に宰相まで立身しました。

宰相に付く前に陛下から侯爵の位を授かっていますが、その頃から陛下は貴方から紹介された女性を愛妾として囲い、政策も貴方の意見を重要視している様ですね。

その頃の私はまだ幼く、今回調べてみて初めて知った事ですが、自分の不甲斐なさを痛感しました。」

「それが何だと言うのですか?

確かに陛下は私が紹介した女性を愛妾として囲ってしまいましたが、私はそのつもりで紹介したわけではありません。

私は、その女性を王妃様の住まう後宮の下女として紹介したまでです。その後陛下がその女性を愛妾にしたのは、陛下御自身がお決めになった事。私には何の罪もありませんが。

それに、私の意見を重要視されたと言う事ですが、私は宰相としての仕事としてした進言です。

どこに罪があるのでしょう?」

「確かにそれだけを聞けば罪は無いでしょう。

しかし、貴方が陛下に提案していた内容の一部には、王都襲撃の為に用意周到に計画をしていたのではないかと思われる政策の提案が含まれています。

例えば、貿易商会の税率の引き下げや人員の出入国の手続きの簡易化にする法律、リガーフェルがかつて係わっていた研究や施設の廃止、武器類の携行の申請制の制定、など確かにひとつひとつを見れば、優れた内容かも知れません。

貿易商会の税率の引き下げや人員の出入国の簡易化は経済の発展に影響を与えました。しかし、その分不正入国をする貧民が増えましたがそれの対策はおざなりです。そして、今回の襲撃者達はそれを巧みに使い、王国に入り込み王都で入念な準備をしていたのです。

また、リガーフェルの係わっていた研究や施設を廃止する事で、20年前の凶行による悪夢が早急に忘れられる様になり、同じ様な事が繰り返されるのを止める事が出来たのでしょう。ですが、私達の様な若い世代にはその話が浸透する事が無く、今回の王都襲撃事件の関係者の名前でリガーフェルの名が挙がっても、危機感を覚える騎士や魔法士が少ないのです。

さらに武器類の携行の申請制も国民の安全を守る為にとても役に立った法律だったのでしょうが、王都襲撃の際に武器を持っていなかったが為に大けがを負った者や死んだ王都民も多数出ています。しかし、申請をしていなかった者も大量に見つかり、処罰の対象になっているのですが、その者達は王国に認められていると、貴方の家紋が入った許可証を持っていました。

貴方は武器類の携行に関する法を作りながら、許可が下りない様な者から賄賂を受け取り私腹を肥やしていたのでしょう。」

「…っく、それくらいの事でしたら、他の多くの貴族がやっている事でしょう。私だけでは無い筈ですが。」

「確かに他の貴族の家紋が入った許可証を持った者もいましたね。」

「でしたら、私だけがその事で罪に問われるのは些か腑に落ちません。」

「貴方は宰相なのですよ。」

「だから何だと言うのですか。宰相であれば、他の貴族がしている様な事をするのはいけないと言うのですか?詭弁ですね。」

「貴方は宰相が何たるかを理解していないのですね。」


よく宰相になれましたね。どうしてこんな人が頭角を現したからといって、宰相まで登り詰められたのかが不思議です。このような場で開き直るのはよくないと思うのですが…。

それに、パトリック王太子殿下の顔が少し寂し気ですね。今まで王国の為に尽くしてくれていたと思っていた人物が、そうでなかったと分かって辛いのでしょうか?

と言うか、私は今この場にいる必要があるのでしょうか?そもそも何故ここに私は呼ばれたのでしょう?

退出して家に帰っても良いでしょうか?


「でしたら、長年この王国の宰相を務めて来ましたが、今日を以って辞職致しましょう。

それで他の貴族と同じになりますね。

この様な状況で王国に宰相が居なくなれば、困るのは貴方でしょう。それに私を捕まえるのでしたら、同じ罪を犯した貴族も一緒に捕まえてなくてはなりませんね。

帝国との戦争が始まるのに、王国内で内戦が始まってしまいますね。ご愁傷さまです。」

「宰相には別の人間をすぐに採用しますので、問題ありません。

貴方は今すぐこの場で捕まえさせて頂きます。他の貴族に関しては帝国との戦争後に処理しますが。

貴方の場合は、放置することは出来ませんから。陛下の暗殺未遂の罪もありますし、王都襲撃の共犯者でもありますからね。」

「どこにその様な証拠があるのでしょうか?」

「…貴方は本当にエドモンド・ドゥムメンシュなのですか?

20年前にリガーフェルの凶行で死亡したアルモルド・ドゥムメンシュではないのですか?

そして…リガーフェルの忠実な部下の1人では…?」


宰相はニヤッと笑いながら、騎士に引き立てられて謁見の間を出て行きました。

結局の所、宰相はリガーフェルの部下だったのでしょうか?

パトリック王太子殿下は沈痛な面持ちです。そして周りに居る貴族達も大半は沈痛な面持ちでいますが、一部の者は平然と、そして青ざめている人々が居ます。

青ざめている人々はきっと武器類の携行の法律を悪用して賄賂を受け取っていた人々ですね。平然としている人々は、ポーカーフェイスがうまいだけですよね?リガーフェル部下では無いですよね?

それよりも、私は何時までここに居るのでしょうか?


「ミーナ、お疲れの所を呼び出してしまい申し訳ありません。

良かったらこの後、私とお茶でもいかがでしょうか?」

「今は忙しいのではありませんか?」

「休憩をきちんと取る事も必要な事ですので、出来ればお付き合い下さい。」

「仰せのままに。」


これもきっと、私を王家に迎え入れる為に必要な事なのでしょうね。仲睦まじいとか良好な関係を築けているとかそんなイメージ操作なのでしょう。

私はパトリック王太子殿下にエスコートされて謁見の間を退出し、パトリック王太子殿下の私室へと移動する事になりました。

お読み頂きありがとうございます。

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