49話
「イヴォール大臣、当面の事はまた後日相談を致しましょう。」
「うむ。
では狸共の相手をしに王宮に戻るか。パトリック王太子殿下がこちら側についてくれたので、大臣の何人かは例の件の承認に動いてくれそうだ。」
「それは良かったです。」
ルーカス義父様はそう言いながら、ベルを手に取り鳴らします。
すると、マルスさんが入口より入って来ました。
「イヴォール大臣がお帰りになります。ご案内を。」
「畏まりました。」
イヴォール大臣が王宮に戻る事になり、マルスさんと一緒に部屋を退出されました。
その際に、お祖父様とルーカス義父様とカール兄様とシャルロッテ姉様も一緒に退出されて行きました。きっと玄関までお見送りをされるのですね。アマンダ義母様は一緒に行かなくても良かったのでしょうか?
「ふふっ、私がライナーを見送らなくても大丈夫よ。
あぁ、ライナーと言うのは、イヴォール大臣の事よ。私の従兄なのよ。」
「アマンダ義母様と従兄なのですか?」
「えぇ、よくいじめてあげたから、私が側にいるといつ何をされるか分からなくて、緊張してしまうのよ。
だから、少しでも離れていてあげた方がいいでしょ。」
「そ、そうですね。」
アマンダ義母様は一体イヴォール大臣に何をされたのでしょうか?
年上の従兄が恐れる事とは一体…。
視界の隅に映ったアルノー兄様が、すごい勢いで首を振られています。聞くなと言う事ですね。アルノー兄様は一体何があったのか知っているのでしょうか?
それともご自身で体験されたのでしょうか?
「ミーナも疲れているだろうけど、もう少しここで待っていてちょうだいね。
まだ、お話の続きがありますから。
それと、ミーナに先に言っておくことがあります。」
「何でしょうか?」
「これからは、シュテルネン家の立派な令嬢になります。
使用人の事はさん付けをしないで、呼び捨てで呼ぶようになさい。あと、これからミーナ付きになるアンナの事も、公私を分ける事を心掛けなさい。
そうでないと、意地の悪い令嬢たちにアンナが標的になったりしますから。
すぐには無理でも、少しずつ変えていけるように努力なさいね。」
「はい、アマンダ義母様。」
アマンダ義母様の言いたいことは、私が侍女や使用人に甘いと知られれば、そこを狙って嫌味たらしく攻撃したりしてくるので、注意しろとの事ですね。
エマさんやアンナを攻撃されたくはありませんので、なんとしても回避出来る様に公私の区別をしっかりとつけないといけませんね。
決意を新たにしていると、ルーカス義父様達が戻って来ました。
「さて、今度はシュテルネン商会の事を相談しようと思います。
商会の事はカールに任せていますから、カールがどうしようと考えているのかを言って下さいね。」
「分かっています。
私としては、今後もシュテルネン商会は存続させていきたいと思っています。
ミーナの負担が少しでも減るような仕組みに変えるつもりですよ。
何よりミーナから針子の仕事を奪ったら、恨まれそうですしね。」
「勿論です、カール兄様。
私は学院を卒業したらそのままシュテルネン商会の針子として生きていくつもりでしたから。
何より、ぬいぐるみや洋服のデザインを考えたり作ったりするのは趣味ですからね。
それに、ドライフルーツ作りも続けていくつもりです。」
ぬいぐるみや洋服のデザインは、寝る前の時間やちょっとした時間に取り掛かればいいですし、森や山に果物を採りに行けなくても、庭に立派な果樹園がありますからドライフツール作りは問題ありませんからね。
「今までは、シュテルネン商会での商品はすべてミーナのデザインで作っていましたが、これからのミーナの毎日はハードになって今までの量のデザインを作る事は不可能だと思います。
そこで、ミーナが作るデザインはミーナデザインとしてブランド化をして、それ以外を他の針子に作ってもらう事にしようと思います。
他の針子達のデザインもミーナのデザインに触発されて、今までにない先進的なものになりつつありますから、それで問題ないと思っています。
最終的にデザインの使用許可は、私とシャル、そして針子長の3人の意見があった場合のみにする予定です。
いかがでしょうか、父上?」
「ミーナのデザインをミーナデザインにするのも、それ以外を他の針子達にさせるのも、ミーナが良いのであれば賛成せすよ。
ただ、ミーナがデザインする洋服やぬいぐるみの種類はどうする予定ですか?」
「それは、今後ミーナと話し合いをして決めようかと。」
「そうですか。
後は、護身用のワンピースを購入した方への、護身術の講座はどうしますか。」
「ミーナが出来る時にはミーナにしてもらい、基本的には母上とシャルにして頂く予定になっています。」
「アマンダとシャルロッテはそれでいいのですね?」
「「えぇ、勿論です(わ)。」」
えっ!?いいのでしょうか?
侯爵夫人と次期侯爵夫人ですよ。世間体などは問題にならないのでしょうか?
それにシャルロッテ姉様は身重ですよね?大丈夫でしょうか?
「ミーナ安心なさい。今更私に世間体など関係ありませんよ。
ルーカスとの結婚前のお転婆ぶりを未だに持ち出す方もいらっしゃるぐらいですから。
それに、王都が襲撃されて、令嬢たちに護身術を身に着けさせようと思う方々も増えているようですし、それならば、侯爵夫人と次期侯爵夫人が教える方が、彼女達も見下してこないでしょうしね。」
「私もお義母様程では無くても、武器の扱いには慣れていますし、カール様と結婚してからミーナにも教えてもらいましたので、問題ありませんわ。
それに、その事で私を貶めようとされる方でしたら、黙らせる自信ががありましてよ。」
「シャルロッテ姉様は身重ですが、大丈夫ですか?」
「心配してくれてありがとう、ミーナ。
子供が産まれるまでは、お義母様のサポートを中心にすることにするので大丈夫でしてよ。」
「無理だけは絶対になさらないで下さいね。」
「勿論ですわ。」
アマンダ義母様が残念な方だったのがなんとなく分かりましたが、シャルロッテ姉様は頼もしいです。社交界にデビューの際は、シャルロッテ姉様と一緒に過ごして、その手腕を学ばせて頂きましょう。
「そろそろ話し合いを終了して、夕食を食べましょうか。
アルノーとシルバとロイは食べてから帰られますか?」
「「「ここで食べます。」」」
シュテルネンの料理人の料理は美味しいですもんね。私も前世の記憶を使って少しアイディアを出したりしたので、他では食べられない物もありますから。
今日の夕食は何が出てくるのか楽しみです。
夕食は、久しぶりに家族が全員揃った事により、豪勢なものになっていました。
食事中も食後も和やかに進み、シルバ兄様達が帰られるのを若干渋りながらそれぞれの寮に帰って行かれました。
私も、本宅の中に新しく設えて頂いた自室にエマに案内されて向かいました。
なんと、今まで別宅で一緒に住んでいたお祖父様と父様の部屋も本宅に設えたそうです。
何でも、私の警護も含めてみんなで本宅に住んだ方が、利便性が高いとの事でそうなった様です。
学園が始まるまでは、のんびりと過ごす事にしましょう。
明後日には、中央教会に顔を出すことになっているそうですが、ルーカス義父様も一緒に行くそうなので心強いですね。
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