48話
「あら、お父様もいらしゃったの?」
「私がお忙しいところをお呼びしたんですよ。」
「お義父様が?これからする話は、ミーナのこれからの事でしたわよね?
でしたら、お父様は必要ない…いえ、邪魔なのではないでしょうか。」
「シャルロッテ…。」
「シャルロッテ、イヴォール大臣には今までミーナの事で陰ながら支えてもらっていたんですよ。いくら私でも、他の大臣連中を抑えられませんでしたから。それに、イヴォール大臣は純粋にミーナのこれからの事を心配してくれていましたからね。」
「そうだったのですか。知らなかったとはいえ失礼なもの言いを致しましたわ。
申し訳ありません、お父様。」
「…お前の辛口にも慣れているから問題は無い。」
シャルロッテ姉様がシュテルネン家の者以外と話している所を見るのは初めてでしたが、実父だからこその辛口なのでしょうか?
‘慣れているから問題は無い’と言われていますが、何だか泣き出しそうな顔をされていますが、大丈夫でしょうか?
それよりも、イヴォール大臣が私の為に何かをしてくれていたのですね。
時々腹黒な雰囲気を出している、ルーカス義父様からのお願いが何だか怖いので、知らない事に致しましょう。
イヴォール大臣は意外と苦労性なのかもしれませんね。
「ルーカス、皆様が揃ったのですから、話し合いを始めたらいかがですか?
イヴォール大臣もお忙しい身なのですから。」
「そうですね。
マルス、私が呼ぶまで誰もこの部屋に近づけない様に人払いを。
エーデルも、イヴォール大臣のお茶を入れたら、退出をしなさい。」
「「畏まりました。」」
人払いをする程の話なのでしょうか?一体、私はこれからどの様な環境に置かれるのですか!?
「まずミーナは学院から学園に転校になります。
私達としては、これまで通り学院で構わないと思っていたのですが、パトリック王太子殿下の婚約者を学園に通わせないとなるのは流石に問題があるとなりまして…。」
「他の貴族からの嫌みや嫌がらせが行われる所に、一人で通わせるのはとても嫌ですわ。私にとったら、とても大切な妹なのですから。
お父様何とか出来ませんの?」
「学園で教師についている、シュテファンに教師と学園生の監視を頼んである。」
「シュテファンお兄様に?あの変人にその役が務まりますの?」
「シャルロッテ、変人だからこそ役に立つのだ。あれの元に集まる教師や学園生は中々の変人の集まりだからな。貴族らしさが無いので有用だ。」
「その点については、私も確認をしましたので問題はありませんよ。」
「お義父様が言うのであれば、問題はありませんわね。」
シャルロッテ姉様は実兄に対しても辛口なのですね。
それにしても変人のお兄様ですか。どの様な方なのでしょうか?お会いしてお話をしてみたいものです。
「2つ目に陛下が申されていた各国を回る件については、当面は学園の長期休暇の間と緊急の要請が王国に届き、陛下とパトリック王太子殿下と半数以上の大臣が承認された時にのみとなります。あくまでも、未成年であり学園に通う学生である事から、その様に承認して頂きました。
学園卒業後の事は、ミーナが14歳になった後に決定されることになります。」
承認して頂いたと言う事は、本来なら違う予定になっていたと言う事ですね。
ルーカス義父様は一体何をされて、承認させてのでしょうか?
「ルーカス義父様、私はいつから学園に通いだすのでしょうか?」
「今現在、学園も学院も休講状態にあります。その解除が来週予定されていますので、それに合わせた形で学園に通う事になります。」
「そうですか…。その間に、友人であるセシルとアンナに挨拶をする事は可能でしょうか?」
「その必要はありませんよ。
セシルさんのご実家の薬屋から薬を週に1度納入して頂いていますが、その納入をセシルさんが担っています。
今までの様に毎日会う事は出来ませんが、週に1度納入後にお茶をしてお話をして頂く事も可能です。アンダーソン薬店の店主には、帰宅が遅くなる場合は護衛を付けてお送りするとお話しさせて頂いています。
そして、アンナさんに関しては、我が家で侍女見習いをして頂く事になりました。なので、ミーナ付きの侍女見習いとしてエマの下に就いて働いて頂きます。」
「…それは、本人達が希望したのでしょうか?」
「セシルさんに関しては今までも納入に来て頂いていましたので、セシルさんも会える事に関して喜んでいました。
アンナさんには、こちらからミーナの事情を親御さんも交えてお話をして、もしよければ我が家に侍女見習いとしてどうかとお話をした所、その場で二つ返事で了承されていましたよ。」
ルーカス義父様が苦笑いをされていますが、私もルーカス義父様から二つ返事の件を聞くと、その様子が思い浮かんで苦笑いが漏れました。
「安心しましたか?ミーナの大切な友人に無理なお願いはしませんよ。
それでは3つ目になりますが、教会の司祭に就く件です。
これは、王国側から陛下とパトリック王太子殿下と宰相、教会側から前枢機卿と現枢機卿と中央教会の筆頭司祭とで協議の末、週に3回程教会に通って頂く事に落ち着きました。」
「それで落ち着いて良かったですわ。
始めは、ミーナの身柄を教会で預かると言われていた程でしたもの。」
そんな話になっていたのですか!?
