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52話

商会の周りに酷い人だかりが出来ていたので、裏に急遽周り馬車を止めて裏口から商会の中に入って行きました。

裏口から入ったすぐそこは、休憩室なのですが、お昼時だと言うのに誰もいません。

シャルロッテ姉様付きの侍女が、店舗スペースの方に状況を確認しに行きます。

私とシャルロッテ姉様は、エマの後をついて商会長の執務室に移動します。


執務室に着き、ソファーにシャルロッテ姉様と一緒に座り、エマが入れてくれたお茶を飲み、状況を確認しに行った侍女を待ちます。

それから数分経つと、侍女と針子長が一緒に執務室の方へと入室してきました。

もちろん、ノックして誰何はありましたよ。


針子長の話によると、この人だかりはお馬鹿な方々ではなく、商品を買い求めている人々などだと言う事です。

どうやら、王都が襲撃され恐怖に陥っていた平民の方達が、落ち着きを取り戻した最近になって、自分の身を自分で守る術を得る為にお店に殺到しているとの事です。

ここで、護身用の洋服を購入すると、護身術を習う事が出来るからとの理由で、奥さんや娘さんの分を購入し、護身術を身に着けてもらい、さらに自分や息子に護身術を習った奥さんか娘さんに護身術を伝授してもらおうと考えている様です。


私が、お客様では無くお馬鹿さん方だと思ったのは、男性のお客様が大多数を占めていたからです。

この商会は女性と子供向けのお店なので、男性は女性の付き添いで来られるぐらいなので、女性無しの男性客=お馬鹿さんの図式を勝手に思い描いていました。


「ですが、護身用の洋服を使用される方が選ばないのは問題があると思うのですが…。」


護身用の洋服は、ある程度裕福な家庭の方を対象にしているので、オートクチュールなので、デザインを選んで採寸をする必要があります。


「それを説明しているのですが、中々分かって頂けない様でして。

それに、通常のオートクチュールよりはお安い設定にさせて頂いていますが、それでも高いと言われる方が多数いらっしゃいまして。

ここ数日は、その対応に追われるばかりで、2~3人でご注文頂いている商品を作製している状況です。

既製品の作製まで手が回らないので、既製品の商品が品薄状態になっています。」

「その事はカール様には?」

「申し訳ございません。数日頑張ってからどうしようもならなくなったら、ご連絡を差し上げようと思っておりました。」

「と言う事はまだ知らないと言う事ですのね?」

「申し訳ございません。」

「所で、売り子長はどこにいるのかしら?」

「……昨日カール様より、本日いらっしゃるとご連絡を頂いた後から姿を消されて、本日も姿を見ていません。

売り子長の家にも使いを出したのですが…。」

「そうですか。

これはカール様に質問しなければなりませんわね。

針子長は、作るのが仕事なのですから、そこまでお気になさらないで下さいね。

ミーナはカール様が来られるまで、商品の作製の手伝いをお願いできないかしら。

私は、表の対応をしに行きますわ。」


シャルロッテ姉様から周りを凍らせるような雰囲気が出ていますが、気のせいですよね?だって、シャルロッテ姉様は魔法の才など無いのですか気のせいです。

私は、シャルロッテ姉様に頷き、そそくさと作業場に移動します。決して、シャルロッテ姉様が怖かった訳ではありませんよ。

それよりも、あんな人だかりの中に身重のシャルロッテ姉様が出て行って大丈夫でしょうか?

…きっと大丈夫なのでしょう。


作業場にエマと共に入ると、鬼気迫る状態でした。

私が表れた事に気が付いた針子の方達が、一斉に振り向き涙を流し始めました。

何事ですかと身構えていると、小声で‘天の助けが…’と聞こえます。

どんなやばい状況になっていたのですか!?


「お手伝いをいたします。副長、何をすればいいか指示を頂いても宜しいですか?」

「ミーナちゃ…様は、どれくらいの時間がありますか?」

「カール兄様が来られるまでです。」

「それですと、1着仕上げて頂く事は出来ないのですね。それではそこにあるデザイン画のコサージュなどの飾りを作って頂いてもお願いします。」


今までは、気軽にミーナちゃんと呼んで頂いていましたが、さすがに様付けに変更になった模様です。ちょっと寂しいですね。

でも、きっとすぐにちゃん付けに戻ると思いすが。


私は、学院帰りに予定が無ければここによって針子として作業をしてましたから、実力知られてますし、尚且つ、デザイン画とそれを元に作ったパターンとサンプルの洋服を持って来ていましたからね。

では、サクサクとコサージュなどを作りましょう。

幾つか分のコサージュを作り終えた所で、時間を確認すると2時間程経っていました。

まだカール兄様は来られていないのでしょうか?

夢中で作業をしていたので、周りを気にしていなかったのですが、気が付いたら作業場が綺麗になっています。ここに来た時に落ちていた切れ端は糸くずはどこに行ったのでしょうか?

エマが綺麗に片付けていました。

そして、私が作った飾りも類も現在進行形で作っている物はその人の所へ、それ以外は所定の場所へしまわれています。何故その場所を知っているのでしょうか?

何の指示も無しにテキパキと作業しているエマが素敵です。私の侍女は最強ですね。


「ミーナお嬢様、カール様が到着致しましたので、執務室にお戻り下さい。」


シャルロッテ姉様付きの侍女が呼びに来ましたので、作業場から一時退散致します。

話し合いの後に時間が取れる様であれば、お手伝いを致しましょう。


「副長、それでは失礼致します。」

「ミーナちゃん、ありがとう。助かった。」


副長は言い終わった後にアッと言う顔をされていました。やはりちゃん付けに戻るのも時間の問題でしょう。


シャルロッテ姉様付きの侍女とエマと一緒に執務室へ向かうと、左頬を腫らしながら微笑んでいるカール兄様がいました。

…突っ込むのはやめておきましょう。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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