良かったです、そんな事にならなくて。
「その話は、前枢機卿が反対されたので、簡単に無くなりましたよ。
ミーナが前枢機卿と知り合いだったのには驚きましたが。」
「今まで毎日通っていた教会で司祭様をされていました。
私も謁見の時に気が付いたので驚きました。」
「そうだったのですね。
教会に通うのは週に3回ですがその内の1回は学園の休養日に行かなければならないので、丸1日教会に拘束されることになります。
この事についても、前枢機卿は反対されたのですがこの願いは叶う事はありませんでした。
私も反対したのですが、あまり反対し過ぎると、今度はミーナを教会が排除しだすだろうとパトリック王太子殿下に耳打ちをされまして…。」
「排除ですか…?」
「簡潔に言えば、暗殺などを用いてと言う事ですね。」
「気分が悪い話ですわ!
自分達に従わなければ殺すと言う事でしょう!?平然とそんな事が出来る者がナディエージ神の使徒なのですか!」
「シャルロッテ姉様、私の為にお怒り下さりありがとうございます。
ですが、教会からしたら当然の処置なのでしょう。」
「どうしてかしら?」
「人々は、病気や怪我をした際に、今までの様に手の届かないナディエージ神に祈り続けるより、身近にいる回復・治癒ができる魔法士に縋ろうとします。家族がそうなれば人として当たり前の行動なので、それを責める事は出来ません。
そして、その者が教会の言う事を聞かない存在であれば、人々と教会は悪くて対立関係、良くても教会離れ…ナディエージ神から心が離れます。その結果、回復・治癒系統の魔法士が新たな信仰の対象になり、争いが起きることになると思います。
そうなる事を未然に防ぐのも教会の仕事の一つなのでしょう。」
「ミーナに説明は不要なのですね。本当に頭がいいですね。
私も協議の後に、陛下やパトリック王太子殿下に説明されて、ゾッとしましたが。」
「只の憶測でしたが、やはりその通りなのですね。」
「陛下とパトリック王太子殿下の言葉通りであればその通りですね。
教会の事は、前枢機卿がミーナの見方の様ですので、大きな問題が発生しない限り、取り敢えずはこのまま様子を見ることにします。
そして4つ目ですが、今までと同様に騎士団と魔法士団で交代で週に1回の訓練は継続されます。何かあった時の為に、自力でどうにか出来る様にしておくのは必要な事ですからね。それに加えて、別の日に週に1回医療隊での仕事に従事してもらう事になりました。」
「分かりました。」
思ったよりもハードな毎日になりそうです。週に1回だけ学園終わりに予定が空くだけですね。
「お義父様、余りにも予定が入りすぎではないのかしら?」
「それは、私も感じています。ですので、当面は無理でも騎士団と魔法士団での訓練を中止の方向にもって行くつもりですよ。
家に魔法士団団長と騎士団第1騎士隊隊長、そしてそれぞれに所属している人間がいるのに、何故こちらから王宮に行って、ミーナの貴重な時間を浪費させなければいけないのでしょうか。毎日朝に訓練をしているので、それで十分でしょうし、今後は侯爵家令嬢として、護衛も着くのですから、不要に感じています。」
「その通りですわ。お義父様の手腕を楽しみにしておりますわ。
お父様は役立たずの様ですし。」
「この事は既に、狸な大臣達に対してイヴォール大臣が動いてくれていますよ。」
「そうだったのですね。失礼しましたわ、お父様。」
ルーカス義父様とシャルロッテ姉様が黒い顔をされています。よく見るとこの場にいる全員黒い顔をされていますね。私の家族ってこんな黒い顔をする人たちだったでしょうか?
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